偽りの家族

くるみ

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後悔

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あの日から数日が経った。暖かな気温が続き、ようやく桜が満開となった。周りは、満開の桜に気持ちが浮かれていた。
「葵~そろそろ起きなさい!」
ノックもせずに、母がドアを開けて入ってきた。
「お母さん、今日学校休んでいい?」
「え⁈どうしたの?具合悪いの⁈」
母はベッドの側まで歩み寄ってきた。
「生理痛でお腹痛い。今日2日目」
「生理痛かぁ~。2日目はきついわね。お母さん、仕事行くけど、居なくても大丈夫?ご飯は食べれる?」
「大丈夫、ご飯は適当に食べるよ」
「薬はテーブルに出しておくから、すぐに飲みなさいよ。何かあったら連絡してね。お母さん、もう出るけど、鍵閉めていくからね。あ!学校には休むって連絡しておくから。じゃあ、お母さん仕事に行ってくるね」
「分かった。いってらっしゃい」
母のマシンガンのような話し方は、仮病の状態で聞いても疲れた。生理痛は嘘であった。葵は母に嘘をついた事に後ろめたさを感じていた。初めて嘘をついた小学二年生の頃を思い出した。学校に行きたくないが為に、お腹が痛いと嘘をついた。あの時と同じ気持ちが、思い起こされた。外から玄関のドアが閉まり、車のエンジン音が聞こえた。車は発進し、音が次第に遠のいていく。葵は目覚まし時計を見た。
「7時。そろそろ支度しよう」
葵は起き上がり、一階へ降りた。軽く朝食を済ませ、外出着に着替えた。
「財布、携帯、鍵。取り敢えず、これがあればいいか」
そして家を出て、駅へ向かった。平日のこの時間は、授業が開始している。数人の老人とすれ違い、自分が知らない世界を見ている気になっていた。徒歩で20分かかる駅に到着し、券売機で券を購入した。五分程汽車を待っていると、警報音が鳴った。熱風を上げながら、汽車が止まる。汽車に乗り込むと葵は、ある番号に電話をかけた。
「はい、もしもし」
「もしもし、おばさん」
「葵どうしたの?今学校?」
「今日学校休んだんだ。おばさんに聞きたい事があって、今からそっちにいくから」
「えっ⁈今からって⁈今仕事中だよ!聞きたい事って何?今じゃだめ?」
葵は深く息をついてから答えた。
「あのさ、私の本当の親って、おばさんなんだよね?」
電話の向こうの直美からは、何も返事が返って来ない。
「母子手帳見て、おかしいなって思ったの」
二人の間に沈黙が流れた。
「おばさんと私って…」
「駅着いたら連絡して。本当の事を話すから」
直美はそう言い残し、電話を切った。
いつもと違う直美の態度に、葵は確信を持った。
葵は空いている座席に座った。通学とは逆方向の車線の景色は、真新しいものを感じ、こんな状況下でも目を奪われる。駅を出てすぐに、真っ青な海が広がった。今日は、雲一つない快晴で、小さな白波が立つ位の穏やかな波が揺れている。しばらく、広い海に心を預けていたが、ふと我に戻った。その瞬間、強い不安心に襲われ、動悸がした。直美が、本当の親ならば、どうして自ら育てず、母に預けたのか。なぜ、葵は捨てられ、一人娘のみゆは育てているのか。そして、これから、自分はどのように生きたら良いのか。疑問が次々と浮かび、キリがなかった。
「こんな事知らなきゃ良かった」
葵は後悔していた。小さな疑問を軽はずみで探ったら、とんでもない事実に迫ってしまったのだから。
「行きたくないな」
本当の事なんか聞きたくない。そっちに行くからと、でかい態度を取ったが、本当は、直美の所に行きたくない、本当の事を聞きたくない、何なら次の駅で降りて帰りたい位だった。心が潰れかけて、足が震えていた。葵は頭を壁に預け、穏やかな海の景色を見ながら、目的地に着くのを待った。
1時間半乗った所で、目的地の終着駅に着いた。降りて、駅の外に出ると、手を振る者がいた。直美は、複雑な顔をしていたが、薄く笑みを作っていた。葵は、直美の元へ歩み寄った。
「話が長くなっちゃうから、ゆっくり話せる所に行こう」
直美の自家用車に乗り込み、近くのファミレスに入った。
店に入ると、ウェイトレスにテーブル席に誘導される。水が入ったコップが、テーブルに置かれる。
「来てほしくなかったけど、いつか、こんな日が来ると思ってた。全部話すけど、大丈夫?」
直美も戸惑いを隠せず、目を伏せている。葵は、無言で頷いた。直美は深呼吸をした。
「葵を産んだのは、私よ」




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