恋文配達人

ときしろ めぐみ

文字の大きさ
12 / 15

5-1

しおりを挟む
 伝子の想いとは関係なく時間は過ぎ、あっという間に放課後になってしまった。伝子は重い足を引きずりながら体育館裏へと向かう。
「どうしよう……」
 『恋文配達人』としてはもちろんこの恋も成就させてあげたい。でも自分の素直な気持ちはそれを望んでいない。こんな気持ちのままこの手紙を渡してしまったら一体どうなるのだろう……?
 

 体育館裏ではすでに裕二が待っていた。建物の陰からその様子を伝子は見ている。なかなか勇気が出ない。おかしい。自分の手紙を渡すわけじゃないのにドキドキする。今までも渡す時は人の手紙とはいえ、なんかドキドキしていたのだが、それとは違う感じのドキドキが体を支配していた。
 その時、なぜか後ろからバレーボールが飛んできて、伝子の頭にボンッと当たった。
「キャッ!」
 伝子はそれに押されるような形で前の方にコケてしまった。
「いたたた……」
 誰かが駆けてくるような足音がして、伝子が顔を上げると目の前に誰かの足があった。
「大丈夫? 日向野さん」
 ちょっとクールだけど、やさしげな声が上から降ってきた。
「あ……はい」
「さ、つかまって」
 と手を差し出してきた人物に気づき、伝子の顔はとたんに100℃のヤカンになる。
「み……水谷さんっ! なんでここに??」
「なんでって……」
 おかしなことを言うなぁ、という顔で伝子を見る裕二。
「日向野さんがここに呼んだんだろ? 真穂の奴に頼んで」
 『あ……そうだった』と伝子は思い出し、あわてて手の中の手紙を見る。そうだ、これをわたさなきゃならない。
「あ……あの、こ、これ!」
 伝子は裕二の手を借りず、自力で立ち上がるとその勢いのまま裕二の胸元に手紙を押し付ける。
「そ、それじゃ!」
 伝子は後ろを向くとハムスターのように一目散にその場から立ち去った。後ろで裕二が何かを叫んで呼び止めたような気もしたけど、もう、そんなことはどうでもよかった。なぜだか涙があふれる。伝子はそのままトイレに駆け込み、個室にこもってしばらく声を押し殺して泣いていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...