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帰り道、伝子と真穂は駅に向かって商店街を歩いていた。身長差のせいで、はたから見れば仲のいい姉妹のようだ。
「しかし、裕二の奴もしょーがねーな。今日は降水確率80%だって朝の天気予報で言ってたのに」
「き……きっと朝、天気予報を見るのを忘れたんですよ」
「ま、アイツのことだからそうかもね。でも……」
「でも……何です?」
真穂は何かをこらえたような厳しい顔をしていた。
「だからって……」
「だからって?」
少し沈黙した後、真穂はプッと一息吹き出し、次の瞬間
「伝子の傘借りるかねー……ぶぁはははははは!」
ダムが決壊したように真穂は愉快そうに大笑いした。自分から押し付けといてひどい言い草だ。
「どーゆー意味ですか! それ」
伝子が恥ずかしさと怒りが入り混じったような複雑な顔で真穂をにらんだ。
「あはは……気にすんなって」
「気になりますよ!」
『しかし、ホント伝子の態度は分かりやすいな』と真穂は思っていた。そんな伝子をからかうように、ちょっとふざけた口調で単刀直入に聞いてみる。
「ね、伝子さぁ、裕二のこと好きなんでしょ?」
すると伝子の顔は北国から南国へ瞬間移動した温度計のごとく一気に耳まで赤くなる。そして、小さな手を仔犬の尻尾のようにパタパタと振って必死に否定しようとする。
「そ……そんなわけないじゃないですか! わた、わたしが裕二さんのことが好きだなんて……そんなこと……」
あまりにベタな伝子の反応。真穂は口を抑えて必死に笑いをこらえていた。
「ごめんごめん、そうだよね」
「んもう! 変なこと聞かないでください!」
赤いゴムマリのようなほっぺの伝子がそっぽを向く。これ以上からかうのもかわいそうなので、真穂は無理やり話題を変えた。
「そうだ! ねえ、今日さぁ、伝子の家に寄ってもいい?」
すると伝子が振り向いて、不思議そうな顔をしながら聞き返す。
「え、なんで? 真穂ちゃんち違う方向じゃない」
「何言ってんのよ」
真穂は頭上の傘を指さした。
「あんた、さっき裕二に傘を貸したじゃない。ずぶぬれで家に帰るの?」
「あ……」
「ついでに伝子の家で宿題でもやっていこうと思ってね。私、現文にがてだからさー。ね、手伝ってよ」
真穂は片手を顔の前にもってきて、『お願い』のポーズでウインクをしてきた。真穂に好意を抱く男子なら、このポーズにイチコロな可愛さだ。伝子はあごに指をあて、ちょっと考えてから答えた。
「わかりました。お安いごようです。傘に入れてくれたお礼です」
「じゃ、遠慮なく。さあさあいこうか」
真穂がちょっと意地悪して速足になった。
「わわっ! 真穂ちゃん、はやいよー」
「ほらほらぁ、急がないとぬれちゃうよー」
雨の中、そんな二人の楽しげな声がぱしゃぱしゃという足音とともに響いていた。
「しかし、裕二の奴もしょーがねーな。今日は降水確率80%だって朝の天気予報で言ってたのに」
「き……きっと朝、天気予報を見るのを忘れたんですよ」
「ま、アイツのことだからそうかもね。でも……」
「でも……何です?」
真穂は何かをこらえたような厳しい顔をしていた。
「だからって……」
「だからって?」
少し沈黙した後、真穂はプッと一息吹き出し、次の瞬間
「伝子の傘借りるかねー……ぶぁはははははは!」
ダムが決壊したように真穂は愉快そうに大笑いした。自分から押し付けといてひどい言い草だ。
「どーゆー意味ですか! それ」
伝子が恥ずかしさと怒りが入り混じったような複雑な顔で真穂をにらんだ。
「あはは……気にすんなって」
「気になりますよ!」
『しかし、ホント伝子の態度は分かりやすいな』と真穂は思っていた。そんな伝子をからかうように、ちょっとふざけた口調で単刀直入に聞いてみる。
「ね、伝子さぁ、裕二のこと好きなんでしょ?」
すると伝子の顔は北国から南国へ瞬間移動した温度計のごとく一気に耳まで赤くなる。そして、小さな手を仔犬の尻尾のようにパタパタと振って必死に否定しようとする。
「そ……そんなわけないじゃないですか! わた、わたしが裕二さんのことが好きだなんて……そんなこと……」
あまりにベタな伝子の反応。真穂は口を抑えて必死に笑いをこらえていた。
「ごめんごめん、そうだよね」
「んもう! 変なこと聞かないでください!」
赤いゴムマリのようなほっぺの伝子がそっぽを向く。これ以上からかうのもかわいそうなので、真穂は無理やり話題を変えた。
「そうだ! ねえ、今日さぁ、伝子の家に寄ってもいい?」
すると伝子が振り向いて、不思議そうな顔をしながら聞き返す。
「え、なんで? 真穂ちゃんち違う方向じゃない」
「何言ってんのよ」
真穂は頭上の傘を指さした。
「あんた、さっき裕二に傘を貸したじゃない。ずぶぬれで家に帰るの?」
「あ……」
「ついでに伝子の家で宿題でもやっていこうと思ってね。私、現文にがてだからさー。ね、手伝ってよ」
真穂は片手を顔の前にもってきて、『お願い』のポーズでウインクをしてきた。真穂に好意を抱く男子なら、このポーズにイチコロな可愛さだ。伝子はあごに指をあて、ちょっと考えてから答えた。
「わかりました。お安いごようです。傘に入れてくれたお礼です」
「じゃ、遠慮なく。さあさあいこうか」
真穂がちょっと意地悪して速足になった。
「わわっ! 真穂ちゃん、はやいよー」
「ほらほらぁ、急がないとぬれちゃうよー」
雨の中、そんな二人の楽しげな声がぱしゃぱしゃという足音とともに響いていた。
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