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新年になり、心が入れ替わる。暖かくなったら、旅に行こう。
街案内
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「はは……。恐怖心を抱かせる存在を消そうという訳ですか。なかなか面白い発想ですね」
プルスはつぶやいた。
「面白くはないでしょ。でも、プルスはあんな化け物たちと戦ってきたんだよね」
「そうですね~。すごく懐かしいです。もう何年前かわかりませんけど、確かに戦った記憶があります」
「へー、そうなんだ」
「藍牛の主に剣士がいたんですけど、べらぼうに強かったですね~。藍牛の加護である『未来視』と相性が良すぎて私達の攻撃が全部防がれました。ジワジワ殺されるような嫌な思い出ですよ」
「なんか、聞きたくなかったな……。ゲンジさんも藍牛と相性がよさそうだし、どうにか戦わないようにできないかな」
「主は最後まで逃げ続けて最後の一人を不意打ちで倒せばいいじゃないですか」
「ず、ずるい……」
「なにもずるくありませんよ。あの白鼠の常套手段です。あいつは隠れるのも逃げるのも上手いですからね。以前は運よく目の前から来てくれましたけど、本来なら視覚出来ない位置から先手必勝で殺しに来ます」
「はぁ、いったいぜったい、何でこんなにも戦いあっているんだ。僕はただ普通に生きていたいのに……」
僕は隣で眠るルパの頭を撫でる。
ーールパの命は何が何でも守らないとな。最悪、僕が死んでもルパが知られていなければ殺されることはない。ルパが僕から遠ざかってくれるだけなんだけど……。
「ニクス……。ムギュぅ……」
ルパは僕に抱き着き、頬を太ももに擦りつけてくる。眠たくなると甘えん坊になってしまうところはすごく可愛いのだけど、くっ付かれすぎても僕が寝にくいんだよなぁ。
僕はベッドに座ったまま、ルパの頭を撫でて眠る。
僕はどんな態勢でも寝付ける。なので、例え逆さまになっていようとも、寝付けてしまう。
冒険者としてはとても魅力的な潜在能力だと思うのだが、まさかこんなところでも役立つとは……。
ブレーブ街に到着して七日ほど経った。出発してから考えるともう一ヶ月ほど家を離れているが鶏たちは大丈夫だろうか。
四月に入り、学園や学校に通う新入生や在校生たちが増えた。
どうやら、今までは春休み期間だったらしい。学生服に身を包み、とても若々しい。
まぁ、言うて僕も一六歳なので近しいものだが周りの学生たちからはいっぱしの大人として扱われる。
「おはようございます!」×初等部の子供達。
「お、おはようございます」
「…………お、おはよう」
僕とエナが通学路を歩いていると、ルパよりも背の低い子供達が学生服を着て歩いていた。背中に背負っている学生鞄と茶色っぽい帽子を見ると初等部だと分かる。
元気が良い子供達が学園に歩いて行き、大人たちが見守っている光景はとても平和だった。だが、以前もこのような平和を歌い、痛い目を見た。
皆が平和ボケしているとしても僕は注意を張り巡らさなければ……。
「ニクス、顔が怖い……。もっと自然にしてよ……」
「イタイイタイ。頬を引っ張らないで……」
ルパは僕の口の中に親指を突っ込み、無理やり笑顔にさせてくる。
僕はルパの手を持ち、離させると、出来る限りの笑顔を見せた。
「……全然だめ」
「いたたたっ!」
ルパは僕の頬を親指と人差し指で挟み引っ張る。ほんと強引なんだから。
「なんか、最近ニクス元気ない。ずっとピリピリしてる……。そのせいで私もピリピリしちゃうから、止めてほしい」
ルパは真剣な表情で話した。確かに最近は平和ボケしないように出来うる限り用心してきたが、そのせいで緊張感を張り巡らせてしまっていたのだろうか。
「ごめんよ、ルパ。ただ、最近は物騒だからルパに危害を加えないようにしたかったんだ」
「私も弱くてごめん……。ニクスにばかりピリピリさせて……。さ、最近は子供になら挨拶できるようになったよ。初等部くらいの子にだけど……。でも、私にしたら進歩でしょ」
「うん。そうだね。僕もそう思うよ。ルパはすごく頑張ってて偉いね」
僕はルパの頭を撫でる。それでも尻尾はあまり揺れてくれない。嬉しくない訳じゃないと思うけど、ルパ自身の不甲斐なさの方が大きいのかもしれない。
「わ、私はもっと頑張るから。ニクスは普通にしてていいよ」
「いやいや、ルパが頑張るなら僕も頑張るよ。ルパだけに辛い思いはさせない」
「ニクス……」
「ルパ……」
僕達はムギュっと抱き合い、互いの熱を交換する。
「あの~、いったいいつまでイチャイチャラブラブな場面を見ればいいんですか?」
ロミアさんは僕達の間に入ってきた。せっかくいい所だたのに……。
「あ、ロミアいたんだ。もう死んだかと思ったよ」
「いや~、ルパちゃんいきなり酷いこと言うな~。私は死んでないよ~」
「ロミアさん、子供達にも挨拶されていなかったですけど、存在感薄いんですね」
「ぐさっ! に、ニクスさんもなかなか心を抉る一撃を……」
ロミアさんは胸に手を当ててよろめいていた。
なぜ僕達がロミアさんと一緒にいるかと言うと、ロミアさんに仕事が回ってこない時は食い扶持が無いので僕達にくっ付いてくるようになってしまったのだ。
剣の腕はいいが、いかんせん騎士の位をはく奪されているせいで仕事が回ってこないのだという。
それこそバリバリ仕事をして汚名を返上しなければならないというのに、この人はのうのうと生きている。でもまぁ、それも冒険者の生き方なのかもしれない。
「じゃあ、今日はどこに行きましょうか。この街の中ならどこにでも案内出来ますよ」
ロミアさんは僕たちに聞いてきた。
「ん~、海に行きたい。船見たい」
ルパは僕に声をかける。
「だそうです。出来るだけ物騒じゃない浜辺にしてくださいね」
「了解です!」
ロミアさんは僕達の観光案内人としてお金を稼いでいた。
まぁ、僕から提案したのだけど……。
仕事が無いと泣き着いてきたロミアさんに街の観光案内を頼んだら快く了承してくれた。
実際、この街で仕事をしていたというだけあって街の知識は豊富だった。加えて、ルパの話し相手としてとても親しくなっていた。
テリアさんぐらい仲良くなっており、ルパがとても楽しそうだ。それだけでおお金を払う価値がある。
監視の目も二倍になるので僕も少し気を抜くことが出来た。プルスが仕事をしてくれればいいのだけど、寝てばかりで困り者だ。
プルスはつぶやいた。
「面白くはないでしょ。でも、プルスはあんな化け物たちと戦ってきたんだよね」
「そうですね~。すごく懐かしいです。もう何年前かわかりませんけど、確かに戦った記憶があります」
「へー、そうなんだ」
「藍牛の主に剣士がいたんですけど、べらぼうに強かったですね~。藍牛の加護である『未来視』と相性が良すぎて私達の攻撃が全部防がれました。ジワジワ殺されるような嫌な思い出ですよ」
「なんか、聞きたくなかったな……。ゲンジさんも藍牛と相性がよさそうだし、どうにか戦わないようにできないかな」
「主は最後まで逃げ続けて最後の一人を不意打ちで倒せばいいじゃないですか」
「ず、ずるい……」
「なにもずるくありませんよ。あの白鼠の常套手段です。あいつは隠れるのも逃げるのも上手いですからね。以前は運よく目の前から来てくれましたけど、本来なら視覚出来ない位置から先手必勝で殺しに来ます」
「はぁ、いったいぜったい、何でこんなにも戦いあっているんだ。僕はただ普通に生きていたいのに……」
僕は隣で眠るルパの頭を撫でる。
ーールパの命は何が何でも守らないとな。最悪、僕が死んでもルパが知られていなければ殺されることはない。ルパが僕から遠ざかってくれるだけなんだけど……。
「ニクス……。ムギュぅ……」
ルパは僕に抱き着き、頬を太ももに擦りつけてくる。眠たくなると甘えん坊になってしまうところはすごく可愛いのだけど、くっ付かれすぎても僕が寝にくいんだよなぁ。
僕はベッドに座ったまま、ルパの頭を撫でて眠る。
僕はどんな態勢でも寝付ける。なので、例え逆さまになっていようとも、寝付けてしまう。
冒険者としてはとても魅力的な潜在能力だと思うのだが、まさかこんなところでも役立つとは……。
ブレーブ街に到着して七日ほど経った。出発してから考えるともう一ヶ月ほど家を離れているが鶏たちは大丈夫だろうか。
四月に入り、学園や学校に通う新入生や在校生たちが増えた。
どうやら、今までは春休み期間だったらしい。学生服に身を包み、とても若々しい。
まぁ、言うて僕も一六歳なので近しいものだが周りの学生たちからはいっぱしの大人として扱われる。
「おはようございます!」×初等部の子供達。
「お、おはようございます」
「…………お、おはよう」
僕とエナが通学路を歩いていると、ルパよりも背の低い子供達が学生服を着て歩いていた。背中に背負っている学生鞄と茶色っぽい帽子を見ると初等部だと分かる。
元気が良い子供達が学園に歩いて行き、大人たちが見守っている光景はとても平和だった。だが、以前もこのような平和を歌い、痛い目を見た。
皆が平和ボケしているとしても僕は注意を張り巡らさなければ……。
「ニクス、顔が怖い……。もっと自然にしてよ……」
「イタイイタイ。頬を引っ張らないで……」
ルパは僕の口の中に親指を突っ込み、無理やり笑顔にさせてくる。
僕はルパの手を持ち、離させると、出来る限りの笑顔を見せた。
「……全然だめ」
「いたたたっ!」
ルパは僕の頬を親指と人差し指で挟み引っ張る。ほんと強引なんだから。
「なんか、最近ニクス元気ない。ずっとピリピリしてる……。そのせいで私もピリピリしちゃうから、止めてほしい」
ルパは真剣な表情で話した。確かに最近は平和ボケしないように出来うる限り用心してきたが、そのせいで緊張感を張り巡らせてしまっていたのだろうか。
「ごめんよ、ルパ。ただ、最近は物騒だからルパに危害を加えないようにしたかったんだ」
「私も弱くてごめん……。ニクスにばかりピリピリさせて……。さ、最近は子供になら挨拶できるようになったよ。初等部くらいの子にだけど……。でも、私にしたら進歩でしょ」
「うん。そうだね。僕もそう思うよ。ルパはすごく頑張ってて偉いね」
僕はルパの頭を撫でる。それでも尻尾はあまり揺れてくれない。嬉しくない訳じゃないと思うけど、ルパ自身の不甲斐なさの方が大きいのかもしれない。
「わ、私はもっと頑張るから。ニクスは普通にしてていいよ」
「いやいや、ルパが頑張るなら僕も頑張るよ。ルパだけに辛い思いはさせない」
「ニクス……」
「ルパ……」
僕達はムギュっと抱き合い、互いの熱を交換する。
「あの~、いったいいつまでイチャイチャラブラブな場面を見ればいいんですか?」
ロミアさんは僕達の間に入ってきた。せっかくいい所だたのに……。
「あ、ロミアいたんだ。もう死んだかと思ったよ」
「いや~、ルパちゃんいきなり酷いこと言うな~。私は死んでないよ~」
「ロミアさん、子供達にも挨拶されていなかったですけど、存在感薄いんですね」
「ぐさっ! に、ニクスさんもなかなか心を抉る一撃を……」
ロミアさんは胸に手を当ててよろめいていた。
なぜ僕達がロミアさんと一緒にいるかと言うと、ロミアさんに仕事が回ってこない時は食い扶持が無いので僕達にくっ付いてくるようになってしまったのだ。
剣の腕はいいが、いかんせん騎士の位をはく奪されているせいで仕事が回ってこないのだという。
それこそバリバリ仕事をして汚名を返上しなければならないというのに、この人はのうのうと生きている。でもまぁ、それも冒険者の生き方なのかもしれない。
「じゃあ、今日はどこに行きましょうか。この街の中ならどこにでも案内出来ますよ」
ロミアさんは僕たちに聞いてきた。
「ん~、海に行きたい。船見たい」
ルパは僕に声をかける。
「だそうです。出来るだけ物騒じゃない浜辺にしてくださいね」
「了解です!」
ロミアさんは僕達の観光案内人としてお金を稼いでいた。
まぁ、僕から提案したのだけど……。
仕事が無いと泣き着いてきたロミアさんに街の観光案内を頼んだら快く了承してくれた。
実際、この街で仕事をしていたというだけあって街の知識は豊富だった。加えて、ルパの話し相手としてとても親しくなっていた。
テリアさんぐらい仲良くなっており、ルパがとても楽しそうだ。それだけでおお金を払う価値がある。
監視の目も二倍になるので僕も少し気を抜くことが出来た。プルスが仕事をしてくれればいいのだけど、寝てばかりで困り者だ。
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