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新年になり、心が入れ替わる。暖かくなったら、旅に行こう。
禁止
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「ルパの笑顔、もの凄く可愛いよ。もっと早くから見せてくれていればよかったのに……」
「ど、どうしよう……。か、顔が戻らないよぉ……。こ、こんな緩んだ顔、恥ずかしすぎる」
ルパは顔を手で隠した。尻尾がブンブンとあらぶっており、今にも千切れそうだ。
「何言ってるの、全然恥ずかしくないよ。物凄く元気を貰えるいい笑顔だ。どんな絵画や宝石だって今のルパの前に置いたら掠んじゃうよ」
「うぅ、何か言い方が気持ち悪い……。でも、ニクスに可愛いって言われて……嬉しい。嬉しい時に笑えるってすごく気持ちがいいね」
ルパの満面の笑みが薄暗い中でも光って見えた。ほんと、宝石以上の輝きで、眼が奪われる。
綺麗な銀髪と琥珀色の瞳がカンデラの明りを反射させて自らの色を誇張させていた。
僕も満面の笑みを返し、余っているケーキを一緒に食べる。さっきよりもほんのり甘い。そんな気がした。
僕とルパ、プルスは横並びで眠る。まぁ、プルスは対外、僕かルパの体にくっ付いて眠っている。
朝になると灰になっている時があるが、潰されて死んでいるのだ。寝方を見直した方がいいと思うのだが……、プルスが構わないと言うので、それ以上口出しはしなかった。
「ニクスは結婚ってどう思う……」
「結婚? そうだな……。一緒にいたい相手と一生いることを誓うこと、かな。ルパは」
「私は……、家族を守れるくらい強い雄の下で働いて子供を産んで育てることって思ってた。でも、それは獣族の結婚であって人族の結婚じゃない。そんな気がする……」
「ん~、違うとは言い切れない気もする……。結婚に定義はない。何が正解で不正解かなんて言う問題の答えはないんだよ。もし、ガイアス兄さんの結婚式に行けたら見てみるといいよ。人の結婚をさ」
「うん……」
ルパは僕の胸に抱き着いてきた。微笑み、尻尾を振っているのを見ると、安心してくれているのだなとわかる。
――結婚が必ずしもいいこととは限らない。なんせ、破局する者がいるのだから。加えて、政略結婚なども人の世界では多い。
何なら、人の世界の方が愛による結婚は少ないだろう。獣族の結婚は匂いや体格、強さなど、厳しい自然の中、子どもが守れるかどうかと言うのが最重要であって人族は相手から何か利益を得られるときに結婚する。
僕は勝手に解釈している訳だが、もちろん僕が思っている通りの結婚ばかりではない。幸せな結婚もたくさんあるだろうし、考えている以上にひどい結婚もあるはずだ。答えがないからこそ自分で見つけるしかない。
次の日からルパは少し変わった。いや、どうだろう。変わってないのかもしれないが、距離感が近い気がする。
ルパも僕と同様に怖がりなので近づいているという可能性が高い。まぁ、距離感が近くなったのなら仲が深まったおかげだと考えて喜ぼう。
「ニクス、おはよう。朝だよ」
「う、うん……。って、近い……」
ルパは僕の顔の真前に来て起こしてきた。鼻と鼻がくっ付く距離なので今にも唇がくっ付きそうなわけだが、平常心を保つ。
僕はルパをそっと退かし、起き上がる。
最近は夜も暑くなってきたが、僕は暑さに耐性があるのであまり気にしていない。ルパもプルスの影響を受けているからか、気温の暑さに耐性が出来ていた。
水分補給をしっかりしておかないと脱水症状になりかねないので水溜から水を汲み、体を潤わせる。ルパも同じように水を飲んだ。
朝食を得てから鍛錬をして昼食を得たあと、昼寝をする。
「うぅん……、ニクス……」
「凄いくっ付いてくるな……。懐かれてるのだろうか。別に悪い気はしないから、いいけど」
ルパは僕の体に抱き着いて昼寝をしていた。腕枕をしている訳だが、そのまま僕に抱き着かれると言うのがお気に入りの体勢らしい。
尻尾がブンブン振れて風を起こし、少し涼しく感じる。離れる時間もあり、トイレの時は流石に離れてくれた。
隙があれば抱き着いてくる抱き着き魔になってしまったのかと言うくらい、距離が近かった。
昔は離れている時間の方が長かったのに、最近ではくっ付いている時間の方が多くなった気がする。
ルパは満足しているようだが、たまにだから嬉しくなるのであって毎回毎回くっ付いていたらありがたみが無くなってしまう。そう考えた僕は抱き着くの禁止令を出した。
「ルパ、寝る時以外、抱き着いてくるのは禁止」
「えぇえ! な、何で!」
「何でって……。鍛錬が真面に出来ないし、ご褒美に抱き着くからうれしいのであってずっとくっ付いていたらありがたみが無くなるでしょ」
「そ、そんな……」
ルパは物凄く暗い顔をしていた。そんなに抱き着くのが好きだったのかと思ったが、別の行動で抱き着くのを制限しようと考えた。
「ルパ、これから僕は頭、頬、顎下と言った部分を撫でるようにするよ。抱き着きたくなったら言って。その代りに撫でてあげるから」
「そ、それなら……、我慢できそう」
ルパの顔がパーッと明るくなり、元気を取り戻した。
新しい試みを行っていた当初は無意識に抱き着いてきたが自分の心の変化を感じ取りやすくなってくると抱き着いてくる回数は減っていった。
どうやら、ルパなりの愛情表現だったらしく自分のありがとうの気持ちを伝えたかったらしい。心がグッとした時に抱き着きたくなるそうだ。
「に、ニクス。撫でてくれてありがとう……」
「どういたしまして。ルパも愛情表現に少しずつなれて来たかな?」
「は、恥ずかしい。グってなっていた心が、なんかすっとする」
「自分の心に正直になっている証拠なんじゃないかな。胸の突っかかりが無くなるほど、気分がよくなるでしょ。だから、人は感謝し合うんだよ」
ルパが頭を撫でてほしいとお願いしてくる。僕がルパの頭を撫でてあげる。その行動をルパが感謝する。僕も感謝する。
こういった循環過程が起こると両者共に心が軽くなるのだ。頻度が多くても互いに嬉しい。そう、心から思える。
「なんか、主とルパが無性に仲良くなっている気がするんですけど……」
プルスは僕の頭から呟いた。
「ど、どうしよう……。か、顔が戻らないよぉ……。こ、こんな緩んだ顔、恥ずかしすぎる」
ルパは顔を手で隠した。尻尾がブンブンとあらぶっており、今にも千切れそうだ。
「何言ってるの、全然恥ずかしくないよ。物凄く元気を貰えるいい笑顔だ。どんな絵画や宝石だって今のルパの前に置いたら掠んじゃうよ」
「うぅ、何か言い方が気持ち悪い……。でも、ニクスに可愛いって言われて……嬉しい。嬉しい時に笑えるってすごく気持ちがいいね」
ルパの満面の笑みが薄暗い中でも光って見えた。ほんと、宝石以上の輝きで、眼が奪われる。
綺麗な銀髪と琥珀色の瞳がカンデラの明りを反射させて自らの色を誇張させていた。
僕も満面の笑みを返し、余っているケーキを一緒に食べる。さっきよりもほんのり甘い。そんな気がした。
僕とルパ、プルスは横並びで眠る。まぁ、プルスは対外、僕かルパの体にくっ付いて眠っている。
朝になると灰になっている時があるが、潰されて死んでいるのだ。寝方を見直した方がいいと思うのだが……、プルスが構わないと言うので、それ以上口出しはしなかった。
「ニクスは結婚ってどう思う……」
「結婚? そうだな……。一緒にいたい相手と一生いることを誓うこと、かな。ルパは」
「私は……、家族を守れるくらい強い雄の下で働いて子供を産んで育てることって思ってた。でも、それは獣族の結婚であって人族の結婚じゃない。そんな気がする……」
「ん~、違うとは言い切れない気もする……。結婚に定義はない。何が正解で不正解かなんて言う問題の答えはないんだよ。もし、ガイアス兄さんの結婚式に行けたら見てみるといいよ。人の結婚をさ」
「うん……」
ルパは僕の胸に抱き着いてきた。微笑み、尻尾を振っているのを見ると、安心してくれているのだなとわかる。
――結婚が必ずしもいいこととは限らない。なんせ、破局する者がいるのだから。加えて、政略結婚なども人の世界では多い。
何なら、人の世界の方が愛による結婚は少ないだろう。獣族の結婚は匂いや体格、強さなど、厳しい自然の中、子どもが守れるかどうかと言うのが最重要であって人族は相手から何か利益を得られるときに結婚する。
僕は勝手に解釈している訳だが、もちろん僕が思っている通りの結婚ばかりではない。幸せな結婚もたくさんあるだろうし、考えている以上にひどい結婚もあるはずだ。答えがないからこそ自分で見つけるしかない。
次の日からルパは少し変わった。いや、どうだろう。変わってないのかもしれないが、距離感が近い気がする。
ルパも僕と同様に怖がりなので近づいているという可能性が高い。まぁ、距離感が近くなったのなら仲が深まったおかげだと考えて喜ぼう。
「ニクス、おはよう。朝だよ」
「う、うん……。って、近い……」
ルパは僕の顔の真前に来て起こしてきた。鼻と鼻がくっ付く距離なので今にも唇がくっ付きそうなわけだが、平常心を保つ。
僕はルパをそっと退かし、起き上がる。
最近は夜も暑くなってきたが、僕は暑さに耐性があるのであまり気にしていない。ルパもプルスの影響を受けているからか、気温の暑さに耐性が出来ていた。
水分補給をしっかりしておかないと脱水症状になりかねないので水溜から水を汲み、体を潤わせる。ルパも同じように水を飲んだ。
朝食を得てから鍛錬をして昼食を得たあと、昼寝をする。
「うぅん……、ニクス……」
「凄いくっ付いてくるな……。懐かれてるのだろうか。別に悪い気はしないから、いいけど」
ルパは僕の体に抱き着いて昼寝をしていた。腕枕をしている訳だが、そのまま僕に抱き着かれると言うのがお気に入りの体勢らしい。
尻尾がブンブン振れて風を起こし、少し涼しく感じる。離れる時間もあり、トイレの時は流石に離れてくれた。
隙があれば抱き着いてくる抱き着き魔になってしまったのかと言うくらい、距離が近かった。
昔は離れている時間の方が長かったのに、最近ではくっ付いている時間の方が多くなった気がする。
ルパは満足しているようだが、たまにだから嬉しくなるのであって毎回毎回くっ付いていたらありがたみが無くなってしまう。そう考えた僕は抱き着くの禁止令を出した。
「ルパ、寝る時以外、抱き着いてくるのは禁止」
「えぇえ! な、何で!」
「何でって……。鍛錬が真面に出来ないし、ご褒美に抱き着くからうれしいのであってずっとくっ付いていたらありがたみが無くなるでしょ」
「そ、そんな……」
ルパは物凄く暗い顔をしていた。そんなに抱き着くのが好きだったのかと思ったが、別の行動で抱き着くのを制限しようと考えた。
「ルパ、これから僕は頭、頬、顎下と言った部分を撫でるようにするよ。抱き着きたくなったら言って。その代りに撫でてあげるから」
「そ、それなら……、我慢できそう」
ルパの顔がパーッと明るくなり、元気を取り戻した。
新しい試みを行っていた当初は無意識に抱き着いてきたが自分の心の変化を感じ取りやすくなってくると抱き着いてくる回数は減っていった。
どうやら、ルパなりの愛情表現だったらしく自分のありがとうの気持ちを伝えたかったらしい。心がグッとした時に抱き着きたくなるそうだ。
「に、ニクス。撫でてくれてありがとう……」
「どういたしまして。ルパも愛情表現に少しずつなれて来たかな?」
「は、恥ずかしい。グってなっていた心が、なんかすっとする」
「自分の心に正直になっている証拠なんじゃないかな。胸の突っかかりが無くなるほど、気分がよくなるでしょ。だから、人は感謝し合うんだよ」
ルパが頭を撫でてほしいとお願いしてくる。僕がルパの頭を撫でてあげる。その行動をルパが感謝する。僕も感謝する。
こういった循環過程が起こると両者共に心が軽くなるのだ。頻度が多くても互いに嬉しい。そう、心から思える。
「なんか、主とルパが無性に仲良くなっている気がするんですけど……」
プルスは僕の頭から呟いた。
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