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新年になり、心が入れ替わる。暖かくなったら、旅に行こう。
ニクスの誕生日
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「まぁ、親友同士だからね。仲が良くてもおかしくないでしょ。プルスも混ざりたかった?」
「べ、別にそう言う訳じゃないですけど……」
僕はプルスを手の平に乗せて両手で羽を広げるように持ち、優しく揉んであげる。
「プルス、いつもありがとうね。すごく感謝してるよ」
「ぴ、ぴよ~、私の方こそ、ありがとうございます」
感謝し合うと心が晴れる。実際に感謝し合っていたらいつの間にか喧嘩が激減した。
七月七日を迎え僕は一七歳になった。どうやら、家を出て一年ほど経ったようだ。物凄く長かったようで短かったような……、楽しい一年だった。
「はぁ、今日で僕も一七歳か。早いな~」
「に、ニクス……。これ」
「ん? これは……」
僕はエナから革製の品を貰った。手作り感満載で、ニクスの文字が入っている。
物凄く泣きそうだ。どうしよう……。
「ナイフの鞘に被せるの。バリスティックナイフの鞘に被せるように作った。あと、これ」
ルパはプルプルと震えながら紙を渡してきた。どうやら手紙の用だ。ルークス語で書いてあり、感謝の気持ちが綴られていた。
「う……、うぅ……」
「ちょ、何泣いてるの。反応に困る……」
僕はルパに抱き着いて何度も何度も感謝した。とてもとても心にしみた。朝から泣かされるとは思っていなかったので、一日中いっぱいの嬉しい気持ちで生活できそうだ。
「ありがとうルパ、本当にありがとう」
「う、うん。どういたしまして。ニクスに喜んでもらえて良かった」
僕がルパの頬にキスをするとルパも僕の頬にキスをして来た。照れくさそうだが少し笑っている。
僕達は朝食を終えた後、鉱石を売ってお金に交換してもらいにギルドに向う。
するとテリアさんは僕宛ての手紙を二通渡してきた。
どうやら、僕とルパが書いた手紙の返事が帰ってきたようだ。手紙をすぐに送ってくれたのかな。
僕はテリアさんから手紙とお金を受け取り、家に帰る。
「ニクス、手紙に何て書いてあるの?」
ルパは興味津々で僕に寄り添ってくる。
僕はディアさんの手紙をルパに渡した。
「開けていいの?」
「うん。ディアさんに手紙を書いたのはルパだからね。ルパが手紙を開ける権利があるよ」
ルパは手紙を手に取り、蝋印をナイフで綺麗に削ぎ、封筒を開けた。
僕もルパと同じように蝋印をナイフで剥がし、手紙を見る。父さんからの手紙で内容を簡単に説明するとガイアス兄さんの結婚式に出席しても良いと言う許可が下りた。
「よかった。僕もガイアス兄さんの晴れ舞台を見れるんだ。まぁ、ガイアス兄さんが戦場から生きて帰って来れたらだけど」
僕はクワルツ兄さんからも手紙が入っていたので読んでみる。
内容は余計なお世話をしてくれたなと書いてあり、ミートさんと抱き合っている写真が入っていた。
いい関係なのか、はたまたミートさんが自分勝手に抱き着いているだけなのかはわからないが、手紙の文章からは感謝の気持ちが伝わってくるので悪い選択ではなかったようだ。
「ルパ、ディアさんからの返事は何て書いてあるの?」
「ん~っと、また一緒に戦いたいとか、美味しい料理を食べに行きたいとか、書いてる。なんか、自分で書いた手紙の返事がもらえるのって楽しくてうれしい」
ルパはディアさんから貰った手紙を胸に当てて微笑んでいた。
「手紙は文章で相手の気持ちを察して自分の思った気持ちを伝えると言う愛情表現に近い行為なんだ。だから嬉しくなるんだよ。また返事が書きたくなってきたでしょ」
「うん。もう、お返事書きたい」
「じゃあ、書いちゃおうか」
ルパはディアさん宛てに手紙を書き、僕は手紙を書かなかったが出発の準備を整える。
「ニクス、革鞄に服を詰めてどうするの? また、旅をするの……」
ルパは以前の旅が原意で家に引きこもりがちだった。もう、家の周りか近くの街にしか足を運ばない。
それでも僕と一緒にいられれば十分楽しいと言うのがルパの主張だ。
でも僕はルパにもっと世界を見てほしい。だから、出来れば旅は続けたい。そう思っている。今のルパなら、人とも馴染めると思うし、恐怖心も少ししか抱かないだろう。
「ルパ、また旅に出よう。今度は僕の実家のあるフランツの街に行くよ。飛行船か船に乗ろうと思うけど、どっちがいいかな?」
「うぅ……。また旅に行くの……。私、家にいたい……」
ルパは僕達の布団にくるまり、怖がっている子犬のような眼で訴えかけてくる。
「確かに家にいたら安全だけど、それだけの一生じゃ、つまらないでしょ。一緒にいろんな場所を回ってさ、たくさんの思い出を作ろうよ」
「また地震が起こったらどうするの……」
「この前の大地震は確かに辛い経験かもしれないけど、あれも一種の思い出だよ。ルパと始めていった旅先で巨大な地震に遭遇した。巨大な津波に襲われそうになったけどカッコいい女性に助けられる。なんて、一生の思い出になる。ブレーブ展望台から見た綺麗な景色も未だに覚えてるでしょ」
「うぅ、覚えてる……。本当に綺麗だった……。でも、でも……ニクスがまた死にそうになるんじゃないかって不安で……」
「大丈夫。僕は死なないよ。ルパを置いて死んだりしない。だから安心して」
「主は私が守っているんですからそう簡単には死にませんよ。なんせ、私が守っているんですからね」
プルスは僕の頭上で胸を張り、堂々と喋る。守っているのは僕だけど、まぁ、口を出さないでおこう。
「私、大切な相手が死ぬところなんて見たくない……。ニクスが死んだら、私……生きていけない。生きていける自信が無い……」
ルパは僕の枕に抱き着いてダンゴムシのように丸まる。
「ふぅ……、ルパ。一人で生きていける者は誰もいないよ。だから、誰かと助け合うんだ。僕が死んでもルパは一人にならない。手紙で繋がっているディアさんがいる。他にもミートさんやロミアさんがいる。あの人たちはルパを一人なんかに絶対にさせないから、安心して。もちろん僕は死ぬ気なんて無いけどね」
僕はルパの方に歩いていき、布団から出させる。
ルパは瞳に涙を浮かべ、どうしたらいいのかわからないと言いたそうな表情をしていた。
感情豊かになった分、自分の心の状態に戸惑ってしまっているようだ。今まで感情は押し殺して生きて来たのだから無理もない。
「べ、別にそう言う訳じゃないですけど……」
僕はプルスを手の平に乗せて両手で羽を広げるように持ち、優しく揉んであげる。
「プルス、いつもありがとうね。すごく感謝してるよ」
「ぴ、ぴよ~、私の方こそ、ありがとうございます」
感謝し合うと心が晴れる。実際に感謝し合っていたらいつの間にか喧嘩が激減した。
七月七日を迎え僕は一七歳になった。どうやら、家を出て一年ほど経ったようだ。物凄く長かったようで短かったような……、楽しい一年だった。
「はぁ、今日で僕も一七歳か。早いな~」
「に、ニクス……。これ」
「ん? これは……」
僕はエナから革製の品を貰った。手作り感満載で、ニクスの文字が入っている。
物凄く泣きそうだ。どうしよう……。
「ナイフの鞘に被せるの。バリスティックナイフの鞘に被せるように作った。あと、これ」
ルパはプルプルと震えながら紙を渡してきた。どうやら手紙の用だ。ルークス語で書いてあり、感謝の気持ちが綴られていた。
「う……、うぅ……」
「ちょ、何泣いてるの。反応に困る……」
僕はルパに抱き着いて何度も何度も感謝した。とてもとても心にしみた。朝から泣かされるとは思っていなかったので、一日中いっぱいの嬉しい気持ちで生活できそうだ。
「ありがとうルパ、本当にありがとう」
「う、うん。どういたしまして。ニクスに喜んでもらえて良かった」
僕がルパの頬にキスをするとルパも僕の頬にキスをして来た。照れくさそうだが少し笑っている。
僕達は朝食を終えた後、鉱石を売ってお金に交換してもらいにギルドに向う。
するとテリアさんは僕宛ての手紙を二通渡してきた。
どうやら、僕とルパが書いた手紙の返事が帰ってきたようだ。手紙をすぐに送ってくれたのかな。
僕はテリアさんから手紙とお金を受け取り、家に帰る。
「ニクス、手紙に何て書いてあるの?」
ルパは興味津々で僕に寄り添ってくる。
僕はディアさんの手紙をルパに渡した。
「開けていいの?」
「うん。ディアさんに手紙を書いたのはルパだからね。ルパが手紙を開ける権利があるよ」
ルパは手紙を手に取り、蝋印をナイフで綺麗に削ぎ、封筒を開けた。
僕もルパと同じように蝋印をナイフで剥がし、手紙を見る。父さんからの手紙で内容を簡単に説明するとガイアス兄さんの結婚式に出席しても良いと言う許可が下りた。
「よかった。僕もガイアス兄さんの晴れ舞台を見れるんだ。まぁ、ガイアス兄さんが戦場から生きて帰って来れたらだけど」
僕はクワルツ兄さんからも手紙が入っていたので読んでみる。
内容は余計なお世話をしてくれたなと書いてあり、ミートさんと抱き合っている写真が入っていた。
いい関係なのか、はたまたミートさんが自分勝手に抱き着いているだけなのかはわからないが、手紙の文章からは感謝の気持ちが伝わってくるので悪い選択ではなかったようだ。
「ルパ、ディアさんからの返事は何て書いてあるの?」
「ん~っと、また一緒に戦いたいとか、美味しい料理を食べに行きたいとか、書いてる。なんか、自分で書いた手紙の返事がもらえるのって楽しくてうれしい」
ルパはディアさんから貰った手紙を胸に当てて微笑んでいた。
「手紙は文章で相手の気持ちを察して自分の思った気持ちを伝えると言う愛情表現に近い行為なんだ。だから嬉しくなるんだよ。また返事が書きたくなってきたでしょ」
「うん。もう、お返事書きたい」
「じゃあ、書いちゃおうか」
ルパはディアさん宛てに手紙を書き、僕は手紙を書かなかったが出発の準備を整える。
「ニクス、革鞄に服を詰めてどうするの? また、旅をするの……」
ルパは以前の旅が原意で家に引きこもりがちだった。もう、家の周りか近くの街にしか足を運ばない。
それでも僕と一緒にいられれば十分楽しいと言うのがルパの主張だ。
でも僕はルパにもっと世界を見てほしい。だから、出来れば旅は続けたい。そう思っている。今のルパなら、人とも馴染めると思うし、恐怖心も少ししか抱かないだろう。
「ルパ、また旅に出よう。今度は僕の実家のあるフランツの街に行くよ。飛行船か船に乗ろうと思うけど、どっちがいいかな?」
「うぅ……。また旅に行くの……。私、家にいたい……」
ルパは僕達の布団にくるまり、怖がっている子犬のような眼で訴えかけてくる。
「確かに家にいたら安全だけど、それだけの一生じゃ、つまらないでしょ。一緒にいろんな場所を回ってさ、たくさんの思い出を作ろうよ」
「また地震が起こったらどうするの……」
「この前の大地震は確かに辛い経験かもしれないけど、あれも一種の思い出だよ。ルパと始めていった旅先で巨大な地震に遭遇した。巨大な津波に襲われそうになったけどカッコいい女性に助けられる。なんて、一生の思い出になる。ブレーブ展望台から見た綺麗な景色も未だに覚えてるでしょ」
「うぅ、覚えてる……。本当に綺麗だった……。でも、でも……ニクスがまた死にそうになるんじゃないかって不安で……」
「大丈夫。僕は死なないよ。ルパを置いて死んだりしない。だから安心して」
「主は私が守っているんですからそう簡単には死にませんよ。なんせ、私が守っているんですからね」
プルスは僕の頭上で胸を張り、堂々と喋る。守っているのは僕だけど、まぁ、口を出さないでおこう。
「私、大切な相手が死ぬところなんて見たくない……。ニクスが死んだら、私……生きていけない。生きていける自信が無い……」
ルパは僕の枕に抱き着いてダンゴムシのように丸まる。
「ふぅ……、ルパ。一人で生きていける者は誰もいないよ。だから、誰かと助け合うんだ。僕が死んでもルパは一人にならない。手紙で繋がっているディアさんがいる。他にもミートさんやロミアさんがいる。あの人たちはルパを一人なんかに絶対にさせないから、安心して。もちろん僕は死ぬ気なんて無いけどね」
僕はルパの方に歩いていき、布団から出させる。
ルパは瞳に涙を浮かべ、どうしたらいいのかわからないと言いたそうな表情をしていた。
感情豊かになった分、自分の心の状態に戸惑ってしまっているようだ。今まで感情は押し殺して生きて来たのだから無理もない。
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