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実家に向かう
城での目覚め
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「ニクス、興味なさすぎないかい……。この話は誰かにした?」
「クワルツ兄さんにしかしてないよ。あとギルド員くらい」
「はぁ、よかった。いいかい、他の人に素材のありかは教えてはいけない。オリハルコンがどこから持って来られているのかも謎なんだ。だからニクスが見つけているなんて知られたら、多くの悪人がニクスを騙しに来る」
「うん、僕もそう思う。だから誰にも話してない。クワルツ兄さんなら教えても大丈夫だと思ってさ。兄さんは戦うのが好きじゃないし、素材のことに全く興味が無さそうだから」
「ま、まあ。私もオリハルコンとかどうでもいい。今の生活が続けられたら十分すぎるとは思う……」
僕とクワルツ兄さんは兄弟なので性格が似ていた。
「ふぅ~。食べた食べた。えっと、僕の年収の話しばかりになってた。そろそろ本題に入ろうよ」
「あ、ああ。そうだな。ちょっと驚きすぎて忘れていたよ」
クワルツ兄さんは一枚の紙を持ってきた。結婚式への招待状だ。
「それはニクスの分の招待状だ。ガイアス兄さんの知り合いは少人数だけど、お相手の方の招待客が多く来る。失礼のないようにね」
「えぇ……。人がいっぱい来るの……」
ルパは耳をヘたらせて呟いた。
「まあ、お相手は中級貴族の方だからね。それなりに多く来るよ。でも、ルパちゃんとミアちゃんが結婚式に参加するのはちょっとな……」
「え? 私達は見たらいけないんですか」
ミアは表情を暗くして呟く。
「そう言う訳じゃないけど、獣族がいると良い印象が無い。だから、参加するならメイド服を着てもらうことになるかな」
「クワルツ兄さん、二人に無理やりメイド服を着せるのはやめてよ。二人は僕の仲間なんだ。親戚の仲間が普通に参加したら行けないなんておかしいよ」
「ニクス、他種族への偏見は少なからずある。人族は人族以外好きになれない。そう言う風に考えられているんだ。だから、他種族との交流は限定されているし、戦争も治まらない」
「でも、僕はルパとミアが大好きだよ。もう、本当の家族だと思えるくらい好きだ」
「ニクスは元から変わってたから、そうかもしれないけど初対面の人に好いていない生き物を見せたら嫌がられるのは当然だろう。だから少なくとも違和感のないメイドと言う形で参加していれば皆が気持ちよく二人の結婚を祝える」
「はぁ……。まぁ、ミアはメイドの経験があるけど、ルパに関してはメイドなんてできない。人と真面に喋れないんだ」
「そうなのかい?」
クワルツ兄さんはルパの方を向いて話しかける。
「う、うん……。いきなり話すのは無理……。ニクスの兄って思ったら何とか喋れてるけど、知らなかったら話せない」
「ん~、どうしたものかね」
クワルツ兄さんは腕を組み、少し考え込む。
「ルパは僕の冒険者仲間だから、そのままでいればいい。ガイアス兄さんも許してくれるよ」
僕はルパに無理やり嫌なことをしてもらいたくなかった。どうせなら、自然体で結婚式を見てほしい。
「まあ、ガイアス兄さんとお相手が何と言うかによってもう一度考えればいいか。とりあえず、ルパちゃんはニクスと離れないように式に参加してね」
「わ、わかった」
ルパは頷き、少し嬉しそうに尻尾を振る。
「じゃあ、ニクス、出発は明後日にする。今日やってきて明日また移動となると疲れるでしょ。明日はゆっくりと休んで疲れをとるといい」
「わかった。明後日の出発で構わないよ。明日に燕尾服でも買いに行ってこようかな」
「いいんじゃないかな。私かガイアス兄さんのおさがりなら、あると思うけど、自分に合った品を買ってきた方が様になる。じゃあ、あとでお湯を運んでもらえるよう、頼んでおくよ。私は別の部屋で寝るから、皆、早く寝るように」
「はい」
僕とルパ、ミアは返事をした。
クワルツ兄さんは部屋を出て行った。
「えっと……。私には一切触れてもらえなかったんですけど……」
プルスは僕の頭の上でずっと触れてほしそうに踊ったり、飛んだり、跳ねたりしていたのに一切話かけられず、終わった。
「多分、プルスに興味を一切示さなかったんだと思うよ。何かヒヨコが飛んでるくらいの感覚だったんじゃないかな」
「ひ、酷いです……。私、あんなに目立っていたのに……」
「じゃあ、兄さんが出て行く前に喋ればよかったのに」
「あそこまで無視されたら私の方から話し掛けるのは何か負けのような気がしただけです」
「また変な意地を張って……。今度は肩肘を張らずにしゃべったらいいんじゃない?」
「クワルツさんが話しかけてきてくれるのなら話しましょう。私の方から話し掛けるのには抵抗がります」
「そう、なら、話かけてもらえるといいね」
「ほんとですよ。でも、こんな目立つ格好をしているヒヨコがいたら声を掛けたくなると思うんですけど……。やっぱり主と同じで変わった人のようですね」
「そうかもね。僕の身内は皆変わってると思う。だから気にしなくてもいいよ」
僕達が食事を終えると扉が開き、お湯の入った桶が運ばれてきた。
メイドさんは桶を床に置き、布を僕達に渡した。
少ししたら回収しに来るそうなので、僕達は体を拭いて清潔になる。バスローブを羽織り、他の服も全て洗ってくれるそうだ。
お言葉に甘えてすべての服を洗ってもらう。歯を磨き、寝る準備を整えたら、大きなベッドに寝ころぶ。
「はぁ~。ちゃんとしたベッドで寝れるの嬉し……。落ち着く……」
ルパは僕の隣で横になりながら呟いた。
「本当に落ち着きます……。地上はやっぱり良いですね~」
ミアも僕の隣に寝ころびながら呟いた。両者共に三日ぶりの地上での睡眠なので嬉しいようだ。柔らかいベッドはとても寝心地がよく、眼を閉じたら自然に眠ってしまう。
次の日、僕は眼を覚まし、起き上がる。カーテンを開けると日が差し込み、気持ちのいい朝になる。本当、揺れない地上での睡眠は空より心地よかった。
「クワルツ兄さんにしかしてないよ。あとギルド員くらい」
「はぁ、よかった。いいかい、他の人に素材のありかは教えてはいけない。オリハルコンがどこから持って来られているのかも謎なんだ。だからニクスが見つけているなんて知られたら、多くの悪人がニクスを騙しに来る」
「うん、僕もそう思う。だから誰にも話してない。クワルツ兄さんなら教えても大丈夫だと思ってさ。兄さんは戦うのが好きじゃないし、素材のことに全く興味が無さそうだから」
「ま、まあ。私もオリハルコンとかどうでもいい。今の生活が続けられたら十分すぎるとは思う……」
僕とクワルツ兄さんは兄弟なので性格が似ていた。
「ふぅ~。食べた食べた。えっと、僕の年収の話しばかりになってた。そろそろ本題に入ろうよ」
「あ、ああ。そうだな。ちょっと驚きすぎて忘れていたよ」
クワルツ兄さんは一枚の紙を持ってきた。結婚式への招待状だ。
「それはニクスの分の招待状だ。ガイアス兄さんの知り合いは少人数だけど、お相手の方の招待客が多く来る。失礼のないようにね」
「えぇ……。人がいっぱい来るの……」
ルパは耳をヘたらせて呟いた。
「まあ、お相手は中級貴族の方だからね。それなりに多く来るよ。でも、ルパちゃんとミアちゃんが結婚式に参加するのはちょっとな……」
「え? 私達は見たらいけないんですか」
ミアは表情を暗くして呟く。
「そう言う訳じゃないけど、獣族がいると良い印象が無い。だから、参加するならメイド服を着てもらうことになるかな」
「クワルツ兄さん、二人に無理やりメイド服を着せるのはやめてよ。二人は僕の仲間なんだ。親戚の仲間が普通に参加したら行けないなんておかしいよ」
「ニクス、他種族への偏見は少なからずある。人族は人族以外好きになれない。そう言う風に考えられているんだ。だから、他種族との交流は限定されているし、戦争も治まらない」
「でも、僕はルパとミアが大好きだよ。もう、本当の家族だと思えるくらい好きだ」
「ニクスは元から変わってたから、そうかもしれないけど初対面の人に好いていない生き物を見せたら嫌がられるのは当然だろう。だから少なくとも違和感のないメイドと言う形で参加していれば皆が気持ちよく二人の結婚を祝える」
「はぁ……。まぁ、ミアはメイドの経験があるけど、ルパに関してはメイドなんてできない。人と真面に喋れないんだ」
「そうなのかい?」
クワルツ兄さんはルパの方を向いて話しかける。
「う、うん……。いきなり話すのは無理……。ニクスの兄って思ったら何とか喋れてるけど、知らなかったら話せない」
「ん~、どうしたものかね」
クワルツ兄さんは腕を組み、少し考え込む。
「ルパは僕の冒険者仲間だから、そのままでいればいい。ガイアス兄さんも許してくれるよ」
僕はルパに無理やり嫌なことをしてもらいたくなかった。どうせなら、自然体で結婚式を見てほしい。
「まあ、ガイアス兄さんとお相手が何と言うかによってもう一度考えればいいか。とりあえず、ルパちゃんはニクスと離れないように式に参加してね」
「わ、わかった」
ルパは頷き、少し嬉しそうに尻尾を振る。
「じゃあ、ニクス、出発は明後日にする。今日やってきて明日また移動となると疲れるでしょ。明日はゆっくりと休んで疲れをとるといい」
「わかった。明後日の出発で構わないよ。明日に燕尾服でも買いに行ってこようかな」
「いいんじゃないかな。私かガイアス兄さんのおさがりなら、あると思うけど、自分に合った品を買ってきた方が様になる。じゃあ、あとでお湯を運んでもらえるよう、頼んでおくよ。私は別の部屋で寝るから、皆、早く寝るように」
「はい」
僕とルパ、ミアは返事をした。
クワルツ兄さんは部屋を出て行った。
「えっと……。私には一切触れてもらえなかったんですけど……」
プルスは僕の頭の上でずっと触れてほしそうに踊ったり、飛んだり、跳ねたりしていたのに一切話かけられず、終わった。
「多分、プルスに興味を一切示さなかったんだと思うよ。何かヒヨコが飛んでるくらいの感覚だったんじゃないかな」
「ひ、酷いです……。私、あんなに目立っていたのに……」
「じゃあ、兄さんが出て行く前に喋ればよかったのに」
「あそこまで無視されたら私の方から話し掛けるのは何か負けのような気がしただけです」
「また変な意地を張って……。今度は肩肘を張らずにしゃべったらいいんじゃない?」
「クワルツさんが話しかけてきてくれるのなら話しましょう。私の方から話し掛けるのには抵抗がります」
「そう、なら、話かけてもらえるといいね」
「ほんとですよ。でも、こんな目立つ格好をしているヒヨコがいたら声を掛けたくなると思うんですけど……。やっぱり主と同じで変わった人のようですね」
「そうかもね。僕の身内は皆変わってると思う。だから気にしなくてもいいよ」
僕達が食事を終えると扉が開き、お湯の入った桶が運ばれてきた。
メイドさんは桶を床に置き、布を僕達に渡した。
少ししたら回収しに来るそうなので、僕達は体を拭いて清潔になる。バスローブを羽織り、他の服も全て洗ってくれるそうだ。
お言葉に甘えてすべての服を洗ってもらう。歯を磨き、寝る準備を整えたら、大きなベッドに寝ころぶ。
「はぁ~。ちゃんとしたベッドで寝れるの嬉し……。落ち着く……」
ルパは僕の隣で横になりながら呟いた。
「本当に落ち着きます……。地上はやっぱり良いですね~」
ミアも僕の隣に寝ころびながら呟いた。両者共に三日ぶりの地上での睡眠なので嬉しいようだ。柔らかいベッドはとても寝心地がよく、眼を閉じたら自然に眠ってしまう。
次の日、僕は眼を覚まし、起き上がる。カーテンを開けると日が差し込み、気持ちのいい朝になる。本当、揺れない地上での睡眠は空より心地よかった。
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