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実家に向かう

実家に向かう

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「ハム……はむ……ハム……はむ……」

 ルパは眠たそうにしながら楕円型のパンを咥える。顎に力が入っていないせいで、全然嚙み切れていない。ただしゃぶっているだけのようだ。

「すぴ~、すぴ~」

 ミアの方は未だに眠っており、起きてくる気配が無い。
 ミアの朝食はとっておき、後は回収されてしまった。

 僕が朝食を終えるとルパが目を覚まし、取り分けた料理をバクバク食べる。

 完全に目を覚ましたミアも朝食を得て活力を補充する。

 朝食を得た僕達は庭園を散歩した。昨日は鍛錬し合っていただけでしっかりと見ていなかった。王城の庭園なんて何度も見られる景色ではない。

 なので、眼に焼き付けておこうと思い、散歩している。
 多くの草花が咲きほこっているものの季節のせいか、花が落ち気味だった。
 とても綺麗な場所だったが同時に冬がやってくるんだなと思い、辛くもある。

 庭園で働いている方は庭師の人達で、皆一生懸命に草花の手入れをしている。僕達が吹き飛ばしてしまった位置の修復も行っており、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

「ニクス、今日は何をするの?」

 ルパは僕に向って話かけて来た。

「今日は鍛錬をしてお休みかな。特にやることもないし、体を昔に近づけてミアはもっと力を付けられるように鍛えていこう」

「わかった」

「わかりました」

 ルパとミアは返事をする。

 僕達は庭歩きながらどこか鍛錬に使えそうな場所はないかな~と思っていた。すると、僕の知っている二人が庭で先に合っていた。

「クワルツさん、明日、実家に帰るんですよね。はぁ、寂しいな~」

「ミートさんも一緒に来ますか? 冒険者の仕事なら明日休むのも簡単ですよね」

「え、いいんですか? 一般人でただの冒険者の私が貴族の結婚式に参加してしまっても」

「全然かまいませんよ。私達は恋人同士な訳ですし」

「あ……、クワルツさん……」

 クワルツ兄さんがミートさんに抱き着きながら深いキスをしていた。

 ミートさんの髪型は金髪のツインテールで、身長は一五〇センチメートルほどと低い方だ。だが、クワルツ兄さんと面識があり、僕がクワルツ兄さんを紹介したところ、食いついてきた。
 一緒に少し生活した時もある。とてもいい方でクワルツ兄さんと恋人同士になれていてよかった。
 子供の背格好に惑わされそうになるが実力は高く、冒険者ランクはAランクであり、Sランクも夢ではなさそうだ。

 現在の服装は冒険者服を着ており、仕事前にクワルツ兄さんに会いに来たと思われる。

「うわ、うわ、うわわ……。に、ニクス……。ニクスの兄がミートさんとちゅ、チュッてしてる……」

 ルパは顔面を真っ赤にしながら、僕の裏に隠れ、尻尾を大きく大きく揺らしていた。初心な反応が可愛すぎる。

「クワルツさんの彼女さんですかね? 私は初対面ですが何か近しいものを感じます」

 ミアは顎に手を置いて呟いた。確かに、ミアとミートさんは背格好が似ている。加えて大分破廉恥だ。まあ、胸の部分が全然違うのだけどね。

「ん? うわっ。に、ニクス……。ちょ、いるならいるって声をかけてよ。恥ずかしいじゃないか」

 クワルツ兄さんはミートさんとのキスに集中しすぎたのか僕達の姿が目に入らなかったようだ。
 そのため、もの凄く赤面し、あたふたしている。僕の知らないクワルツ兄さんの一面が見れてとても新鮮な気持ちになった。

「クワルツ兄さん、僕が思っていたよりも、ずっと熱々だね~」

「ちょ、い、今の光景は見なかったことに……」

「ちょっとできないかな~。あんな熱々なキッスを朝っぱらからするなんてね~」

「その声……。ニクス君? ルパちゃんも……」

 ミートさんは僕の方を見てきた。すると、瞳を潤わせてかけて来た。

「うわっと……。み、ミートさんどうしたんですか?」

 ミートさんは僕とルパに抱き着いてきた。

「よかった。よかったよ~。ニクス君とルパちゃんが大地震の影響を受けていたらと思ってずっと不安だったんだよ~」

 ミートさんは泣きながら呟く。ミートさんも僕とルパと一緒にブレーブ街にいたので心配してくれていたそうだ。

「安心してください。僕達はこの通り元気です。地震の影響は受けましたが、運よく助かりました」

「ニクス、死にかけてたけど復活した」

 ルパは僕に抱き着きながら、呟く。どうも、未だにトラウマになっているのか、胸に手を当ててくる。

「はぁ~。二人の無事を確認できてよかった~。えっと、知らない顔がいるんだけど、この子は?」

 ミートさんはミアの方を見て僕に聞いてくる。

「この子は僕の新しい仲間です」

「初めまして。ミア・アーレンと言います。一六歳です。今はニクスさんと共に旅をして子供心を満たしているところです」

 ミアはミートさんの方を見て深々とお辞儀をする。

「こちらこそ初めまして。ミート・マルティシアと言います。二一歳です。今は冒険者をしています。えっとえっと。こちらにいるカッコいい男性の恋人です」

 ミートさんはクワルツ兄さんの腕に抱き着き、微笑んだ。

「ちょ、ミートさん。あんまり堂々と恋人宣言されると恥ずかしいんですけど」

「え~、いいじゃないですか。事実なんですし~」

 クワルツ兄さんとミートさんは離しくっ付きを繰り返し、仲の良さを見せつけて来た。

「僕達は二人の邪魔をしたら悪いから、他の場所に行こうか」

「は~い」

 僕達はクワルツ兄さんの邪魔にならないように、別の場所へ移動しようとした。だが、兄さんが僕の手を掴み、移動させようとしない。

「ニクスは方向音痴でしょ。ミートさんが王都を案内してくれるから離れないように」

「ひ、酷いな~。僕は方向音痴じゃないよ」

「ニクス、方向音痴。私がいないとすぐに迷子になる」

「ほんと、ニクスさんは何度同じところを回るのかと言うくらい方向感覚が鈍いですよね」

 ルパとミアは僕の方向音痴を否定せず、肯定した。

「ほらね。だから、ミートさんと一緒に行動すれば、王都の中で迷子にならないでしょ」

「はぁ、わかったよ。兄さんの言う通り、ミートさんと一緒に行動するよ」

「じゃあ、私は仕事をしてくるよ」

「行ってらっしゃい。仕事、頑張ってきてね」

 ミートさんはクワルツ兄さんにくっ付き、深いキスをして離れた。

「も、もう、ミートさんは強引だな……」

 クワルツ兄さんは滅茶苦茶嬉しそうに笑いながら王城の方に走って行く。

「はぁ~、クワルツさん、可愛い……。おっと、義理の弟を置いてきぼりにしていた」

 ミートさんは僕の方を見て微笑む。
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