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実家に向かう
結婚式
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「え……。いや、ガイアス兄さんの平均討伐数……」
「…………」
スグルさんとディアさんは黙った。
「えっと、二人共固まっているのはなぜですか?」
「ニクス、お前は戦いに出た覚えがないからわからないかもしれないが、初級騎士が一度の戦いで一二五体の敵を倒すなんて不可能だ。ディアなら余裕かもしれないが、普通の者は良くて一〇体。最悪即死だ。そんな中、一二五体の敵を倒すとか化け物だろ」
「なるほど……。じゃあ、中級騎士に上がるのも納得ですね」
「ガイアスさん、中級騎士に上がるのか。いや、めでたい」
ディアさんは自分事のように喜んでいた。そう言われると僕の方も嬉しくなる。
「あ~! ディア先輩!」
「ん……。おお、リリル! お前も来てたのか!」
リリルがディアさんに手を振り、席を指さす。するとディアさんは席に歩いていき、座った。
「ん……。あのすがた。フィリップ王子……」
「その声、スグルか。お前も来たのか! いや、ありがたい。リリルでは心臓が持たん。変わってくれ」
顏が見えなくなっている第三王子がスグルさんの声に反応し、声をかけた。
「はぁ……、せっかく有給を取ったのに仕事が増えた……」
「なにか言ったか? お主の妻におなご遊びをしている時の話をしてもいいのだぞ。あと、俺はフィリップではない。リップだ」
「…………何も言っておりませんよ、リップさん。私がお供いたしましょう」
スグルさんは豹変し、リップことフィリップさんのもとに走る。父さんの知り合いやクワルツ兄さんの知り合いがガイアス兄さんの友人席に座り、総勢一〇人ほどになった。あとは時間を待つだけだ。ルパとミアが僕の隣に座り。今か今かと待っていた。
「えぇ~、大変長らくお待たせいたしました。ただいまより、新郎ガイアス・ガリーナ様。新婦マリア・カンデリア様の結婚式を始めさせていただきます」
牧師さんが進行役を務め、ガイアス兄さんを入場させる。
ガイアス兄さんはいつも以上に緊張しており、手足が同時動いている。多くの者が心配して見守る中、家の前に止まっていた馬車が開き、新婦のマリアさんがお父さんであるパーズさんと一緒に家の門を通り、歩いてくる。
中盤まで来るとパーズさんはガイアス兄さんに真っ白なウェディングドレスを着ているマリアさんの手を譲った。
ガイアス兄さんとマリアさんはそのまま歩き、牧師の前に立つと誓の言葉を発し、互いに指輪を人差し指に嵌め合った。その後、顔に罹っているレースを捲り、誓のキスをする。
「はわわわわ~! ちゅ、ちゅぅした……。チュウしちゃった……」
ルパは人一倍興奮しており、泣きそうになっている。ミアの方を見ると、両手をギュッと握り締めており、じっと見つめていた。
この瞬間を祝うために遠くからはるばる来てもらったと思うと感慨深い。結婚式と言う名の形式は終わった。ここからは宴会だ。
なれそめを聞いたり、嬉しかったこと、直してほしいこと、これからしたいことなどを答えてもらったりしていた。料理人が作った料理を得てお腹を満たし、大人はグラスに注がれた葡萄酒を飲む。子供はジュースで代用してもらった。
お酒を飲み出して結婚式の拍車がかかって来たのか、皆、はっちゃけ出した。
僕はお酒に酔いにくい人間なので、べろべろになっている者はすごいと思う。リリルは酔っぱらって踊っていた。第三王子は顔を半分出し、頭を抱えている。その姿を慰めている素面のスグルさんに、酔っぱらいながら笑っているディアさん。多くの方がお酒に酔い、ガイアス兄さんとマリアさんの結婚を祝福していた。
「お酒……。私は年齢だけで見たら飲めるんですよね……」
ミアは僕の席に置いてあった葡萄酒の入ったグラスを持ち、においを嗅いでいた。
「確かにね。と言うか、ミアはお酒を飲んだ覚えがあるの?」
「えっと自分から飲んだ覚えはありません。でも、飲まされた経験ならあります。記憶が無くなるくらいまで飲まされて……」
ミアは気分が悪くなったのか、口を押えながら必死に我慢していた。
「ミア、気持ち悪かったら僕の手に吐いてもいいよ。プルスにお願いすれば全部灰になるから病気にもならない」
ミアはコクリと頷いて誰にも見えないように僕の手に吐く。食べ物が逆流してしまったようだ。プルスは僕の手の平に向って炎を吐き、嘔吐物をすべて灰にする。一瞬すぎて匂いも残らない。
「はぁ、はぁ、はぁ……。すみません……。体が拒絶するくらい辛かった思い出のようです」
「じゃあ、お酒が飲めるようになるのはまだまだ先みたいだね」
「はい……」
プルスは僕の手の平に乗り、灰をついばみながら食べていく。
「プルスちゃんが、私の嘔吐物を食べてる……。すみません」
「灰には味なんて有りませんし、気にしなくても結構です」
プルスは翼を動かし、ミアに伝えた。そんな話をしている途中、ペガサスさんが僕の頭に飛んでくる。そのまま噛みついてきた。
「ちょ! 銀馬! 主に何をする気ですか」
プルスは手の平の上で飛べないのに翼をはためかせる。
「ペガサスさん、どうかしたんですか?」
「お前たちは何体の神獣とあった?」
「え? えっと……。銀馬さん、白鼠、藍牛、青虎、赤鳥(プルス)五体ですかね」
「それだけ神獣と合って死んでないのは流石としか言いようがないな」
「そう言われても、皆、好戦的じゃなかった……わけじゃありませんけど、逃げてくれたので何とか助かっています」
「あと橙兎と黒竜、黄蛇、緑羊、金猿、茶犬、紫猪の七体がいる。死んでるやつもいるかもしれないが、そう簡単にくたばるような奴らじゃない」
「えぇ……、あと七体もいるんですか。皆で仲良く寿命が尽きるまで待っていよう作戦に乗ってくれるだろうか……」
「死にたくない奴は乗ってくるだろうな。だが、狂ったやつだと普通に裏切って全殺しにしてくる。特に白鼠とかな」
「プルスも嘘つかれて殺されたって言ってた。優勝したらどうなるんだっけ?」
「…………」
スグルさんとディアさんは黙った。
「えっと、二人共固まっているのはなぜですか?」
「ニクス、お前は戦いに出た覚えがないからわからないかもしれないが、初級騎士が一度の戦いで一二五体の敵を倒すなんて不可能だ。ディアなら余裕かもしれないが、普通の者は良くて一〇体。最悪即死だ。そんな中、一二五体の敵を倒すとか化け物だろ」
「なるほど……。じゃあ、中級騎士に上がるのも納得ですね」
「ガイアスさん、中級騎士に上がるのか。いや、めでたい」
ディアさんは自分事のように喜んでいた。そう言われると僕の方も嬉しくなる。
「あ~! ディア先輩!」
「ん……。おお、リリル! お前も来てたのか!」
リリルがディアさんに手を振り、席を指さす。するとディアさんは席に歩いていき、座った。
「ん……。あのすがた。フィリップ王子……」
「その声、スグルか。お前も来たのか! いや、ありがたい。リリルでは心臓が持たん。変わってくれ」
顏が見えなくなっている第三王子がスグルさんの声に反応し、声をかけた。
「はぁ……、せっかく有給を取ったのに仕事が増えた……」
「なにか言ったか? お主の妻におなご遊びをしている時の話をしてもいいのだぞ。あと、俺はフィリップではない。リップだ」
「…………何も言っておりませんよ、リップさん。私がお供いたしましょう」
スグルさんは豹変し、リップことフィリップさんのもとに走る。父さんの知り合いやクワルツ兄さんの知り合いがガイアス兄さんの友人席に座り、総勢一〇人ほどになった。あとは時間を待つだけだ。ルパとミアが僕の隣に座り。今か今かと待っていた。
「えぇ~、大変長らくお待たせいたしました。ただいまより、新郎ガイアス・ガリーナ様。新婦マリア・カンデリア様の結婚式を始めさせていただきます」
牧師さんが進行役を務め、ガイアス兄さんを入場させる。
ガイアス兄さんはいつも以上に緊張しており、手足が同時動いている。多くの者が心配して見守る中、家の前に止まっていた馬車が開き、新婦のマリアさんがお父さんであるパーズさんと一緒に家の門を通り、歩いてくる。
中盤まで来るとパーズさんはガイアス兄さんに真っ白なウェディングドレスを着ているマリアさんの手を譲った。
ガイアス兄さんとマリアさんはそのまま歩き、牧師の前に立つと誓の言葉を発し、互いに指輪を人差し指に嵌め合った。その後、顔に罹っているレースを捲り、誓のキスをする。
「はわわわわ~! ちゅ、ちゅぅした……。チュウしちゃった……」
ルパは人一倍興奮しており、泣きそうになっている。ミアの方を見ると、両手をギュッと握り締めており、じっと見つめていた。
この瞬間を祝うために遠くからはるばる来てもらったと思うと感慨深い。結婚式と言う名の形式は終わった。ここからは宴会だ。
なれそめを聞いたり、嬉しかったこと、直してほしいこと、これからしたいことなどを答えてもらったりしていた。料理人が作った料理を得てお腹を満たし、大人はグラスに注がれた葡萄酒を飲む。子供はジュースで代用してもらった。
お酒を飲み出して結婚式の拍車がかかって来たのか、皆、はっちゃけ出した。
僕はお酒に酔いにくい人間なので、べろべろになっている者はすごいと思う。リリルは酔っぱらって踊っていた。第三王子は顔を半分出し、頭を抱えている。その姿を慰めている素面のスグルさんに、酔っぱらいながら笑っているディアさん。多くの方がお酒に酔い、ガイアス兄さんとマリアさんの結婚を祝福していた。
「お酒……。私は年齢だけで見たら飲めるんですよね……」
ミアは僕の席に置いてあった葡萄酒の入ったグラスを持ち、においを嗅いでいた。
「確かにね。と言うか、ミアはお酒を飲んだ覚えがあるの?」
「えっと自分から飲んだ覚えはありません。でも、飲まされた経験ならあります。記憶が無くなるくらいまで飲まされて……」
ミアは気分が悪くなったのか、口を押えながら必死に我慢していた。
「ミア、気持ち悪かったら僕の手に吐いてもいいよ。プルスにお願いすれば全部灰になるから病気にもならない」
ミアはコクリと頷いて誰にも見えないように僕の手に吐く。食べ物が逆流してしまったようだ。プルスは僕の手の平に向って炎を吐き、嘔吐物をすべて灰にする。一瞬すぎて匂いも残らない。
「はぁ、はぁ、はぁ……。すみません……。体が拒絶するくらい辛かった思い出のようです」
「じゃあ、お酒が飲めるようになるのはまだまだ先みたいだね」
「はい……」
プルスは僕の手の平に乗り、灰をついばみながら食べていく。
「プルスちゃんが、私の嘔吐物を食べてる……。すみません」
「灰には味なんて有りませんし、気にしなくても結構です」
プルスは翼を動かし、ミアに伝えた。そんな話をしている途中、ペガサスさんが僕の頭に飛んでくる。そのまま噛みついてきた。
「ちょ! 銀馬! 主に何をする気ですか」
プルスは手の平の上で飛べないのに翼をはためかせる。
「ペガサスさん、どうかしたんですか?」
「お前たちは何体の神獣とあった?」
「え? えっと……。銀馬さん、白鼠、藍牛、青虎、赤鳥(プルス)五体ですかね」
「それだけ神獣と合って死んでないのは流石としか言いようがないな」
「そう言われても、皆、好戦的じゃなかった……わけじゃありませんけど、逃げてくれたので何とか助かっています」
「あと橙兎と黒竜、黄蛇、緑羊、金猿、茶犬、紫猪の七体がいる。死んでるやつもいるかもしれないが、そう簡単にくたばるような奴らじゃない」
「えぇ……、あと七体もいるんですか。皆で仲良く寿命が尽きるまで待っていよう作戦に乗ってくれるだろうか……」
「死にたくない奴は乗ってくるだろうな。だが、狂ったやつだと普通に裏切って全殺しにしてくる。特に白鼠とかな」
「プルスも嘘つかれて殺されたって言ってた。優勝したらどうなるんだっけ?」
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