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第九章 決起

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「ゾーラ。俺もレイフの仇をうちたい。そして、彼の望みを叶えたい」

ゾーラの表情がぱっと華やぐ。
横にいたジェナは苦し気な顔で硬直する。
俺はそんなジェナに告げた。

「俺はゾーラとともにいく。もし、ここで暮らしたいならジェナは残ってもいい。魔導士に戻れば、もうここには帰れない。
ジェナが村の暮らしが離れがたいというなら、俺と別れたことにしてもらって、ずっとここで暮らす道を選んでもいいんだ。
ジェナが俺の運命に巻き込まれる必要はない」

ジェナは頭を左右に振った。

「行っていいなら、一緒に行きたい」
「いいのか。今までのような夫婦関係には戻れないぞ」

ジェナは真っ直ぐに俺を見つめる。

「それでもいい。どんな関係でもいい。これからも一緒にいたい」
「……ありがとう。嬉しいよ」

力強い真っ直ぐな返答に俺の胸も熱くなった。

ジェナは、まだ本当の意味でこの穏やかな日々に還れなくなることを知らない。
それでも、ついてきてくれることが俺はただただ、嬉しかった。




善は急げ。
村長に俺とジェナが村を離れることを伝え、残していく農地と家を村に寄付し、今まで世話になったと手持ち資金から金貨数枚を渡した。
そのまま、ゾーラの馬車に乗りこみ、村を出て、公爵の屋敷へと向かう。




屋敷で面会した公爵は、ゾーラより難しい顔をしていたが、俺の素顔を見るなり、声を失った。

さもありなん。
俺の顔はぱっと見た印象が、王太子とよく似ているのだから。

「その顔……」

公爵がなにかを思いついた顔になり、にらりと悪辣に笑んだ。

「王太子を挿げ替えるか」

俺は頷いた。
今まで仮面を被っていたことが奏功する。

この国で俺の顔を知っているのは、レイフ、伯爵、ゾーラだけ。
ゾーラが俺を探し出した意味も分かるというものだ。

「この際、王にも失脚していただきましょう」

王家そのものを入れ替える。
さらに、王家を強い魔導士の血統で染め上げていく。



実際に未来の歴史では、魔導国家として発展するスピア国は王家を筆頭に強い魔導士を輩出していた。
スピア国の王は複数の妻を持ち、子どもを多く残す。
まったくもって、歴史の通りじゃないか。


王になった俺が複数の妻を持つのは、ランダムに生まれる魔導士の素養を持った子どもを得るためだ。

多くの子孫を残し、素養の強いものを王家に残し、素養の無い者を貴族に降嫁させていく。
男も女も。
素養がなくても、隔世遺伝などで、孫やひ孫の代で素養が現れ、王家に近しい貴族から魔導士が多く産まれ、国中に浸透していく。
そうして、スピア国に魔導が急速に発展する。


俺が王になることで、短期的にも長期的にも、他の二十四家も手が出せなくなるだろう。
先の戦いで見せた俺の恐怖は彼らのなかに浸透している。


俺と公爵は額を突き合せて、今後の方針を確認しあった。
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