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第十七話 収容所内部。
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話の続きをしよう。
KAGAMI率いる月影の衆が、誘拐された幼女たちを救出するため、収容所となった廃村を急襲したその続きだ。
なお、私の名はTAMAKI。彼女ら月影の衆に武装を提供し、その先行試作型の状況観察をしている者だ。
ブーン。
この女忍者たちの背後で飛んでいる小型の虫が、私の眼だ。
これに月影の衆を追わせることで、私は現在の状況を把握している訳だ。
見れば、廃村の奴隷収容所の警備担当者たちは、もうすぐ制圧されそうである。
収容所は廃村の東部に設置され、周辺を柵でぐるっと覆われている。
その内部に、恐るべき装甲牛を放し飼いにしているからだ。この世界の牛は、精霊の加護を受けて、背中に二本の長い角を生やしているのである。
その柵を殺し間として、攻め寄せてきた勢力に、収容所側から狙撃するという意図が見て取れる。
ちなみに、放し飼いにされた装甲牛は、その名の通りに頭から背中、手足といった部位に装甲があり、ちょっとやそっとの射撃ではどうしようもない生物である。
その上、背中にロングホーンを持つ装甲牛との接近戦は、危険という概念を超えた無理ゲーである。
また、出入り口は西側から収容所に続く通路だけで、入ることも出ること困難な構造になっていた。放し飼いの装甲牛の往来を阻害しないためと、建物の防御、奴隷の逃亡を阻止するためだろう。
一見、数十人の小勢では陥落不可能に見える、廃村の収容所であった。
しかし、それは敵勢力が正攻法で攻め寄せて来た場合の話である。
いまや難攻不落に見えた収容所は、月影の衆の攻撃によって陥落寸前であった。
事前の情報収集を怠らずに、それぞれの敵への対抗策を用意してきた彼女たちは、素早く収容所へと攻撃を仕掛けた。
早々に壁となる廃村周辺の警備兵、放し飼いにされていた装甲牛たちを排除した彼女らは、続け様に収容所内部へと進入を試みる。
収容所からの狙撃に対しては、ここまでに倒した男や倒した装甲牛の死体を盾にして肉迫し、今や建物内部への侵入口を開く位置まで達していた。
無論、私が製造し与えた連装クロスボウの援護射撃と、KAGAMIの内錬気法によって繰り出された強化苦無の狙撃もそれに寄与していた。
さあて、次は収容所への突入だ。
試作型連装クロスボウの評価はもう十分だ。私は一足先に、内部へと機械虫を進入させるとしようか。
そこからじっくりと、KAGAMIたちの戦いを見守ることとしよう。
ブーン。
◇ ◇ ◇
「そこへ!」
「了解だ! 爆裂符!」
女忍者たちが、爆弾を収容所の壁際に投げ付け、火炎符によって導火線へと着火させた。スグリが爆裂符と言い放った意味は、敵に対して「私たちはあなたたちを爆殺することもできる」という誤認を誘う脅しである。
敵に聞こえたかどうかは未知数であるが、やる価値はある。これで相手が逃げ去ってくれれば、突入も楽になる。
ゴウッ!
シュゥゥゥゥ…
ドォオオオオン!!!
ガラ…ガラガラッ…カラン…
「よくやった! 突入口開く! 準備突入!」
「了解! 準備突入!」
何も敵の思惑通りに、細い通路を押し通る必要はない。柵側から建物へと肉迫したスグリたちは、建物の壁を爆破して、侵入口を無理矢理開く強硬手段に出た。
そして、それが成功すると射撃班に援護射撃体勢を取らせ、自分たち前衛兼突撃班に、突入準備を取らせる。
「良し! 前衛班、盾構え!」
とにかく盾になる壁の破片やら木の板やら、遮蔽物になるモノを前面に掲げて、盾となる構えを見せる前衛兼突撃班。
「突撃!」
「おおっ!」
「行っくよー!」
「押し通る!」
「しゃー! おらー!」
スグリの号令に従い、相手を怖気付かせるための奇声を発しながら、集まった前衛兼突撃班が、収容所への侵入を開始した。
「おー! おー! おー!」
「いやっー!」
「観念しな!」
「んなろー! しゃー…って、居ない?」
しーん。
静まり返っている収容所内部。大穴が空いた壁付近には誰も配置されていなかった。激しい抵抗を覚悟していた突撃班の面々は、気の抜けた表情を浮かべる。
「…怖気たか。別のフロアに逃げたな」
「捕らわれている子たちの所?」
「あり得るな。人質の幼女たちの命を交換条件に交渉してくる心算かな?」
「所詮はクズか。いや、その方がやり易くて助かる、な」
「どうすんの、スグリ?」
「とにかく前進よ。まず連中との距離を詰めないと。戦うか、交渉するかはその後よ…頭領も、それで良いですよね?」
「そうね。そうしましょう」
スグリの提案に、KAGAMIが答える。彼女は、まだ生きていた装甲牛の止めを刺してからやって来たのである。
生きていて突然動き出す…そんな不測の事態がないように、まず装甲牛の始末を先に済ませてきたのである。
その背後から、北門組の突撃班の者たちもやって来た。
「基本、人質である幼女たちや奴隷の子たちの安全を優先します。だから交渉で組織の者たちを逃がしてしまってもかまいません。その心算で動いてください」
そう配下の者達に指示するKAGAMIである。
「えー、逃がしちゃってもいいんですかー!」
「私は逃がしたくないです!」
{誘拐犯は殺すべきです!」
KAGAMIの甘い指示に、そう言って反抗する者と、不満な表情を見せる者がチラホラいた。
「こら、お前たち。頭領の指示に従え。我々の果たすべき勝利目標を忘れるな。人質の幼女たちの救出が優先であって、敵を残らず倒すことは二の次だぞ」
そんな状況に、一石を投じる発言をしたのはスグリである。こんな不満が募った場合、みんなをまとめ直すのは彼女の役目であった。
伊達にKAGAMIの副官をしている訳ではないのである。
「それに、この後の手筈はみんな知っているはずだ。人質を取られていた者達の家や、雇われた忍びの衆が一斉に動き出す。我々の作戦が成功したその後でな」
そう続けたスグリの言葉に、KAGAMIに反抗的だった者たちも納得の表情となる。
「そうだね、たとえ僕たちが連中を逃がしても…」
「…だよねー! みんな売国奴をただで逃がすほど馬鹿じゃないよねー!」
「そういえば、私たちの先行試作型のクロスボウって…」
「…量産されて、北方諸国に大量配備される予定の品の、最終チェック用」
その通りである。戦力でホーリーズ・クランに劣る北方諸国連合は、現在、その差を埋めるための射撃武器を、大量に配備する戦略に舵を切っていた。
数でぶつかり合えば、戦力で劣る側が確実に押し負ける。
しかし、遠距離、中距離から敵の数を減らせたなら、その限りではないという単純明快な戦略であった。
KAGAMI率いる月影の衆も、こうして少なからず、その戦略に関与していた。
「組織の連中は、ある意味、新装備の的となる実験動物よ」
「そう。どの道、あいつらに逃げ場はないのよ」
「娘を人質にされたどの家も、死に物狂いで組織の関係者を探し出すでしょう。一族郎党に、量産された連装クロスボウを装備させた上でね」
「馬鹿だよね組織の連中。ホーリーズ・クランと組んで、戦後の支配層になろうって魂胆が、見事に裏目に出たってことだもの」
「納得」
「うん、私もそう思う」
「それじゃ、私たちは取り敢えず人質の救出だけに集中すればいいんだね?」
「そゆことね。確かにそっち優先でいいじゃん」
「確かにそうですぅ~」
「理解してくれた? それじゃあ、行きましょう」
女忍者たち各自が納得した時点で、まとめ役のスグリに代り、頭領のKAGAMIが指揮を執り前に出る。
「了解しました!」×20
そのKAGAMIの指示に、射撃班を除く全員が同意した。
「それでは前進するぞ! 前衛班、準備!」
頭領KAGAMIの下、副官スグリの指示で、月影の衆が動き出す。目指すは別フロアのいると思われる、人質として攫われ、奴隷にされた幼女たちの許である。
◇ ◇ ◇
「おいっ! 奴隷たちは前に出して、取り敢えず盾にしろ!」
「はっ、はい! おいっ! 来なっ!」
「来いっ!」
「こっちだ!」
組織の中堅幹部、奴隷商のフィトラッカという男が支持を出す。恐怖によって言葉遣いが乱暴になっていた。とにかく大声で怒鳴り、配下の男たちをビクつかせる。
そのため、部下の行動も荒々しくなっており、奴隷たちの扱いもぞんざいに扱った。
哀れな奴隷の立場に甘んじなければならない幼女たちは、その行動一つ一つにびくびくと身体を震わせ、その指示に従った。従う以外に、どうしようもなかったのだ。
そんな幼女と、他の理由で奴隷にされた女性たちを盾として、フロアの前方に並べるフィトラッカの部下たち。生き残って、このフロアに逃げ込んだ人数は残り五人だ。
このフロアは、奴隷を逃がさないために、出入り口が一カ所しかない構造だ。その出入口の前に奴隷たちを並べたのである。
フィトラッカと共に、部下たちは奴隷娘たちの裏側へと廻る。
女子供を盾にするとは、じつに愚かな奴隷商の仲間らしい格好悪さだった。
「…安心しろ、お前たち。連中はこいつらを助けにきたはずだ。こいつらの命を盾に連中と交渉する。そうすれば、俺たちは助かるはずだ」
「へっ、へい!」
「たっ、たのんます、お頭!」
無様に生き延びるための手段はすべてやったと、フィトラッカが部下たちを安心させる態でそう言った。実は、部下のためではなく、そうであって欲しい自分の願望を言っただけだった。
愚か者が、せめて守ろうとするプライドの顕われである。
部下たちも、薄々それは感付いていたが、そんな上司でもとにかく従うのであった。
なぜなら、こんな追い込まれた場所で、一々そんなことで文句を言う程、彼らも愚かではないのだ。
何とか生き延びたい。とにかく今はそれが最重要。ただ、そう望む部下たちである。
フィトラッカのプライドなど、どうでもよいことだった。
「お邪魔するわ」
そこに、通路側から女性の声が響いてきた。
そして、十代後半程度の、スラリとした長身の女性が現れた。フィトラッカと部下、そして奴隷女性たちの心音がドクンッと恐怖で高鳴った。
なんでこの女は、こんな状況で丁寧に挨拶をしてくるのだと。
そして。
「はじめまして。あなたたちの魂を運ぶ死神よ」
そうにっこりと微笑み、自己紹介をしたのだった。
もちろん、彼女は女忍者集団、月影の頭領である選ばれし者、KAGAMIであった。
KAGAMI率いる月影の衆が、誘拐された幼女たちを救出するため、収容所となった廃村を急襲したその続きだ。
なお、私の名はTAMAKI。彼女ら月影の衆に武装を提供し、その先行試作型の状況観察をしている者だ。
ブーン。
この女忍者たちの背後で飛んでいる小型の虫が、私の眼だ。
これに月影の衆を追わせることで、私は現在の状況を把握している訳だ。
見れば、廃村の奴隷収容所の警備担当者たちは、もうすぐ制圧されそうである。
収容所は廃村の東部に設置され、周辺を柵でぐるっと覆われている。
その内部に、恐るべき装甲牛を放し飼いにしているからだ。この世界の牛は、精霊の加護を受けて、背中に二本の長い角を生やしているのである。
その柵を殺し間として、攻め寄せてきた勢力に、収容所側から狙撃するという意図が見て取れる。
ちなみに、放し飼いにされた装甲牛は、その名の通りに頭から背中、手足といった部位に装甲があり、ちょっとやそっとの射撃ではどうしようもない生物である。
その上、背中にロングホーンを持つ装甲牛との接近戦は、危険という概念を超えた無理ゲーである。
また、出入り口は西側から収容所に続く通路だけで、入ることも出ること困難な構造になっていた。放し飼いの装甲牛の往来を阻害しないためと、建物の防御、奴隷の逃亡を阻止するためだろう。
一見、数十人の小勢では陥落不可能に見える、廃村の収容所であった。
しかし、それは敵勢力が正攻法で攻め寄せて来た場合の話である。
いまや難攻不落に見えた収容所は、月影の衆の攻撃によって陥落寸前であった。
事前の情報収集を怠らずに、それぞれの敵への対抗策を用意してきた彼女たちは、素早く収容所へと攻撃を仕掛けた。
早々に壁となる廃村周辺の警備兵、放し飼いにされていた装甲牛たちを排除した彼女らは、続け様に収容所内部へと進入を試みる。
収容所からの狙撃に対しては、ここまでに倒した男や倒した装甲牛の死体を盾にして肉迫し、今や建物内部への侵入口を開く位置まで達していた。
無論、私が製造し与えた連装クロスボウの援護射撃と、KAGAMIの内錬気法によって繰り出された強化苦無の狙撃もそれに寄与していた。
さあて、次は収容所への突入だ。
試作型連装クロスボウの評価はもう十分だ。私は一足先に、内部へと機械虫を進入させるとしようか。
そこからじっくりと、KAGAMIたちの戦いを見守ることとしよう。
ブーン。
◇ ◇ ◇
「そこへ!」
「了解だ! 爆裂符!」
女忍者たちが、爆弾を収容所の壁際に投げ付け、火炎符によって導火線へと着火させた。スグリが爆裂符と言い放った意味は、敵に対して「私たちはあなたたちを爆殺することもできる」という誤認を誘う脅しである。
敵に聞こえたかどうかは未知数であるが、やる価値はある。これで相手が逃げ去ってくれれば、突入も楽になる。
ゴウッ!
シュゥゥゥゥ…
ドォオオオオン!!!
ガラ…ガラガラッ…カラン…
「よくやった! 突入口開く! 準備突入!」
「了解! 準備突入!」
何も敵の思惑通りに、細い通路を押し通る必要はない。柵側から建物へと肉迫したスグリたちは、建物の壁を爆破して、侵入口を無理矢理開く強硬手段に出た。
そして、それが成功すると射撃班に援護射撃体勢を取らせ、自分たち前衛兼突撃班に、突入準備を取らせる。
「良し! 前衛班、盾構え!」
とにかく盾になる壁の破片やら木の板やら、遮蔽物になるモノを前面に掲げて、盾となる構えを見せる前衛兼突撃班。
「突撃!」
「おおっ!」
「行っくよー!」
「押し通る!」
「しゃー! おらー!」
スグリの号令に従い、相手を怖気付かせるための奇声を発しながら、集まった前衛兼突撃班が、収容所への侵入を開始した。
「おー! おー! おー!」
「いやっー!」
「観念しな!」
「んなろー! しゃー…って、居ない?」
しーん。
静まり返っている収容所内部。大穴が空いた壁付近には誰も配置されていなかった。激しい抵抗を覚悟していた突撃班の面々は、気の抜けた表情を浮かべる。
「…怖気たか。別のフロアに逃げたな」
「捕らわれている子たちの所?」
「あり得るな。人質の幼女たちの命を交換条件に交渉してくる心算かな?」
「所詮はクズか。いや、その方がやり易くて助かる、な」
「どうすんの、スグリ?」
「とにかく前進よ。まず連中との距離を詰めないと。戦うか、交渉するかはその後よ…頭領も、それで良いですよね?」
「そうね。そうしましょう」
スグリの提案に、KAGAMIが答える。彼女は、まだ生きていた装甲牛の止めを刺してからやって来たのである。
生きていて突然動き出す…そんな不測の事態がないように、まず装甲牛の始末を先に済ませてきたのである。
その背後から、北門組の突撃班の者たちもやって来た。
「基本、人質である幼女たちや奴隷の子たちの安全を優先します。だから交渉で組織の者たちを逃がしてしまってもかまいません。その心算で動いてください」
そう配下の者達に指示するKAGAMIである。
「えー、逃がしちゃってもいいんですかー!」
「私は逃がしたくないです!」
{誘拐犯は殺すべきです!」
KAGAMIの甘い指示に、そう言って反抗する者と、不満な表情を見せる者がチラホラいた。
「こら、お前たち。頭領の指示に従え。我々の果たすべき勝利目標を忘れるな。人質の幼女たちの救出が優先であって、敵を残らず倒すことは二の次だぞ」
そんな状況に、一石を投じる発言をしたのはスグリである。こんな不満が募った場合、みんなをまとめ直すのは彼女の役目であった。
伊達にKAGAMIの副官をしている訳ではないのである。
「それに、この後の手筈はみんな知っているはずだ。人質を取られていた者達の家や、雇われた忍びの衆が一斉に動き出す。我々の作戦が成功したその後でな」
そう続けたスグリの言葉に、KAGAMIに反抗的だった者たちも納得の表情となる。
「そうだね、たとえ僕たちが連中を逃がしても…」
「…だよねー! みんな売国奴をただで逃がすほど馬鹿じゃないよねー!」
「そういえば、私たちの先行試作型のクロスボウって…」
「…量産されて、北方諸国に大量配備される予定の品の、最終チェック用」
その通りである。戦力でホーリーズ・クランに劣る北方諸国連合は、現在、その差を埋めるための射撃武器を、大量に配備する戦略に舵を切っていた。
数でぶつかり合えば、戦力で劣る側が確実に押し負ける。
しかし、遠距離、中距離から敵の数を減らせたなら、その限りではないという単純明快な戦略であった。
KAGAMI率いる月影の衆も、こうして少なからず、その戦略に関与していた。
「組織の連中は、ある意味、新装備の的となる実験動物よ」
「そう。どの道、あいつらに逃げ場はないのよ」
「娘を人質にされたどの家も、死に物狂いで組織の関係者を探し出すでしょう。一族郎党に、量産された連装クロスボウを装備させた上でね」
「馬鹿だよね組織の連中。ホーリーズ・クランと組んで、戦後の支配層になろうって魂胆が、見事に裏目に出たってことだもの」
「納得」
「うん、私もそう思う」
「それじゃ、私たちは取り敢えず人質の救出だけに集中すればいいんだね?」
「そゆことね。確かにそっち優先でいいじゃん」
「確かにそうですぅ~」
「理解してくれた? それじゃあ、行きましょう」
女忍者たち各自が納得した時点で、まとめ役のスグリに代り、頭領のKAGAMIが指揮を執り前に出る。
「了解しました!」×20
そのKAGAMIの指示に、射撃班を除く全員が同意した。
「それでは前進するぞ! 前衛班、準備!」
頭領KAGAMIの下、副官スグリの指示で、月影の衆が動き出す。目指すは別フロアのいると思われる、人質として攫われ、奴隷にされた幼女たちの許である。
◇ ◇ ◇
「おいっ! 奴隷たちは前に出して、取り敢えず盾にしろ!」
「はっ、はい! おいっ! 来なっ!」
「来いっ!」
「こっちだ!」
組織の中堅幹部、奴隷商のフィトラッカという男が支持を出す。恐怖によって言葉遣いが乱暴になっていた。とにかく大声で怒鳴り、配下の男たちをビクつかせる。
そのため、部下の行動も荒々しくなっており、奴隷たちの扱いもぞんざいに扱った。
哀れな奴隷の立場に甘んじなければならない幼女たちは、その行動一つ一つにびくびくと身体を震わせ、その指示に従った。従う以外に、どうしようもなかったのだ。
そんな幼女と、他の理由で奴隷にされた女性たちを盾として、フロアの前方に並べるフィトラッカの部下たち。生き残って、このフロアに逃げ込んだ人数は残り五人だ。
このフロアは、奴隷を逃がさないために、出入り口が一カ所しかない構造だ。その出入口の前に奴隷たちを並べたのである。
フィトラッカと共に、部下たちは奴隷娘たちの裏側へと廻る。
女子供を盾にするとは、じつに愚かな奴隷商の仲間らしい格好悪さだった。
「…安心しろ、お前たち。連中はこいつらを助けにきたはずだ。こいつらの命を盾に連中と交渉する。そうすれば、俺たちは助かるはずだ」
「へっ、へい!」
「たっ、たのんます、お頭!」
無様に生き延びるための手段はすべてやったと、フィトラッカが部下たちを安心させる態でそう言った。実は、部下のためではなく、そうであって欲しい自分の願望を言っただけだった。
愚か者が、せめて守ろうとするプライドの顕われである。
部下たちも、薄々それは感付いていたが、そんな上司でもとにかく従うのであった。
なぜなら、こんな追い込まれた場所で、一々そんなことで文句を言う程、彼らも愚かではないのだ。
何とか生き延びたい。とにかく今はそれが最重要。ただ、そう望む部下たちである。
フィトラッカのプライドなど、どうでもよいことだった。
「お邪魔するわ」
そこに、通路側から女性の声が響いてきた。
そして、十代後半程度の、スラリとした長身の女性が現れた。フィトラッカと部下、そして奴隷女性たちの心音がドクンッと恐怖で高鳴った。
なんでこの女は、こんな状況で丁寧に挨拶をしてくるのだと。
そして。
「はじめまして。あなたたちの魂を運ぶ死神よ」
そうにっこりと微笑み、自己紹介をしたのだった。
もちろん、彼女は女忍者集団、月影の頭領である選ばれし者、KAGAMIであった。
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