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第1章 この度、伯爵令嬢になりました。
27*領地へ行くのです。
しおりを挟む皆様、こんにちは。
ティナ・エヴァンスです。私はいま子供四人で、馬車に揺られ領地へ向かっております。
お父様と、お義母様とリアは、一週間ほど後に来るようです。
突然、お父様に言われ、みんな大慌てで準備しました。出発まで時間がなかったので、ジョーとディナンには、結晶石でしか連絡出来ませんでした。数ヶ月の事だし、冬を超えたらまた王都に帰るので暫くは文通をしようねとはなったものの、やっぱり少し寂しいです。
最近は、勉強することも増えて、前のように中々外に出れないし、遊べなくなってしまっていたので、夜の結晶石での電話しかできてなかったのです。数ヶ月で帰る予定であると聞いているので、それまでは我慢ですね。そう思うと、最近は友達が増えたなーと少し感慨深くなります。
「チャコ、大丈夫?疲れてない?」
休憩で寄った町の食事処で、レイ兄様が心配そうに聞いて来ました。
「大丈夫ですよ。久しぶりの馬車の旅で、ワクワクしてます!‥‥でも、」
「でも?」
「やっぱり、ジョーとディナンとしばらく会えないのは寂しいなって思っただけです。へへ」
「‥‥そか。チャコは、2人の事が大好きなんだね。」
「はい!大事な、お友達ですもの!」
レイ兄様が、少し驚いたような、ホッとしたような表情で薄く笑いました。なにこれ、絵になり過ぎてる。
「‥‥友達ね。」
ポソッと小さく呟かれた言葉に、私は気付きませんでした。
お食事処を出て、また馬車に乗って領地へ向かいます。馬車の中で、兄様達としりとりしたり、クイズしたり、お昼寝したり、お話ししていると、あっという間に領地に着きました。
今回は、隠居したお爺様にリアのお披露目と、なにやら大事な話があると言う事で、家族みんなで行く事になったのです。
「チャコ、そろそろ屋敷に着くから、起きて」
少し揺すられて、優しい声で起こされます。眠い目を擦りながら、レイ兄様に寄りかかっていた体を起こします。
「レイ兄様、私、ずっと寄りかかっちゃって‥‥すみま‥‥ふぁあ‥‥」
あまり寛げなかっただろう、レイ兄様に謝っている最中に大きいあくびをしてしまいました。・・・うん、全然反省してねーなって思われましたね。
「ふふ。僕は大丈夫だよ。チャコは、少しは休めたかい?」
「ありがとうございます‥‥。私は、十分休めました!」
「チャコも、ハンクもまだまだ子供なんだよな。おら、ハンクも!いい加減起きろ!あ、お前!よだれ垂らすなよ!」
・・・は、ハンク!!あなた、カート兄様に膝枕してもらっていたの!!??
あぁ、なんてこと!?こんな美味しいシチュを見逃していたなんて!!!
カート兄様、ハンクの頭撫でたりしたのかな‥‥?それとも、手を握ってたり‥‥?
それか、それか‥‥あ、ハンクまだ寝ぼけてる‥‥そのまま、おなか側に寝返りしないかな‥‥それか、カート兄様の太ももに顔埋めてグリグリしないかな?あぁ、カートxハンクいいわ。いいわ。本当、いいわ。
「ほんと、お前いい加減起きろって!!」
ビチンッ
「いったぁーー!!」
いつまでも起きないハンクに、カート兄様はデコピンをお見舞いして起こしました。
あーあ。もう少し、甘めに起こしてくれても良かったのに~~。
「カート兄上、痛いよ!!」
デコピンされたおでこをさすりながら文字通り、飛び起きたハンクは恨めしそうにカート兄様を睨んでいます。カート兄様は、フンッと顎を逸らして、ハンクにお説教を垂れています。
「ほら、喧嘩しないで。あ、窓から外見てごらん?海が見えるよ。」
レイ兄様にそう言われて、急いで窓のカーテンを開けて窓を上に開けました。
「わぁ!潮の香り!王都は肌寒かったのに、こっちは丁度いいですね!!」
「お、俺、海初めて!!すっげぇ‥‥広いし、青いな!!」
「ほら、ハンク、あんまり身を乗り出すな!危ないだろ!」
カート兄様はハンクの服を掴んで引き寄せました。引っ張られた事によって、ハンクは少しバランスを崩しカート兄様に背中から寄りかかる体制になってしまいました。うわぁ。なんてこと。自然にそんな嘘でしょ。ご馳走様です。
「カート兄上、乱暴すぎ!痛いじゃないか!」
「ハンクが悪い。身を乗り出して、馬車から落ちたらどうするんだ。最悪、死ぬぞ?」
「う”。」
カート兄様の正論に体を小さくして反省しているハンクがとても面白くて、みんなで笑ってしまいました。
「あとで、みんなで海辺までお散歩行かない?」
「いいな。水遊びは、風邪引くからダメだけど、行くくらいならいいよな。」
カート兄様も賛成してくれて、夕飯の前に少しだけ子供達で海に行く約束をしました。うん、楽しみ!実は、レイ兄様も海を見てキラキラ顔させているので、レイ兄様も海は初めてのようなのです。海の楽しみ方、教えて上げましょう!!
コンコン
話していたら、いつの間にか屋敷へ着いたようです。
先に、兄様達が出て、ハンクが続きます。
「チャコ、おいで」
両手を広げて、レイ兄様が私を抱き上げて馬車から降ろしてくれました。うん、やらしい感じもなく、スマートで、まじ絶対いい男になるわ。
「おぉーー!!カート、チャコ!!!久しぶりだな!!大きくなって!ほら、よく顔をみせてごらん?あぁ、チャコ、本当に美人になって。シェイに似てきたな。はっはっは」
「お爺様!お久しぶりです。」
「お久しぶりです。」
「お爺様なんて硬くなるな。前のように、お爺ちゃん、爺ちゃん、と気安く呼んでくれ。じゃないと、寂しくて寿命が縮むぞ?」
「あら、それは困りますわ。お爺ちゃんには、長生きしてもらわないとですもの。ふふ」
お爺ちゃんにギュウっと抱きつきながら、再会の挨拶をしました。
「おや、そっちの色男達がミディアの子供か?」
「お初にお目にかかります。ブレイン・エヴァンスです。本日はお招きいただきまして有難うございます。」
「お、お初にお目にかかりますっ!ハンク・エヴァンスです!」
「はっはっは!そんな硬くなるな、お前達も、儂の孫なんじゃからな。爺ちゃん、と呼んでくれ。」
お爺ちゃんは、気安い態度でレイ兄様と、ハンクの頭をワシワシと撫でて豪快に笑っています。そんなお爺ちゃんのことを見て、2人とも少しだけ、緊張が解けたようです。良かった。
部屋に行き、部屋を整えるのは侍女達に任せて私は、着てきた服よりも動きやすい服に着替えてみんなのいるサロンへ行きます。
「お、やっと来たか。ほら、海へ行くんだろ?早くしないと日が暮れてしまう。」
「遅いぞ、チャコ!早く早く!」
「こら、ハンク!急かさない!」
「ふふ。そんなに急がなくても海は逃げないよー」
軽口を言い合いながら、海へ向けて歩き出します。
◇◆◇◆◇◆
屋敷の裏の階段を抜けると、エヴァンス家用のプライベートビーチがあります。
とても綺麗な、真っ白の砂と真っ青な海。沖縄に旅行に行った時を思い出します。
あぁ、懐かしい。こっちでは、水遊びはしても、泳いだりはしません。前世の私も、海は見ても入りたいとはあまり思いませんでした。でも、ビーチやプールサイドにいるのは結構好きでした。え?なんでって?そ、そりゃ、もちろん、水着姿の男の子達が戯れてるのを見たりして、妄想力を養っていたからですよ?むしろ、それ以外になにかあります?ふふん
「足首くらいなら、入ってもいいかな?」
レイ兄様の服の裾を掴んで、ポソッと呟くと、上から笑いを噛み殺した声が聞こえました。
「侍女がタオルを持ってきてくれてるから、足首くらいまでなら良いんじゃない?」
「わあ!ほんとですか?じゃあ、兄様行きましょっ!」
レイ兄様の腕を引っ張って海まで連れて行きます。
ちょうど、波にさらわれないくらいのところで靴と靴下を脱いで、ソロソロと水際まで来ました。隣には、少しだけ緊張したようなレイ兄様が居ます。
ザザーン
「「っ!冷たい!!」」
2人の足に波が押し寄せて来ました。やっぱり、暖かい地方といっても海水は冷たいです。
波に砂がさらわれて行く感覚がとても擽ったくて、笑っちゃいます。
「レイ兄様、冷たいし、擽ったいですね。くふふ」
「ね。こんな感覚初めてだよ。あ、見て、小さい魚がいるよ!」
レイ兄様の、珍しく年相応の笑顔に私はとても満足です。カート兄様とハンクは水を掛け合っています。あぁ、ハンクもカート兄様も夢中になっやるから結構びしょびしょになって来ました。あらら
「おらチャコ!」
「ちゃこ、危ない!」
バチャン
カート兄様に思いっきり海水をかけられました。レイ兄様が庇ってくれたものの、服が濡れてしまいました。ぐぬぬ。
「やったわねぇ!!!カート兄様、覚悟!!」
カート兄様のところへ行って、下から水をかけようとしたのに砂に足を取られてバランスを崩します。
バチャン!!
「なーにやってんだ、チャコ!びしょびしょになってるじゃないか!!ははは」
「なっ!!カート兄様のせいです!!酷い!!‥‥この服、気に入ってたのに‥‥ぐす」
泣き真似をして、わざとその場に留まり、カート兄様が近づくのを待ちます。
「ちょ、わ、悪かったよ、チャコ、泣くなよ~!」
慌ててみんなが近くに寄ってくるのを見計らって、カート兄様の手を掴むふりして引っ張ってやりました。
バシャーン
「ぐえっ!しょっぱ!!」
「あははは!やられたらやりかえす~~カート兄様、ツメが甘いですわよ?」
「カート兄上、やられてやんの~~」
指差して笑っているハンクも、カート兄様によって海へダイブさせられました。ぷぷ
レイ兄様は、危険を察知したのか逃げようとしましたが、三人がかりで捕まえて最後には一番派手に投げられていました。
「ふぁ、ふぁ、ふぁくち!!」
「あぁ、チャコがくしゃみしてる。もう帰ってお風呂に入ろう。このままだと四人とも風邪引いてしまうね。」
「だな。さみぃー」
「カート兄上がはしゃぐから!でも、楽しかった!!」
それぞれ、タオルを貰って足早に屋敷へ入ります。
やはり、子供。水遊びは楽しいのです。私も、中身がアラサーといえど子供。‥‥楽しかったです。明日も、みんなで楽しく過ごせますように。
「ねっ!!明日は何しますか!?」
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