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第1章 この度、伯爵令嬢になりました。
36*ジンとお買い物に行くのです
しおりを挟む「これからどこ行くんですか?」
「ん~あんまり決まってないんだけど‥‥まずは、ジンの服を見に行こうかと思うの。いいお店知らない?」
「俺の!?そんな、悪いです‥‥」
「って言っても、いつまでもその格好のままってわけには行かないし‥‥大丈夫、お父様からは許可をもらってるわ!私の従者らしく、小綺麗にしてこいって!」
「すみません‥‥俺なんかのために‥‥」
ジンは下を見ながら申し訳なさそうに弱々しい声で謝って来ました。
「俺のせいって‥‥何言ってんの?『私が』、やりたい事なんだから、いいわばこれは、私のわがまま!だから、ジン君が気にすることなんか、無いんだよ?ってか!自分に自信のない男はモテないぞ!」
下を向いていたジンの顔をグイッと私の目線と合わせます。
うん、やっぱり、前髪であまり顔が見えなかったけど、いい顔してる!
ちょっと手を加えれば、絶対かっこよくなるわ!
「っふは、そう、ですか。有難うございます。」
「ほら、早く行くよ!ジンくんをめちゃくちゃかっこよくしてあげるから、覚悟して!」
そう言って、ジンの手を取って歩き出しました。
「私、こっちの下町にはあまり詳しくないから案内よろしくね。」
「はい。お任せ下さい。」
「よし、任せました。ふふ」
◇◆◇◆◇◆
「これと‥‥これと、これ。あ、あとそっちのあれも。よし、ほら、取り敢えず着て見せてちょうだい。」
「こんなにですか!?」
私に渡された服を持ってジンは目を丸くしています。
「こんなにって言っても、似合わなければ買わないし、古着だからそんなに高くもないよ?これとか、100アルタだし。」
「お嬢‥‥」
「ジン。とりあえず、着て来て。ほら、早く!次もあるんだから!」
「わ、わかりました‥‥」
私の気迫に押されて、ジンはそそくさと試着室に行きました。
ジンを待っている間、私は自分の服を見ます。あ、このブラウス可愛いですね。持ってるスカートと合わせたらいい感じかもしれません。
「あ、あの‥‥」
ジンが恥ずかしそうに出て来ました。私より大きい背格好のくせに猫背になるもんだからなんだか小さい子のような印象になります。いや、結構痩せてはいるんですけどね?
「ほら!シャキッと立って!」
「は、はい!」
ビシッと手を横にまっすぐ立ったジンを私はジーッと真剣に見ます。こんなに見られて恥ずかしいのか、ジンの目がウロウロと彷徨っています。ふふ。照れてる。可愛いっ!
あんなに熱く語ったり、人の事を睨みつけたりしてたくせに、今はそんなそぶりは全くありません。照れて、前髪で顔を隠すように俯いてしまっています。
「うふふ。」
笑いが声に出てしまいました。
「っ!や、やっぱり変ですね!お、俺、着替えて来ます!」
「何言ってるの!とってもよく似合ってるよ!あ、店員さん。この服下さいな。このまま着て行ってもいいですか?」
「もちろんです。では、前の服を袋に入れますね。此方は如何しますか?」
「そっちも下さい。あと、これとこれも。」
ちゃっかり、自分の服も入れてもらって、古着屋さんを出ました。
「こんなに買ってもらって‥‥すみません。」
ジンは相変わらず恐縮してしまっています。でも、大事そうに両手で袋を抱えているので、決して迷惑なわけではなさそうです。良かった。
「っていっても、私の服も入ってるからね!ほら、次は‥‥下着屋さん!次はさすがに一人で買ってきなよ!最低、パンツ5枚、肌着5枚、靴下5足ね!」
「は、はい!」
「あ、サイズ間違えないようにね!」
「は、はい!」
そう言って、私は下着屋さんの前で待ってます。
初めてのお使いなのかジンは緊張した様子で店員さんに話しかけています。うふふ。
「お、お待たせしました!」
「ちゃんと買えた?」
「はい!」
「じゃあ、次はー・・あ、あんなとこにケーキ屋さんがある!」
「あぁ、最近できたらしいですよ。さっき、店員さんが‥‥」
ぼぼっというように一気に何故か真っ赤になったジンは口籠ってしまいました。
「? まぁ、いいわ。一通り必要なものは買えたし。ちょっと休憩して帰りましょ。」
「は、はい‥‥」
私は、いまだオドオドしているジンを置いてケーキ屋さんに向かいます。ジンは、慌てて私に付いて来ました。うん、なんだっけ、こういう生き物のゲームあったよね。昔の‥‥えーっと‥‥そうだ、ピク◯ン!あぁ、懐かしい。少し後ろを歩いているジンをチラッと見ると下から見たからジンと目が合いました。ニコッと笑うとまた、視線をずらして少し後ろに下がってしまいます。うん、ピク◯ンですね。くふふ。可愛い。
「どうぞ」
ジンがケーキ屋さんのドアを開けてくれました。
「ありがとう。うっわぁ!美味しそうなケーキがいっぱい!!どれ食べる?」
「え、俺もいいんですか?」
「私だけなわけないでしょ?一人で見せびらかしながら食べる趣味なんか無いわよ。」
「えっと‥‥どれがいいか分かりませんので、お嬢と同じ物を‥‥」
「うーん‥‥じゃあ、定番のショートケーキにしようかな~~」
ケーキ屋さんには、小さめの飲食コーナーがあるのでそこで食べることにしました。
「どう?おいしい??」
「・・・」
ジンが一口ケーキを食べて、何度も首を縦に振ります。
何この子、可愛い!素直!チラッと見える目がキラキラしているのがわかります。うん、気に入っていただけたようで。ふふふ
「ん~~本当に美味しい!イチゴも甘くて美味しいねぇ」
頬っぺたに手を添えて私もケーキを楽しみます。
うん、本当にこのケーキ美味しいっ!お土産買って帰ろうかな?あー次はチーズケーキ食べたい~~あるかな?
って言っても、1日に二つもケーキ食べると太っちゃうのでやめて置いて、適当なお菓子を買って家に帰りました。
*****
「チャコ、おかえり!‥‥ってあれ?その子‥‥」
帰って来て早々、レイ兄様と会いました。
「ただいま帰りました。はい、この子覚えてますか?この前、港で助けた子です。色々あって、私付きの侍従になりましたの。これから宜しくお願いしますね。」
「え?この子、雇うってこと?チャコ付きで?」
「はい!話してみるといい子ですよ。仲良くしてくれると嬉しいです。じゃあ、私、部屋に行って着替えて来ますね。」
「え、あ、うん。」
何か言いたそうではあるけれど、いつまでも下町の服装で屋敷をうろつくわけにいかないので先に着替えに行こうとします。
「あ、レイ兄様!あとで、お庭で練習しませんか?」
「うん。いいよ。じゃあ、先に行って待ってるね。」
「はい!着替えたら、すぐ行きます!」
レイ兄様と一旦別れて、自室に戻ります。後ろから荷物を持ったジンが着きました。
部屋に行く途中で、ジャンを見つけたのでジンとジャンを紹介しました。
「ジャン。さっきも話したわね。此方がジン。ジン、挨拶して」
「じ、ジンって言います!これからよろしくお願いします!」
勢いよく90度に体を折って頭を下げたジンの手から先ほど買った服などが紙袋から勢いよく落ちました。
「あ、すみません、あ、お嬢の服が‥‥すみません!」
急いで拾っているジンに、ジャンは呆れながらも拾うのを手伝ってあげました。
「ほら、慌てるな。誰も取りゃしないから。ほら。」
ジャンが、靴下を拾ってジンに手渡します。ジャンの事を見て、目を丸くしているジンはボソッとお礼を言いました。うん?なんだ?いい感じか?先輩x後輩も、私、大好物ですけど。うふ。こんな所にも観察カプが発生しました。うふふふふ
ヨダレを垂らしながら二人を見ていると、ジャンとジンは拾い終わったのか立ち上がります。
「俺は、ジャン。このエヴァンス家の侍従だ。ジンの先輩になるからな。わからないことがあったらなんでも聞いてくれ。多分、1番年が近いだろうから。」
ジャンはそう言って、手を差し出しました。差し出された手をジンは両手で掴んで嬉しそうに笑っています。
「はい!よろしくお願いします。ジャンさん!」
「‥‥じゃ、私はレイ兄様と約束があるからこの辺で失礼するわ。」
「あ、はい。」
ジンは荷物を持ち直すと私についてこようとしました。
「ジンは、ジャンに家のことや仕事のことを色々と教えてもらって。荷物は後で部屋に持ってきてちょうだい。ジャン、それでもいいかしら?」
「はい、畏まりました。」
「では、お願いね。じゃ!」
そう言って、服を着替えに自室に戻りました。
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