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第2章この度、学生になりました。
18*【ディナン目線】その2
しおりを挟む【ディナン目線】
「ディナン様、少し宜しいでしょうか。」
私室で宿題をしているとアルバートが神妙な顔で声をかけてきた。
私は握っていたペンを置いてアルバートの方へ向き顔を見ると、アルバートの顔色が少し悪いように感じた。
なにかあったのか?なんだか、いい話では無さそうだ。
「なんだ。」
「‥‥良い知らせと悪い知らせがあるのですが、どちらから聞きたいでしょうか?」
「‥‥良い知らせからで。」
「畏まりました。」
すると、アルバートは持っていた箱を手渡して来た。開いてみると中には何通もの手紙が入っている。これはもしかして‥‥。
「これは‥‥チャコの‥‥?」
「ハイ。ある所で見つけまして‥‥お持ちしました。」
「ある所‥‥‥‥何処だ。」
「‥‥‥‥悪い話になってしまうのですが。」
「構わない。教えろ。」
「‥‥‥‥お妃様専用の書庫でございます。」
「母上の?」
母上がチャコの手紙を持っていた?‥‥と言う事は、母上が何か細工をしてチャコと引き離そうとしたと言うことか?しかし、何故?理由がわからない。それに、手紙を隠したり連絡石に細工をしたりしてまで引き剥がそうとしていたのに、どうしてチャコの手紙を捨ててないんだ?普通は何年も前の手紙なんか保管なんかせずに捨てるだろう?いや、とっておいてくれたのは良かったが‥‥それに、何通かは、開いた形跡があるがほとんどは未開封のままだ。おかしな事ばかりだ。母上は何が目的なんだ?
「ディナン様?」
「いや‥‥それで、何か他に分かったのか?」
「はい。お妃様は、6年前からつい最近までディナン様宛の手紙を全て一度手元に届けさせていたようです。検閲も済んでいるものも全て。そして、侍女達の情報だとディナン様の行動を逐一監視していたそうです。」
「付き合う相手を選ばれてたってことか‥‥。チャコは、母上には気に入られなかったと言うことか?」
「そうかもしれませんが‥‥しかし不思議なのが、監視が最近までで、今は監視がなくなっているらしいんです。ティナ様を気に入らないのなら、同じクラスになった時点で監視を厳しくしてもおかしくないのに‥‥」
「確かにな‥‥。しかし、今はリリとの婚約の話が出ているからな。それで落ち着いたと言う事ではないか?」
「そうですかね‥‥」
「息子を思うあまりの行き過ぎた行動‥‥と言うだけならいいが‥‥‥‥」
いつもは私に興味の一つも持たない癖に、そういう時だけ口出されるのは腹がたつがな‥‥。
「まぁ、当時のディナン様は幼かったのでそうかもしれませんが‥‥」
「なんだ?何か他に心当たりが?」
「‥‥確信は無いのですが、もしかするとお妃様は、ティナ様の存在価値に気づいたのかもしれません。」
「‥‥まさか。」
「はい、ティナ様は色々と奇抜な物を作ったりしているので嫌でも目立つでしょう。それに、あの容姿ですし、勉学も教養も申し分ないと思われたのでディナン様の監視は無くなったのかもしれません。ただ、ティナ様の監視が強くなっているかもしれません。」
「‥‥チャコの。」
確かにもしも、母上にチャコの創造魔法の事を知られたらどうにかして王家に取り込もうとするかも知れない。母上は『欲しい』と思ったら徹底的にする人だからな。王家のためなら最悪、戦の時に連れて行かれたりするかも知れない。‥‥そんなのは絶対させないが。うーーん。どうしたものか。
「わかった。気を付けてちゃこの周りを見てみるよ。ありがとう。」
「いえ、何かあればなんなりとお申し付けください。」
「あぁ。下がっていいぞ。」
「失礼致します。」
アルバートは綺麗に一礼すると部屋を静かに出て行った。
私は、アルバートに手渡された手紙の入った箱をゆっくり開けて見た。
「‥‥こんなに。」
本当に、一杯手紙を書いてくれていたんだな。
その手紙は、6年前のチャコが出発した翌月から来ていて、一番最近のは去年の私の誕生日まであった。一つ手にとって読んでみる。
『ディナンへ
お元気ですか?
私は、こっちに来てもう、半年が経とうとしています。だいぶ生活にも慣れて、領地の事を知るために街に出たり楽しい日々を送ってます。まぁ、やっぱり、友達に会えないのが
寂しいですけど‥‥。
この前、ジョーが遊びに来てくれて、ディナンの事をいっぱい話していました。
二人がとても仲良くなっていて嬉しい反面、少し、羨ましくて妬けちゃった。
私も、ディナンに会いたいなーって思ったよ。
・
・
・
ディナンへの、誕生日プレゼント届いたかな?
喜んでくれるといいんだけど‥‥。
今度、感想聞かせてね。
ディナンはとても忙しくて大変だと聞きました。
体には十分気をつけて、休めるときは休む事!あと、バレない程度に息抜きする事!
頑張り過ぎちゃダメよ?
次に会える日を楽しみにしてます。
チャコより』
手が震えるのがわかる。
チャコは、ずっと私の返事を待ってくれていた事実がこんなに嬉しいとは‥‥。
返事も無いのにほとんど毎月のように送ってくれて、近状報告や私の体の心配、何通かには領地の人と撮った写真や、魚釣りで大きい魚を捕って満面の笑みのチャコの写真なども入っていた。
「‥‥チャコ。」
会いたい。今すぐ会って、抱きしめたい。
しかし‥‥そんな事をすればまた母上に報告が行って、チャコに迷惑をかけてしまうかもしれない。
「まだ、我慢だ。ちゃんと、準備しなければ。」
母上がいま、チャコをどう思っているのか、なぜこんな事をしたのか、ちゃんと話し合ってチャコを守れるようになってからではないと‥‥少しでも、チャコに危ない橋を渡らせることはしたく無い。
私の心は決まった。
やはり、チャコを諦めるなんて出来ないし、したく無い。
だからすぐにでも母上と父上にリリとは婚約できないと伝えよう。
部屋でベルを鳴らしてアルバートを呼ぶ。
「失礼致します。」
「何度もすまないな。」
「いえ、なにか、思いついたのですか?」
「思いついたというか‥‥とりあえず、母上と父上と話したい。二人に面会の予約を取ってくれ。」
「畏まりました。」
「宜しく。」
「はい、失礼致します。」
アルバートは踵を返して部屋を出て行った。
はやく、はやく伝えなければ。私の婚約の話だ。父上も母上も私の意向を無視することには出来まい。‥‥もしかしたら、無茶な課題を出されるかもしれないが‥‥。しかし
「どんなものだって絶対に乗り越えてやる。」
チャコの写真を見ながらそう、私は固く決意した。
◇◆◇◆◇◆
今日は、宰相殿の誕生日パーティーの日だ。
結局、両親とはまだ話せていない。早くても1週間後と言われてしまったからだ。
‥‥まぁ、今日発表することもないだろうしな。明日には話せるんだ。いいさ。焦りは禁物だ。
「アルバート、本当に、これで行くのか?」
たかが、誕生日パーティーなのに正装して行くのか?
普通のスーツでは行けないのか。あ、でもチャコが楽しみにしてるって言ってたな。ちょっと動きづらくて堅苦しいが‥‥まぁ、我慢するか。チャコ、少しでも気に入ってくれるといいんだが。
「仕方ないんです、公爵閣下が着て来て欲しいと言われたのですから。誕生日プレゼントって思って我慢してください。」
「うーーん。まぁ、いいんだが。」
「今日は、一曲でも踊ってくださいね。」
「む。何故だ。」
「だって、もっぱらの噂ですよ?ディナン殿下は踊りが下手だから誰とも踊らないって。ちょっと、悔しいではありませんか。」
「まぁ、得意では無いし、言わせておけば‥‥」
「ディナン様!そんなネガティヴだと、ティナ様に呆れられてしまいますよ!ほら、今日はティナ様もいらっしゃるんですし一曲くらい踊ってくださいね!」
「‥‥まぁ、状況で判断する。」
「‥‥もう。」
アルバートは呆れたようにこれ見よがしに溜息を吐きつつ車の手配をするためにドレスルームから出て行った。髪のセットをしている時に、チャコの言葉を思い出した。
『髪を上げてみて欲しい!』
あれは、ジョーに言った言葉だったが‥‥確に余り額を出したりしないからな。すこし、新鮮かもしれない。
「髪なんだが‥‥」
「はい。」
「前髪を後ろにして少し、額を出すようにしてもらえないだろうか。」
「ほぅ、とっても良いですね。ディナン殿下の美しいお顔がちゃんと見えてとても良いと思います。」
「では、それで頼む。」
「畏まりました。お任せください。」
◇◆◇◆◇◆
「宰相、誕生日おめでとう。」
「いやはや、ディナン様!来て頂けてとても嬉しいですぞ!‥‥今日はなんだか、とても雰囲気が違いますな。良い男になりましたな~~私もとても嬉しく思いますぞ!」
「大袈裟だな、宰相は。」
「ふふ。本当に、お父様は大袈裟ですね。」
「おや、リリア。リリアも今日の殿下がとても素敵だとは思わないか?ん~??」
「え?いつも通りですわ。」
「そうか、そうか。いつも通り格好いいか。それは良かった。」
「お父様?なんだか、会話が出来ていないようですね。ふふ。」
宰相はどこまで行ってもポジティブだな。ビックリするぞ。
リリの反応は、絶対にあの時の会話を思い出して笑いそうになっているし‥‥やはり、ジョーに言った事を私がするのはやめれば良かったかもしれない‥‥
「ディナン殿下。お越しいただいてありがとうございます。本当はチャコのエスコートをしたかったでしょうに‥‥ジョーに先を越されてしまって‥‥ふふ」
「リリ、傷をえぐらないでくれ。」
「あら、すみません。殿下、私はかっこいいとは思っていませんけど、多分、チャコは好きだと思いますよ。殿下の髪型。」
「ほ、本当か!?」
「はい。私はチャコの好みを知り尽くしていますから。断言できます。」
「そ、そうか‥‥良かった。」
早くチャコにも見てもらいたいな。チャコはどう思うのだろうか。
すこしは、かっこいいと思ってくれたら良いんだが。
侍女がリリに何か耳打ちをした後、素早く出て行った。
「殿下、チャコとジョーが着いたようですよ。そろそろ行きますか?」
「そうか。あぁ。行こう。」
リリをエスコートするために手を差し出すと、リリはニコッと笑った後に手を置いた。
他の女性をエスコートしながら好きな女性へ向かうのは‥‥いくら友達といってもとても不誠実な気がするな。今回だけ、だ。次のパーティーではチャコのエスコートを絶対にしよう。次はジョーには負けないようにしないと。
「殿下、私は今日踊りたくないのです。」
「あぁ。私も、踊るつもりはない。」
「よかった。‥‥でも、殿下は踊らなくて良いんですか?」
「なにが?」
「チャコの初めての社交ですよ?多分、初めてのパートナーはジョーがするんでしょうけど、殿下も誘ってみてもいいのでは?」
「まぁ、機会があったら‥‥」
「二人のダンス、楽しみにしてますね。」
「‥‥あ、あぁ。」
「チャコ、どんなドレスですかね?何着ても似合うでしょうけど‥‥早く会いたいなぁ。ね、殿下もそう思いません?」
「そうだな。どんなドレスを着ていても絶対に美しいんだろうな。楽しみだ。」
「ふふ。」
リリとの会話はほとんどチャコが中心だな。リリも、チャコが大好きすぎると思うのは私だけだろうか。
そういえば、フィンの姿が見当たらないな‥‥。
自分の父親の誕生日パーティーに出席しないわけないんだが。
まぁ、いたらいたでちょっとこの前のこと思い出してムカつくから考えないようにしよう。うん。そうしよう。
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