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第2章この度、学生になりました。
29*【リリア目線】
しおりを挟む【リリア目線】
「あら、もうこんな時間!帰らないと怒られてしまうわね。」
チャコが書いてくれた小説を読んでいたらあっという間に時間が過ぎてしまって、ほぼ生徒がいない時間になってしまいました。辺りは夕日で赤くなり、段々と陽も傾いて段々と暗くなりつつあります。
「だめね、集中しすぎたわ。」
誰もいない廊下を一人で歩きます。
でも、本当、チャコのこの本は傑作だわ。
とても、魅力的な4人が繰り広げる愛のある世界観がとても眩しくて、素晴らしいのです。
「あぁ~こんなこと、小説の中でしかありえないのかしら‥‥」
ガタ‥‥
たまたま通りかかった、空き教室の前を通った時に物音がしました。
「‥‥ほとんどの生徒は帰ったはずよね‥‥?」
・・・まさか!!『やり部屋』なる所!!??
「でもでも、そ、そう言うところって”男子校”とかにしか無いんじゃ‥‥とりあえず‥‥うん。ここは確認しないとっ!!」
音のした教室に、一歩一歩音を立てないように近付きます。
教室の中の音を聞くてめにドアに耳をつけました。
「ぐっ‥‥う‥‥‥‥っはぁ‥‥はぁ‥‥」
なんか、苦しそうな男の人の声‥‥?
もしかして、もしかして、もしかして!!!リアルBのL!?
「な、んだこれは‥‥うぐっ‥‥はぁ‥‥はぁ‥‥」
ってか一人っぽい?それに、苦しそう‥‥?え、もしかして緊急事態?
っていうか、この声って‥‥
「‥‥お兄ちゃん?」
聞きなれた声に私は勢いよく教室の扉を開けました。
ガララ‥‥
扉を開けるとロッカーに身を預けて苦しそうに首を抑えているお兄ちゃんの姿がありました。
「‥‥っ!お、お兄ちゃん!」
急いでお兄ちゃんに駆け寄ります。
「り、りり?‥‥っ!こんな時間ま‥‥で、なに、して‥‥。」
「そんなことどうでもいいですわ!お兄ちゃんこそ、どうしたんですの!?怪我ですか!?いま、誰か呼びますから、ちょっと待っていて下さいね!!」
急いで教室に設置されている職員室へ繋がっている魔法石に魔力を込めて先生を呼びました。
直ぐに先生が何人か駆けつけてくれて、お兄ちゃんを保健室へ連れて言ってくれました。
お兄ちゃんはずっと首を抑えて苦しそうにしていて、私はお兄ちゃんの手を握っていることしかできませんでした。
◇◆◇◆◇◆
シャ‥‥
保健室へ来て、保険の先生が応急処置をしてくれてからやっと、息苦しさが和らいだのかお兄ちゃんは静かに眠りにつきました。
「イルハウェルさん、ちょっと、詳しく状況を聞きたいのだけれど、いいかしら?」
「は、はい。」
保険の先生にそう言われて、その場にいたお兄ちゃんの担任の先生と、私の担任の先生そして保険の先生の四人で保健室から静かに廊下へ出ました。
「‥‥まず、どんな状況で彼を見つけたの?」
「私、小説を読んでいたら熱中してしまって‥‥時間を忘れて教室で読んでたんです。陽が傾いてるのに驚いて‥‥一人で迎えの車の所まで歩いてたらあの教室の前で物音がして‥‥耳を当てて中の様子を聞こうとしたらお兄ちゃんの苦しそうな声が聞こえたので‥‥教室に入って、先生方を呼びました。」
「‥‥そう、あの首の痣、彼は誰かに魔法薬を刺されたのかも知れないわ。」
「ま、ほうやく‥‥‥?」
まさかの言葉に言葉が詰まります。
二年生からは魔法薬を作る授業があることは知っていますが、一年生の私はまだ習ったことも触ったこともないものです。
「調べてみないことにはなんとも言えないけれど、私の知っている物だとしたら、初めは気持ちを高揚させてその場にいる人が愛おしく感じるんだけど‥‥」
「だけど‥‥?」
「その相手に物理的に受け入れて貰えないと‥‥毒となって体に回って最後は窒息死する。」
「・・・・・・・え?」
まさか、嘘よね?お兄ちゃんが死んじゃうなんて‥‥。
ちょっとしつこいし、腹黒いし、面倒臭いお兄ちゃんだけど、大好きなんです。
居なくなるなんて・・・・
「げ、解毒方法はないんですか!?お兄ちゃんは‥‥うそ、そんな‥‥!」
体が震えて自分で何を言っているのか分からなくなってきます。
「イルハウェルさん、落ち着いて!」
私の担任の先生に肩を掴まれてやっと我に返ります。
「大丈夫、解毒方法はあるから。大丈夫だから、落ち着きなさい。」
いつも仏頂面で必要なこと以外はあまり話さないおじいちゃん先生だと思っていたのに思っていたよりも優しい声色に肩の力が抜けるのが分かりました。
制服の袖で涙を拭って、保険の先生を見るとニッコリと笑ってくれました。
「まぁ、そんな薬なんだけどね。でも、この魔法薬は解毒薬もあるから心配しなくて良いわよ。この学校ならすぐ作れるから。ただ‥‥」
「た、ただ‥‥?」
「さっきも言った通り、その場にいた意中の相手を探さないといけないの。その人の体液を一雫必要なのよ‥‥お兄さんが、放課後誰といたか分かるかしら?」
「・・・」
その人がお兄ちゃんに薬を打ったってこと?
でも、受け入れていればこうはならなかったはずだし‥‥
話を聞く限り、要は惚れ薬ってことよね?惚れさせておいて放置した?
・・・いや、誰が打ったかは分からないけれどその人のとお兄ちゃんをくっつけようとして失敗した。だから、お兄ちゃんはこんな苦しむことになったって感じね。
放課後‥‥?
まだ学校に残っていそうな人‥‥
「殿下・・・?」
「「えっ!!」」
意外な人物だったのか先生方は3人ともビックリした声を出しました。
「え、と、おに‥‥兄は、生徒会に入っているので、結構遅くまで残ってることも多いんですけど、そう思うとディナン殿下と一緒にいたのかなって‥‥」
「た、たしかに‥‥。」
まさか・・・・・お兄ちゃんと殿下を‥‥?え、なにそれ・・・!
誰それ!!誰か、私とチャコ以外でも腐っている人がいるってこと!!??
え、仲間!!!いや、だめよ!お兄ちゃんのことこんなに苦しめた人となんて友達になれない!!!絶対、制裁してやるんだから!!!
一人で仲間がいるかも知れないと言う嬉しい気持ちと、お兄ちゃんを苦しめて憎い気持ちがせめぎ合いつつもとにかくディナン殿下に話を聞こうと魔法石で連絡を取ります。
「ご機嫌よう、ディナン殿下。いま少しよろしいですか?」
『リリが連絡してくるなんて珍しいな。どうかしたのか?』
声にやましさは無さそうですね・・・。
さすが、平静を装うのが上手いわ。
「はい‥‥兄が倒れまして‥‥保健室まで来てはいただけませんか?」
『なに!?わかった、今行く!』
殿下はすぐに来てくれました。
事情を説明すると、私の疑った意味がわかったのかウゲェといや~な顔をして「フィンとはそんな話はしていない」と否定された。
「では‥‥兄が誰といたか、何か見てはいませんか?」
殿下は顎に手を当てて「あ、」となにか思い出したような声をあげました。
「な、なにか、思い出しましたか!?」
「あ、あぁ‥‥放課後、生徒会用の東屋でチャコと話しているのを見かけた‥‥」
すごく不本意な顔をして教えていただけました。
・・・そうなると、誰かがチャコとお兄ちゃんをくっつけようと?でも、チャコは殿下が好きだからお兄ちゃんは振られて‥‥。
「そうですか‥‥。では、チャコをいま呼び出してくれませんか?」
「チャコがフィンに薬を盛ったと思うのか!?」
「そんなわけないじゃないですか!多分、誰かがチャコと兄をくっつけようとして、失敗した・・・そう思う方が自然です。仮にチャコが薬を盛ったとしたら、兄はこんなことにはなっていないと思いますので。」
「そ、そうか‥‥うん、そうだよな‥‥。わ、わかった。チャコを呼ぼう。」
「はい。チャコはもう帰ってしまっているので私の魔力では連絡出来ませんの。ディナン殿下、お願い致します。」
「あ、あぁ‥‥」
私達が話している間も、先生方は解毒薬を作る準備や本当に思っている通りの薬なのかを調べてくださっています。
お兄ちゃんは今も、先生のおかげでぐっすりと眠っていました。
殿下と私は、保健室の椅子に腰掛けてジッとチャコが来るのを待っていました。
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