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第2章この度、学生になりました。
32*リリへ報告をするのです。
しおりを挟む「えぇぇ!!なになに、あたし達と別れた後そんな事になってたの!?」
リリが驚いたように声を上げました。
うん。一気にクラスメイト達に注目されてしまいました。
「ちょ、リリ!しーーっ!!‥‥まあ、勢い余ってって感じだったけどね‥‥。なんとか、両想いにまでなれたよー!」
だいぶ端折ったものの、昨日の事をざっくりとリリに報告しました。
興奮している様子のリリに、盗聴防止の石を握ってもらいます。
「えーーっ!!よかった!本当よかったねぇ!!いつ打ち明けるのかワクワクして待ってたからさー!この前のパーティーの時の二人がとてもお似合いだったから、横から茶々入れてくる人は早々いないんじゃない??」
リリにそう言われて、ハンナ様の顔が脳裏を横切ります。
思い出して眉間にシワが寄ってしまうのはもはや仕方ない事です。
「いや、そうでもないよね‥‥ほら、ハンナ様とか、絶対、諦めてないでしょ?家柄も、私よりも相応しいし‥‥。」
「ん~でも、すぐに殿下が婚約を申し出るって言ったんでしょう?なら、時間の問題なんじゃない?」
「だといいけどねぇ‥‥。だってさ、女の子の執着って結構凄まじくない?生き物で、一番女の人が怖いからねぇ‥‥」
前世を思いだしてしみじみとそう言うと、リリは少し驚いたような顔をしました。
「どうしたの?」
何か変なことでも言ったかなと思ってリリに問聞くと、リリは意外そうに
「いや、チャコがなんだかすごく経験豊富な人に見えたから‥‥」
ギクッと小さく肩を揺らしてしまいました。
「あ~最近読んでる恋愛小説がすごくドロドロしたやつだったから‥‥それの影響かなぁ~?はは」
前世で色々経験してますから。とは流石に言えず、ちょっと無理矢理な話で誤魔化してしまいました。
「でも、本当にそうだよね。ハンナ様とか、執着凄そうだし‥‥気を付けてね。チャコ」
リリが急に真剣な顔で言います。
私は、無言で頷きました。
「時に、チャコさん。」
「はい?」
「昨日の、お兄ちゃんの件、どう思いますか?」
顎に両手を当てて、司令官スタイルで訪ねて来たので私は顎に手を当てて、名探偵スタイルで答えます。
「私に恋人が出来て喜ぶ人って、真っ先に浮かぶのはハンナ様だけどさ‥‥そこまでするかな?魔法薬学の成績、良いのかな?」
暗に頭悪そうと言っているようになってしまいましたが、今までの行動を見るとそこまで頭が切れるような人には思えません。まぁ、敢えておバカに見せてるのかもしれませんが。あ、失礼でしたね。こんなこと思っているのは心の中だけですよ。決して、口にはしません。ご安心を。
「あ~‥‥ハンナ様、結構勉強は得意らしいよ。特に、魔法薬学と歴史が得意なんだって。」
意外なリリの答えに驚いてしまいます。
「へぇ‥‥意外だ~‥‥って、もう調べたの?早くない?」
「ん~調べたというか、ちょっと前にお兄ちゃんのお相手にって話が上がった時があったみたいでさ。その時に調べたのを、昨日帰ってからアルノーに見せてもらったの。」
「おぉ‥‥さすが。」
「ハンナ様はわがままなところもあるけど、成績優秀、容姿端麗、運動神経も、良いらしいわ。趣味は刺繍、読書、あとは殿下の行動観察らしいわ。」
「ほうほう‥‥って、え?行動観察?なにそれ?」
なんだか、不穏な言葉が最後にあったような‥‥?
「なんでも、殿下の事が小さい頃から大好きで、週末には用事も無いのに王宮へ行って遠くからこっそりディナン殿下を見ていたり、周りに聞いて回ったりしているらしいわよ?」
「へ、へぇ‥‥」
それって、ストーカーってやつでは‥‥?
王族=芸能人みたいなものだから許されてるのでしょうか?
「いままではそれでよかったんでしょうけどね。話しかける機会もそれほどなくて、遠くからこっそり鍛錬しているところを見たり、お茶しているところを見たり、殿下の身の回りの世話をしている侍女に色々と話を聞いたりしているだけで満足だったんでしょうけど‥‥」
リリが伏し目がちに言いづらそうに頬に手を当てて溜息を吐きました。
「な、何かあったの?最近‥‥。」
今の話だけでも、ギリギリアウトな気がしてしまうんですが‥‥。
「あったというか‥‥。なんでも、王妃様が開いたお茶会にハンナ様がお姉様と一緒に、招かれたらしいの。その時に、ディナン殿下も居て、デイヴィット殿下が婚約者の妹として、ハンナ様を紹介したらしいのよ。それで、最近学校でもちょくちょく話しかけたりして、距離を縮めようとしているってわけ。」
「・・・そうなんだ。」
知らない所で‥‥しかも、私の手の届かない所で、ディナンとハンナ様の話を聞いて、胸が少しだけモヤっと薄暗い気持ちが芽生えてきます。
「まぁ、ディナン殿下の事だから、心配はいらないけどねぇ~ただ‥‥」
私を元気づけるように、リリはまた、私の背をポンポンと叩きました。
「え、ただ?な、なに?」
「女の逆恨みは本当に怖いからね。そこだけは、気をつけたほうがいいと思うよ。」
「そ、そうだね‥‥。気をつける‥‥。」
本当に、その通りですね。まぁ、私はあまり関わる必要はないと思うので、ディナンがハンナ様を刺激しなければ変に恨み買うことも‥‥いや、婚約を申し出たら恨まれますね。まぁ、それは仕方ないので受けて立つしかなさそうですが‥‥うーーん。なんとか穏便にやり過ごしたいものです。
「まぁ、何はともあれ、うまくまとまったんだから良いじゃないの!末長くお幸せにね!」
「うん、ありがとう~」
リリにお祝いの言葉を言われて、ハンナ様のことはあるけれど、やっぱり嬉しい気持ちが勝って頬が緩んでしまいます。
ちょうどそんな時、教室の前のドアからディナンとジョーが入って来ました。
朝の挨拶を交わして、ディナンを見ると何故か目を合わせてくれません。
昨日の夜も普通に連絡とっていたのに‥‥。
「ディナン?どうしたの?何かあった?」
授業が始まって、隣に座っているディナンにこっそりと話しかけます。
「い、いや‥‥。」
「私、なんかした?」
少しだけ不安になって、ディナンのことをジッと見て様子を伺ってしまいます。
「~~っ。だから、チャコ見てると、昨日の事が‥‥その‥‥思い出しちゃって‥‥。ニヤけてしまうから‥‥。」
「っ!‥‥そ、そっか。」
想像していた答えと違って、思っていたよりも前向きな答えに私まで釣られて赤面してしまいます。
「ちょっと、お二人さん。いい加減にしないと、先生から注意受けますよ?」
少しだけ冷やかしたようにリリが言いました。
リリの言葉に、ジョーも笑っています。
私は、恥ずかしくなって授業に集中することにしました。
・
・
・
「チャコ、話があるから一緒に来てくれないか。」
お昼ご飯はいつもリリと取っていましたが、ディナンにそう言われて今日はディナンと一緒に食べることにしました。
ディナンに連れていかれたのは、食堂ではなく、生徒会室でした。
「部外者の私が入っちゃってもいいの?」
「ん?チャコは良いんだよ。これからは、気軽に来てくれ。ほら、教室とかで話すよりも、ゆっくり話せるし。」
「んー‥‥。わかった。」
来て良いと許可をくれたのは嬉しいけれど、何だかやっぱり生徒会役員じゃないのに気軽に‥‥とはいかないなって、思ってしまいました。
ディナンは、生徒会用の専属執事に食事の用意をするように言って、私とディナンはソファーに座りました。
「それで、話なんだが‥‥。」
「うん。」
「父上に謁見を申し込んだが、一番早くて、会えるのは三日後の朝食だそうだ。だから、その時にチャコのことを話すことになると思う。許可をもらったら直ぐに、手続きが色々とああってその手続きを終えたら、正式に婚約の申し出の手紙をエヴァンス伯爵に送ることになる。」
私では、あまり知らなかった婚約の手続きなどを細かく話してくれるディナンはとても、誠実に私とのことを進めようとしてくれているようで、話を聞いていてとても嬉しくなりました。
「わかった。」
「で、その申し出を正式にエヴァンス伯爵が承認したら‥‥」
「・・・。」
隣にいるディナンが、ギュッと抱きしめて来ました。
「‥‥そしたら、俺たちは正式に婚約者同士になる。」
「‥‥う、うん。」
ディナンの胸元が耳に当たって、ディナンの鼓動が直に伝わります。
私以上に早く動いていて、なんだか、私も恥ずかしくなってしまいます。
でも、心地よい鼓動に私は無意識に擦り寄るように私からもギュッと抱きしめていました。
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