私を捨てた元婚約者が、一年後にプロポーズをしてきました

柚木ゆず

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エピローグ その1

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「おめでとう、クリステル。ここを一緒に歩く事ができて、嬉しいよ」
「私もです、エドガーお父様。お父様と一緒に歩けている事が、幸せです……っ」

 あの騒ぎがあった日から、およそ半年後。今日は、私とディオンさんの結婚式の日。
 式の会場は、ベルラトの畑の近く――私達が出逢った場所から一番近い教会。私とエドガーお父様は今、2つの形見お父様とお母様や親族に見守られながら、バージンロードを進んでいます。

「バージンロードは、花嫁の人生を表していると言われる道。だから、なんだろうね。これまでの出来事が蘇ってきたよ」
「……はい、そうですね。私も、蘇ってきました」

 今から10年前、私がまだ8歳の時。お父様とお母様を失った私を、叔父のエドガーお兄ちゃんが引き取ってくれて、エドガーお父様になった。
 私達は血は繋がっていないけれど、いつもたくさんの愛情を注いでくれて……。大切にしてくれて……。
 本物の子どもとして、育ててくれました。

「あの時も――お父様とお母様を弔う際も、私は酷く落ち込んでいて……。そんな私をぎゅっと抱き締めながら、『今日から僕がクリステルのお父さんになるよ』『クリステルがあっちに行った時にお父さんとお母さんに一杯伝えられるように、楽しい思い出をたくさん作れるようにするよ』って言ってくれましたよね? あの時も、救われました」

 それらをしてもらえなかったら、私はこんなにも楽しい毎日を過ごすことはできていませんでした。
 まずは、1つ目の。ありがとうございます。

「……そして、半年前。お父様が想ってくださっていたおかげで、日常が揺らぐことはありませんでした」

 あのようにしつこく、異常性のある人が相手でも、大事(おおごと)にはならない。たった2日で、解決してしまいしました。

「それは、お父様のお力があったからです。エドガーお父様。私のためにずっと動き続けてくれていて、ありがとうございます」

 これが、2つめのありがとう。
 一歩一歩進みながら今までの感謝を伝え、そうしたら――

の方こそ、ありがとう。姪のクリステルちゃんと過ごした日々も、娘のクリステルとして過ごした日々も。その両方が、わたしにとってのかけがえのないもの。こちらこそ、素敵な思い出をありがとう」

 優しくて柔らかい、大好きな微笑み。おもわず涙が零れてしまうものが、返ってきました。

「これからわたしは、隣ではなく後ろからクリステルを見守るよ。さあクリステル、いっておいで」
「はい、エドガーお兄ちゃん、エドガーお父様。いってまいります」

 終着点にたどり着いたので、エスコートはここまで。私は爽やかな笑顔によって背中を押され、もう一人の大切な人が待つ祭壇へと進んだのでした。

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