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第8話 青ざめる両親~溺愛の代償・1~ ニネット視点(1)

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「昨日(さくじつ)俺のもとに、こんなものが届いたのだが――。俺がいないところで、随分と好き勝手言ってくれたようだな?」

 お姉様にお願いをした次の日の、夕方。応接室ではエドモン様がお顔を真っ赤にしていて、反対にお父様とお母様は顔を真っ青にしていました。
 素敵なエドモン様を馬鹿にしたこと。ダーファルズ家を批判したこと。嘘を吐いて、わたくし達の赤い糸を絶とうとしたこと。などなど。それらをしっかりと記した手紙を無事読んでくださって、そんなものを突き付けられているんですもの。
 そうなるのは当然ですわ。

「この俺が自惚れている、か。その理由を詳しく聞こうじゃないか。さあ、直接教えてくれ」
「……………………」
「……………………」

 わたくしとエドモン様の対面で座っている、お父様とお母様。2人は固まったまま、何も言えずにいる。
 なんとも情けないお姿ですこと。

「質問をされたら答える、そんな当たり前のことすらできないのか? ガレオ、ナディアよ」
「えっ、エドモン様っ! いくらなんでもその呼び方は――」
不敬・・を働いたものに、敬称など不要だ。ところで――。先の問いには答えられないのに、そこには噛みつくのだな?」
「そっ、それは……っ。その……っ」

 お父様もお母様も、プライドが高い人間。格上とはいえ年下にそう呼ばれて、じっとしていられなかったのでしょうね。
 そんな性質が、更にエドモン様の怒りを買ってしまいましたわ。

「俺はますます、腹が立った。……ガレオよ。我がダーファルズ家は、侯爵家並みの財と力を有している。さしもの愚者でも、その程度の知識はあるだろう?」
「……は、はい……。ござい、ます……」
「対して貴様は子爵、ネズレント家は子爵家の中でも下位にある存在。その差は、貴様らの想像以上にあるんだよなぁ」

 にやり。エドモン様の口元が嗜虐的に頼もしく吊り上がり、ふふっ。そちらに反応して、お父様とお母様の背筋がピンと伸びましたわ。

「そして俺の意思は、ダーファルズ家の意思となる。よって――貴様らに対して、ノーリスクノーダメージで色々と行えるんだ・・・・・・・・。……見ての通り俺は現在、非常に腹を立てている。このあとの貴様たちの出方次第では、血の雨が降る未来も大いにあり得るぞ」
「ガレオお父様、ナディアお母様。エドモン様は実際にそう行えるお力の持ち主で、やると仰ればやる御方ですわ。早くお怒りを鎮めないと、大変なことに――」
「もっ、申し訳ございませんエドモン様!! 先日の発言は全て撤回し、謝罪をさせていただきますっっ!!」
「もちろんっ! 今後わたくしたちは一切っ、反対をいたしません!!」」

 ヒィっと無様な声をあげた、お父様とお母様。そんな2人は大急ぎでソファーから立ち上がり、急上昇のあと急下降。仲良く絨毯の上に両膝をつき、エドモン様に跪いたのでした。

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