お姉様、今度は貴方の恋人をもらいますわ。何でも奪っていく妹はそう言っていますが、その方は私の恋人ではありませんよ?

柚木ゆず

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第10話 報告 アンジェリーヌ視点(1)

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「………………」
「………………」

 お前を祝うつもりはない。そんな理由で卒業式にいらっしゃらなかった、ガレオお父様とナディアお母様。そんなお二人は顎が外れそうなほどに大口を開け、私を見つめていました。
 なぜなら娘が侯爵家の次期当主様と共に戻ってきて、

「お父様お母様、およそ19年間お世話になりました。この瞬間を持ちまして、ネズレントの籍を返上いたします」

 関係を絶つと、口にしたのですから。

「………………アンジェリーヌ。な、なにを言っているんだ……?」
「籍を返上……。なにを言っているの……?」
「言葉の通りです。私はネズレント家を抜けます」
「そしてそれと同時に、ジスラン・ニエダスク卿の養女と――伯爵家の養女となりまして、もう一つ。更にそのあとこの男と結婚し、アンジェリーナ・エズラルになっていただく予定となっております」

 隣にいてくださる、フレデリク様。ずっと水面下で用意してくださっていた策を明かし、それらに必要な書類をテーブルに置きました。
 平民となった状態で嫁ぐと、そこに至った理由がどうであれ、特に社交界では様々な問題が生まれてしまいます。そこでフレデリク様はそちらの対策として、父親当主様の旧友であるジスラン様に、お話を持ち掛けてくださっていたのです。

「長年に渡る酷く理不尽な待遇、副会長に任命されるなど素晴らしい人間性。ニエダスク卿は快諾してくださり、とうの昔に話が付いていたのですよ」
「な……っ。どうして貴方様が、そのようなことを……」
「アンジェリーヌっ! 貴方っ、助けてもらおうと告げ口を――」
「助けてもらおうとして告げ口した、のではありませんよ。かつて僕が惹かれて想いを告げ、そちらが切っ掛けとなって認識をしたのですよ」

 あの頃の私は長年の疲弊によって、抵抗を諦めていました。ですので私も想いを抱いていたのですが、『ニネットや両親に邪魔をされてしまうから』と事情を御説明し、お断りをしようとしていました。
 そうしたら、

『……諦めていらっしゃったから、「傷」が外に一切出ていなかったのですね……。…………アンジェリーヌ様、よく頑張りましたね。もう大丈夫です。貴方は貴方の好きなように、生きてゆけるようになりますよ』

 フレデリク様が親身になってくださって、それによって希望を取り戻すことができたのです。
 私は心も体も、この方に救われていたのです。

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