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第10話 報告 アンジェリーヌ視点(2)
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「ですので以前、恋人と勘違いをしていた男エドモンが激怒したそうですが――。僕はそれ以上に、貴方がたに怒りを覚えているのですよ」
いつも穏やかなお顔をされている、美男であり麗人然としたフレデリク様。そんな方の瞳が細まり、つららのような視線へと変貌しました。
「心身を理不尽に傷付けた者達。ガレオ、ナディア、ニネット。この手で、お前達に後悔をさせてやりたいと――。そう、強く思っているのですよ」
「「………………」」
「ですがそんなことをしても、アンジェリーヌ様は喜びません。自責の念が生まれてしまうだけです」
それは私の為に行ってくださる、正義の行動です。ですが事情がどうであれ、フレデリク様が手を下すと、この方の手が汚れてしまうことになります。
それが何より申し訳なく、つらくて。フレデリク様はそんな気持ちを汲んでくださっています。
「「……よ、よかった……。し……。死なずに済んだ――」」
「それに」
安堵を浮かべ、ソファーの背にもたれたお父様とお母様。そんな二人の『安心』は、すぐに砕かれることになります。
「「…………。そ、それに……?」」
「それに僕が手を出さなくても、しっかりと『返ってくる』ことになりますからね。ご報告も済んだことですし、アンジェリーヌ様。参りましょうか」
侍女達もお父様とお母様の味方で、このお屋敷から持ってゆくものはありません。そのため私は差し出された手を取って立ち上がり、
「まっ、待ってくれ! 待ってください!!」
退室しようとしていると、お父様が目を見開かれました。
「返ってくる!? 一体何が返ってくるのでございますか!?」
「お教えください!! 何も知らないなんて、恐ろしい……。生きた心地がしません……。どうかご慈悲を……!!」
「……いつ大切なものを奪われるか分からない。いつ傷つけられるか分からない。そんな環境を作ってきた貴方がたには、ぴったりの状況でしょう」
極寒のように感じる冷たい声と、更に鋭利になった視線。それらによって、縋ろうとしていた二人の動きが止まりました。
「今度は、自分達3人の番ですよ。何が起きるのか、お楽しみに」
そうして最後のやり取りが終わり、今度こそ私達は退室します。
「まっ、待ってくれアンジェリーヌっ! 戻ってきてくれっ!!」
「これまでのことは全て謝罪して、しっかり償うからっ! これからは仲良く一緒に暮らしましょっ!!」
その際にも背中へと沢山の声が飛んできますが、振り返ることはありません。振り返るはずが、ありません。
こうして私はついに、幸せな決別を行ったのでした。
「永遠にさようなら。ガレオ様、ナディア様」
いつも穏やかなお顔をされている、美男であり麗人然としたフレデリク様。そんな方の瞳が細まり、つららのような視線へと変貌しました。
「心身を理不尽に傷付けた者達。ガレオ、ナディア、ニネット。この手で、お前達に後悔をさせてやりたいと――。そう、強く思っているのですよ」
「「………………」」
「ですがそんなことをしても、アンジェリーヌ様は喜びません。自責の念が生まれてしまうだけです」
それは私の為に行ってくださる、正義の行動です。ですが事情がどうであれ、フレデリク様が手を下すと、この方の手が汚れてしまうことになります。
それが何より申し訳なく、つらくて。フレデリク様はそんな気持ちを汲んでくださっています。
「「……よ、よかった……。し……。死なずに済んだ――」」
「それに」
安堵を浮かべ、ソファーの背にもたれたお父様とお母様。そんな二人の『安心』は、すぐに砕かれることになります。
「「…………。そ、それに……?」」
「それに僕が手を出さなくても、しっかりと『返ってくる』ことになりますからね。ご報告も済んだことですし、アンジェリーヌ様。参りましょうか」
侍女達もお父様とお母様の味方で、このお屋敷から持ってゆくものはありません。そのため私は差し出された手を取って立ち上がり、
「まっ、待ってくれ! 待ってください!!」
退室しようとしていると、お父様が目を見開かれました。
「返ってくる!? 一体何が返ってくるのでございますか!?」
「お教えください!! 何も知らないなんて、恐ろしい……。生きた心地がしません……。どうかご慈悲を……!!」
「……いつ大切なものを奪われるか分からない。いつ傷つけられるか分からない。そんな環境を作ってきた貴方がたには、ぴったりの状況でしょう」
極寒のように感じる冷たい声と、更に鋭利になった視線。それらによって、縋ろうとしていた二人の動きが止まりました。
「今度は、自分達3人の番ですよ。何が起きるのか、お楽しみに」
そうして最後のやり取りが終わり、今度こそ私達は退室します。
「まっ、待ってくれアンジェリーヌっ! 戻ってきてくれっ!!」
「これまでのことは全て謝罪して、しっかり償うからっ! これからは仲良く一緒に暮らしましょっ!!」
その際にも背中へと沢山の声が飛んできますが、振り返ることはありません。振り返るはずが、ありません。
こうして私はついに、幸せな決別を行ったのでした。
「永遠にさようなら。ガレオ様、ナディア様」
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