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第6話 ウィリアム編4日目 大公との食事会が、始まる? 俯瞰視点(2)
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「閣下? どう、されたのですか?」
「…………………………。ウィリアム君」
「は、はい。なんでございましょう?」
「……………………………………。君はなぜ、笑っている? ニヤニヤとしているのだ?」
無表情となっていたギーズの顔は、もう一度変化。静かな怒りを孕んだものへと、変わりました。
「わたしが目の前で転び、顔面を打ったというのに……。どういう了見なのだ……?」
「し、失礼ですが、閣下は何をおっしゃっているのですか……? わたくしは、笑ってなどおりま――なっ!?」
戸惑いながら自分の顔に触れ、ウィリアムはようやく気付きます。いつの間にか、小さな笑みを――それも、小馬鹿にしたような笑みを浮かべていると。
「驚いたフリをしても、無駄だぞ。……わたしが転ぶ姿、あるいは、悲鳴。それが、愉快だったのだろう?」
「だっ、断じて違いますっ!! そんな思い考えは微塵もございませんっ!! あるのはただ、心配であり不安でございます!!」
「したらば何故(なぜ)、あのように笑った? 今なお、笑っているのだ?」
「じっ、自分自身にも皆目見当がつきませんっ!! いつの間にかっ、勝手にそうなってしまっており、今もっ! 今も意識とは裏腹になってしまっており、戻そうとしても戻らないのですっ!!」
この言い分は、全て事実。
傍目には自然な失笑に映りますが、実際は意思とは無関係で作られているもの。顔中の筋肉が独りでに動いてしまっていて、ウィリアムの思い通りに動いてくれないのです。
「もしかすると、一昨日の頭痛が関係しているのかもしれませんっ!! わたくしは心の底より、閣下の御身を案じております!! 他者の不幸を嗤うなど、言語道断! 人としてあるまじき所業ですので!!」
「…………………………ふむ、成程。その顔は、無意識。君としてはすぐにでも止めたいが、止められない。という事なのだな?」
「さようでございます!! 閣下っ、これかでわたくしが嘘をついた事はございますかっっ!? ギーズ閣下はわたくしにとって、もう一人の父親のような御方!! 家族と思わせていただいております!!」
この状況下で信じてもらうには、言葉しかない。そのためウィリアムは怒涛の勢いで舌を動かし、目を見開く必死の形相で更に続けます。
「そんな存在っ、かけがえのない存在をっ! 嗤うなんてありえませんっ!! これらは全てが真実でございますっ!! ギーズ閣下、どうか信じてください!!」
「…………………………ウィリアムよ。それは無理な話だ」
「かっ、閣下っ!? なっ、なぜなのですっ!? この表情は意思と関係ないものなのにっっつ!! 戻したくても戻らないのにっっ!! なぜっ、信じてくださらないのですかっっっ!?」
「……………………いいだろう。その理由を、しかと教えやる」
ゆらりと立ち上がったギーズは従者の男性を呼び、その彼から手鏡を受け取りウィリアムへと向けます。するとそこには――
「な……。な……!?」
――『目を見開く必死の形相』になっていた、ウィリアム。そして、それを見て『周章狼狽してしまっている顔』へと変化したウィリアムが映っていたのでした。
「…………………………。ウィリアム君」
「は、はい。なんでございましょう?」
「……………………………………。君はなぜ、笑っている? ニヤニヤとしているのだ?」
無表情となっていたギーズの顔は、もう一度変化。静かな怒りを孕んだものへと、変わりました。
「わたしが目の前で転び、顔面を打ったというのに……。どういう了見なのだ……?」
「し、失礼ですが、閣下は何をおっしゃっているのですか……? わたくしは、笑ってなどおりま――なっ!?」
戸惑いながら自分の顔に触れ、ウィリアムはようやく気付きます。いつの間にか、小さな笑みを――それも、小馬鹿にしたような笑みを浮かべていると。
「驚いたフリをしても、無駄だぞ。……わたしが転ぶ姿、あるいは、悲鳴。それが、愉快だったのだろう?」
「だっ、断じて違いますっ!! そんな思い考えは微塵もございませんっ!! あるのはただ、心配であり不安でございます!!」
「したらば何故(なぜ)、あのように笑った? 今なお、笑っているのだ?」
「じっ、自分自身にも皆目見当がつきませんっ!! いつの間にかっ、勝手にそうなってしまっており、今もっ! 今も意識とは裏腹になってしまっており、戻そうとしても戻らないのですっ!!」
この言い分は、全て事実。
傍目には自然な失笑に映りますが、実際は意思とは無関係で作られているもの。顔中の筋肉が独りでに動いてしまっていて、ウィリアムの思い通りに動いてくれないのです。
「もしかすると、一昨日の頭痛が関係しているのかもしれませんっ!! わたくしは心の底より、閣下の御身を案じております!! 他者の不幸を嗤うなど、言語道断! 人としてあるまじき所業ですので!!」
「…………………………ふむ、成程。その顔は、無意識。君としてはすぐにでも止めたいが、止められない。という事なのだな?」
「さようでございます!! 閣下っ、これかでわたくしが嘘をついた事はございますかっっ!? ギーズ閣下はわたくしにとって、もう一人の父親のような御方!! 家族と思わせていただいております!!」
この状況下で信じてもらうには、言葉しかない。そのためウィリアムは怒涛の勢いで舌を動かし、目を見開く必死の形相で更に続けます。
「そんな存在っ、かけがえのない存在をっ! 嗤うなんてありえませんっ!! これらは全てが真実でございますっ!! ギーズ閣下、どうか信じてください!!」
「…………………………ウィリアムよ。それは無理な話だ」
「かっ、閣下っ!? なっ、なぜなのですっ!? この表情は意思と関係ないものなのにっっつ!! 戻したくても戻らないのにっっ!! なぜっ、信じてくださらないのですかっっっ!?」
「……………………いいだろう。その理由を、しかと教えやる」
ゆらりと立ち上がったギーズは従者の男性を呼び、その彼から手鏡を受け取りウィリアムへと向けます。するとそこには――
「な……。な……!?」
――『目を見開く必死の形相』になっていた、ウィリアム。そして、それを見て『周章狼狽してしまっている顔』へと変化したウィリアムが映っていたのでした。
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