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第8話 今夜は最高の夜に―― カミラ視点(2)

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 ――キャロライン・サンオーレアは、忌々しい怨敵――。
 ――絶対に許せない、世界で一番憎たらしい女――。

 だからわたくしは、遠慮を一切しない。徹底的に、キャロラインのメンタルへ攻撃を仕掛けた。

「カミラ。どうぞ」
「ありがとうございます。では……。ウィリアム様、こちらをどうぞ」

 この国では婚約発表の際に婚約リングを贈り合うようになっているから、まずは愛の象徴の『嵌め合い』を――幸せに満ちた共同作業を、たっぷりと見せつける。そして、


「彼女カミラは、俺にとっての満月。この世のなによりも美しい女性です」

「ええ、彼女と巡り合えたことに感謝していますよ。間違いなく我が人生で、この出来事を上回る奇跡は起こらないでしょう」


 自慢の話術で巧みに話題を操り、たっぷりとわたくしを褒めていただけるようにしたり。


「はい。ウィリアム様は、本当にお優しい方ですわ。この間もわたくしの好物を覚えてくださっていて、自らお選びになられた蝶のブローチをいただきましたの」

「え? わたくしが最近、ますます綺麗になった? ……ぁ、ありがとうございます。それはきっと、ウィリアム様のおかげですわ」

「『美しい』『綺麗だ』『素晴らしい』。ウィリアム様がいつもそんな風に仰ってくださりますので、どんどん自分に自信を持てるようになった影響だと思います」


 ウィリアム様と二人きりで過ごした時に起きた出来事を、うっとりとしつつ語ったり。
 キャロラインが羨ましがったり悲しがったりすることを、たっっっぷりと行った。

 ――もしわたくしがあの女の立場なら、血の涙を流してハンカチを噛み、頭を抱えて号泣してしまうものを、思う存分見せつけた――。

 だから。スピーチが終わるとキャロラインはその場に崩れ落ち、周囲に大勢の人間がいるにもかかわらずワンワン泣き出した。

 …………と、なるはずだった…………。

 なのに……。なのに……!!
 どう、なってますの…………!?
 現実は、まるで違っていて――

「おめでとうございますっ! ウィリアム様、カミラ様、おめでとうございますっ!」

 現実は、まるで違っていて――。
 わたくし達のスピーチを聞き終えたキャロラインは、顔を綻ばせながら拍手を繰り返していた…………。

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