初恋の人を思い出して辛いから、俺の前で声を出すなと言われました

柚木ゆず

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第3話 気が置けない友 エタン視点(3)

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「ほら、歴史のある建物には霊がつくって言うだろ? それじゃないのか? その霊が、何らかの理由でこの部屋を訪ねて来てるんだよ」
「そ、そんな話は、聞いたことがあるな……」

 長く存在していると様々な『念』が溜まっていって、ソレに引き寄せられて霊がどこからともなくやって来る――。屋敷で暮らしている時に、なにかの本で読んだ覚えがある。
 あれはオカルトだと笑っていたが……。男の声と女の声が聞こえてきているんだ。事実、だった可能性が高い……。

「だ、だとしたら……。どうすればいいんだ……?」
「オ、オレも分からないけど……。と、とりあえずアレだ。前に君が言っていたことをやってみたらいいんじゃないか?」

 誰が言い出したのかは、分からない。昔からウチの領地には『ソルトを撒けば霊は消える』という言い伝えがあって、領民だけではなく父上達も行うことがある。

「そ、そうだな。やってみよう」

 食堂に行けばソルトが手に入る。俺達は大急ぎで部屋を出てソルトを調達し、部屋に戻ると急いで出入口周辺に振りかけた。

「よし、これで大丈夫のはずだ」
「いや、念のため室内にも撒いておこう。こっちが駄目ならって、別の場所に現れる可能性があるからな」
「な、なるほど。そうだな、撒いておこう」

 さすがヴァードンだ。確実に処理するべく、助言に従い全ての部屋に撒いたのだった。

「今度こそ、大丈夫のはずだ。大丈夫、だよな……?」
「大丈夫になっていたら、声はしなくなるはずだ。待ってみよう」

 さっきのようにソファーに戻り、しばらく耳を澄ませてみる。

「…………………………大丈夫、みたいだな」

 何度も聞こえていたヴァードンが、30分経っても新たな声を聞かなかった。そう思っていいだろう。

「よかった。おめでとう、エタン」
「ありがとうヴァードン。君のアドバイスのおかげだよ」
「親友のお役に立てて何よりだ。じゃあそろそろ失礼するよ」

 謎の声騒動のせいで、当初の予定を1時間近くオーバーしてしまった。まだまだ自慢したかったが彼はこのあと予定があるため見送り、

「……はあ、疲れたな。今日は早めに寝よう」

 安心したせいか心身にどっと疲れが出てしまい、さっさと夕食と入浴を済ませ、その日は普段よりも早い午後10時半過ぎにベッドに入ったのだった。
 そうして俺は、予想外に慌ただしくなった休日にピリオドを打ち――

 〇〇

「なっ、なんだ!?」

 それからおよそ6時間半後の、午前5時過ぎ。俺はベッドから飛び起きる羽目になるのだった。
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