初恋の人を思い出して辛いから、俺の前で声を出すなと言われました

柚木ゆず

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第5話 真相 俯瞰視点

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「父上、ただいま戻りました」

 今から1か月前のこと。エタンの親友であるザサレフォ伯爵家の嫡男ヴァードンは、父ダックスの要望によりお屋敷に戻っていました。

「わざわざすまんな。急遽呼び出したのは、お前に頼みがあるからなんだよ」
「父上が頼みだなんて、珍しいですね。なんなのでしょうか?」
「……実はだな……。およそ、1か月後になるだろう。ウチの鳥を使って学院に運ぶものを密かに受け取り、エタン・レロッズの自室に隠して欲しいのだよ」

 ダックスは罪悪感と怒りが宿った瞳を、息子へと向けました。

「エタンの……!? り、理由を教えてください!」
「……お前も覚えているだろう? レーオットの一件を」
「も、もちろんです。忘れるはずがありません」

 ヴァードンが幼い頃から可愛がってもらっている、ダックスの旧友レーオット。彼は商会を所有するほどのお金持ちでしたが、計3つの不正が発覚して去年逮捕されてしまったのでした。

「わたしもお前も、冤罪だと確信していただろう?」
「ええ。レーオットおじさんが、道理に反する真似に手を染めるとは思いません」
「そうだとも、あやつは何もしておらん。……あの一件は、レロッズ家当主が仕組んだものだったのだよ」

 商会を持つレロッズ家当主にとって、レーオットは目の上のたんこぶのような存在。更なる利益を求めて長年邪魔者を排除しようと企んでおり、去年ついに実行されていたのです。

「継続していた調査が、ようやく実を結んだ。レロッズ家当主の関与を掴めたのだよ」
「そう、でしたか。ただ、レロッズ家が静かだということは……」
「その通りだ。証明ができんのだよ」

 黒幕だという痕跡はあるものの、裁判で勝てるような材料はありませんでした。

「……どうやっても、法に則って犯人を裁けんと痛感した……。だからそうできるように……別の罪を、捏造することにしたのだよ」

 幸いにも、レロッズ家の内部にも当主の捏造を快く思わない者がいました。その存在に気付き接触に成功したことによって、可能となっていました。

「そのためには、わたしが作る証拠をレロッズ家の関係者――それも当主に非常に近しい存在が持っていないといけないのだが、そういった場所への侵入はできん。そこで、学院にいる息子を――こういったことをしていた息子を、狙うのだ」
「!! ……なるほど……」
「レーオットの無実は、なにをやっても晴らせん。こうしたからといって、レーオットの名誉が回復するわけではないが………………こうでもせねば、浮かばれんのだよ。すまないが、協力して欲しい」
「お任せください。その役目、喜んで引き受けますよ」

 ヴァードンにとってレーオットは家族同然で、ずっと犯人に罰を与えたいと思っていました。そのため父同様、本来は法から外れた行動は取らないのですが――

『やあエタン。お邪魔するよ』

『…………今さ……。扉の方から――廊下から、君を呼ぶ声が聞こえなかったかい?』

『………………もしかすると、幽霊の類、だったのか……?』

 ――あの夜証拠を受け取った彼は親友という立ち位置を利用してエタンの部屋に入り込み、幽霊騒ぎを演出してソルトでの除霊を提案。怯えながらソルトを撒くエタンに同行して歩き回ってお誂えな場所を見つけ、必死になって撒いている隙にエタンが――


 父上はライバルの蹴落としなど表ざたにはできないことをしてはいるが、その際には逐一家族に打ち明けてくれる。一度も報告がない以上、密輸入はありえない。


 内通者から『父上、良いアイディアですね!』『ここはこうした方が確実ではありませんか?』と同意どころか助言までしていたことを伝えられており、すっかり敵となっていたエタンが朝まで気が付かないところに、設置していたのでした


 〇〇


 その結果、エタンは――
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