15 / 22
第7話 ミーア姉さん エタン視点(1)
しおりを挟む
「ぅぅぅ……。うぇぇぇぇぇん……!」
幼い頃の俺は、泣き虫だった。
転んだり、怒られたり、失敗したり。そういったことがあると、すぐに泣きだしてしまう子どもだった。
「ぅぇぇぇぇぇん……!」
一度始まるとなかなか泣き止まず、いつまでもべそをかいていた。
だが――。
そんな俺の涙を、ピタッと止めることができる人がいた。
「エタン、大丈夫。お姉ちゃんが来たからにはもう安心よ」
よく屋敷に遊びにきてくれる、父上の古い友人の子ども――伯爵令嬢のミーア姉さん。姉さんにそっと抱き締められると、姉さんの顔を見ると、姉さんの声を聞くと、不思議と悲しみが薄くなっていってやがては完全に消滅してしまうのだ。
「もう泣き止んじゃった。うふふ。エタンは強い子ね」
「お姉ちゃんが来てくれたからだよっ。お姉ちゃん、大好きっ」
だから、そうなるのは必然的だったのだ。父や母――家族よりも好きな存在となり、同じくソコも必然的。年齢を重ねるにつれて『LIKE』は『LOVE』へと変化していって、異性として恋をするのだった。
((姉さん。姉さん……! 姉さん……!!))
気がつけばいつもミーア姉さんのことを考えていた。
今どこにいるんだろう?
今何しているんだろう?
今何を考えているんだろう?
今どんな表情をしているんだろう?
頭の中はミーア姉さんで一杯で、愛する想いは時間に比例して増えていったのだった。
((絶対に姉さんと結婚するんだ……!!))
誰よりも美しく、誰よりも優しい、俺の天使。忘れもしない6月12日の午後4時41分、俺は夫婦になると茜色の空に誓った。
でも――。
その夢は、ある日突然崩壊するのだった。
「姉さんが婚約!?」
「結婚!? 外国に嫁いでしまう!?」
まるで、止まらなくなってしまったドミノのようだった。次々と俺を不幸が遅い、あっという間にミーア姉さんは俺のもとを去ってしまったのだった。
「そ、そんな……。う、うあああああああああああああああああ!!」
絶望のどん底に突き落とされた。
もう、なにもしたくなくなった。
やる気がなくなった。
抜け殻のようになった。
もう、死にたくなった。
「…………姉さんがと一緒に居られない世界になんて、いたくない……。飛び降りよう……」
そう決意をするも――姉さんは俺の元気な姿を『大好き』だと言ってくれていて、死んでしまったら悲しませてしまうと気付いた。だから力を振り絞って前を向くようにして、どうにか心の平穏を取り戻すことができたのだった。
なのに――。そんな俺を、更なる悲劇が襲う。
「お初にお目にかかります。シャルリーとお申します」
どこまで俺を苦しめれば気が済むのだろう。婚約者として目の前に現れた女は、姉さんとまったく同じ声をしていたのだった。
幼い頃の俺は、泣き虫だった。
転んだり、怒られたり、失敗したり。そういったことがあると、すぐに泣きだしてしまう子どもだった。
「ぅぇぇぇぇぇん……!」
一度始まるとなかなか泣き止まず、いつまでもべそをかいていた。
だが――。
そんな俺の涙を、ピタッと止めることができる人がいた。
「エタン、大丈夫。お姉ちゃんが来たからにはもう安心よ」
よく屋敷に遊びにきてくれる、父上の古い友人の子ども――伯爵令嬢のミーア姉さん。姉さんにそっと抱き締められると、姉さんの顔を見ると、姉さんの声を聞くと、不思議と悲しみが薄くなっていってやがては完全に消滅してしまうのだ。
「もう泣き止んじゃった。うふふ。エタンは強い子ね」
「お姉ちゃんが来てくれたからだよっ。お姉ちゃん、大好きっ」
だから、そうなるのは必然的だったのだ。父や母――家族よりも好きな存在となり、同じくソコも必然的。年齢を重ねるにつれて『LIKE』は『LOVE』へと変化していって、異性として恋をするのだった。
((姉さん。姉さん……! 姉さん……!!))
気がつけばいつもミーア姉さんのことを考えていた。
今どこにいるんだろう?
今何しているんだろう?
今何を考えているんだろう?
今どんな表情をしているんだろう?
頭の中はミーア姉さんで一杯で、愛する想いは時間に比例して増えていったのだった。
((絶対に姉さんと結婚するんだ……!!))
誰よりも美しく、誰よりも優しい、俺の天使。忘れもしない6月12日の午後4時41分、俺は夫婦になると茜色の空に誓った。
でも――。
その夢は、ある日突然崩壊するのだった。
「姉さんが婚約!?」
「結婚!? 外国に嫁いでしまう!?」
まるで、止まらなくなってしまったドミノのようだった。次々と俺を不幸が遅い、あっという間にミーア姉さんは俺のもとを去ってしまったのだった。
「そ、そんな……。う、うあああああああああああああああああ!!」
絶望のどん底に突き落とされた。
もう、なにもしたくなくなった。
やる気がなくなった。
抜け殻のようになった。
もう、死にたくなった。
「…………姉さんがと一緒に居られない世界になんて、いたくない……。飛び降りよう……」
そう決意をするも――姉さんは俺の元気な姿を『大好き』だと言ってくれていて、死んでしまったら悲しませてしまうと気付いた。だから力を振り絞って前を向くようにして、どうにか心の平穏を取り戻すことができたのだった。
なのに――。そんな俺を、更なる悲劇が襲う。
「お初にお目にかかります。シャルリーとお申します」
どこまで俺を苦しめれば気が済むのだろう。婚約者として目の前に現れた女は、姉さんとまったく同じ声をしていたのだった。
183
あなたにおすすめの小説
冷遇夫がお探しの私は、隣にいます
終日ひもの干す紐
恋愛
愛人がいるなら、さっさと言ってくれればいいのに!
妻に駆け落ちされた、傷心の辺境伯ロシェのもとへ嫁いでほしい。
シャノンが王命を受け、嫁いでから一年……とんでもない場面に立ち会ってしまう。
「サフィール……またそんなふうに僕を見つめて、かわいいね」
シャノンには冷たいの夫の、甘ったるい囁き。
扉の向こうの、不貞行為。
これまでの我慢も苦労も全て無駄になり、沸々と湧き上がる怒りを、ロシェの愛猫『アンブル』に愚痴った。
まさかそれが、こんなことになるなんて!
目が覚めると『アンブル』になっていたシャノン。
猫の姿に向けられる夫からの愛情。
夫ロシェの“本当の姿”を垣間見たシャノンは……?
* * *
他のサイトにも投稿しています。
花嫁に「君を愛することはできない」と伝えた結果
藍田ひびき
恋愛
「アンジェリカ、君を愛することはできない」
結婚式の後、侯爵家の騎士のレナード・フォーブズは妻へそう告げた。彼は主君の娘、キャロライン・リンスコット侯爵令嬢を愛していたのだ。
アンジェリカの言葉には耳を貸さず、キャロラインへの『真実の愛』を貫こうとするレナードだったが――。
※ 他サイトにも投稿しています。
俺はお前ではなく、彼女を一生涯愛し護り続けると決めたんだ! そう仰られた元婚約者様へ。貴方が愛する人が、夜会で大問題を起こしたようですよ?
柚木ゆず
恋愛
※9月20日、本編完結いたしました。明日21日より番外編として、ジェラール親子とマリエット親子の、最後のざまぁに関するお話を投稿させていただきます。
お前の家ティレア家は、財の力で爵位を得た新興貴族だ! そんな歴史も品もない家に生まれた女が、名家に生まれた俺に相応しいはずがない! 俺はどうして気付かなかったんだ――。
婚約中に心変わりをされたクレランズ伯爵家のジェラール様は、沢山の暴言を口にしたあと、一方的に婚約の解消を宣言しました。
そうしてジェラール様はわたしのもとを去り、曰く『お前と違って貴族然とした女性』であり『気品溢れる女性』な方と新たに婚約を結ばれたのですが――
ジェラール様。貴方の婚約者であるマリエット様が、侯爵家主催の夜会で大問題を起こしてしまったみたいですよ?
格上の言うことには、従わなければならないのですか? でしたら、わたしの言うことに従っていただきましょう
柚木ゆず
恋愛
「アルマ・レンザ―、光栄に思え。次期侯爵様は、お前をいたく気に入っているんだ。大人しく僕のものになれ。いいな?」
最初は柔らかな物腰で交際を提案されていた、リエズン侯爵家の嫡男・バチスタ様。ですがご自身の思い通りにならないと分かるや、その態度は一変しました。
……そうなのですね。格下は格上の命令に従わないといけない、そんなルールがあると仰るのですね。
分かりました。
ではそのルールに則り、わたしの命令に従っていただきましょう。
旦那様から彼女が身籠る間の妻でいて欲しいと言われたのでそうします。
クロユキ
恋愛
「君には悪いけど、彼女が身籠る間の妻でいて欲しい」
平民育ちのセリーヌは母親と二人で住んでいた。
セリーヌは、毎日花売りをしていた…そんなセリーヌの前に毎日花を買う一人の貴族の男性がセリーヌに求婚した。
結婚後の初夜には夫は部屋には来なかった…屋敷内に夫はいるがセリーヌは会えないまま数日が経っていた。
夫から呼び出されたセリーヌは式を上げて久しぶりに夫の顔を見たが隣には知らない女性が一緒にいた。
セリーヌは、この時初めて夫から聞かされた。
夫には愛人がいた。
愛人が身籠ればセリーヌは離婚を言い渡される…
誤字脱字があります。更新が不定期ですが読んで貰えましたら嬉しいです。
よろしくお願いします。
「君の回復魔法は痛い」と追放されたので、国を浄化するのをやめました
希羽
恋愛
「君の回復魔法は痛いから」と婚約破棄され、国外追放された聖女エレナ。しかし彼女の魔法は、呪いを根こそぎ消滅させる最強の聖なる焼却だった。国を見限って辺境で薬草カフェを開くと、その技術に惚れ込んだ伝説の竜王やフェンリルが常連になり、悠々自適なスローライフが始まる。
一方、エレナを追放した王国はパニックに陥っていた。新しく迎えた聖女の魔法は、ただ痛みを麻痺させるだけの「痛み止め」に過ぎず、国中に蔓延する呪いを防ぐことができなかったのだ。
原因不明の奇病、腐り落ちる騎士の腕、そして復活する魔王の封印。
「頼む、戻ってきてくれ!」と泣きつかれても、もう遅い。
私の店は世界最強の竜王様が警備しているので、王家の使いだろうと門前払いです。
※本作は「小説家になろう」でも投稿しています。
貴方が要らないと言ったのです
藍田ひびき
恋愛
「アイリス、お前はもう必要ない」
ケヴィン・サージェント伯爵から一方的に離縁を告げられたアイリス。
彼女の実家の資金援助を目当てにした結婚だったため、財政が立て直された今では結婚を続ける意味がなくなったとケヴィンは語る。
屈辱に怒りを覚えながらも、アイリスは離縁に同意した。
しかしアイリスが去った後、伯爵家は次々と困難に見舞われていく――。
※ 他サイトにも投稿しています。
エメラインの結婚紋
サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢エメラインと侯爵ブッチャーの婚儀にて結婚紋が光った。この国では結婚をすると重婚などを防ぐために結婚紋が刻まれるのだ。それが婚儀で光るということは重婚の証だと人々は騒ぐ。ブッチャーに夫は誰だと問われたエメラインは「夫は三十分後に来る」と言う。さら問い詰められて結婚の経緯を語るエメラインだったが、手を上げられそうになる。その時、駆けつけたのは一団を率いたこの国の第一王子ライオネスだった――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる