初恋の人を思い出して辛いから、俺の前で声を出すなと言われました

柚木ゆず

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第7話 ミーア姉さん エタン視点(2)

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「偽者なんて要らない……! 姉さん……。本物の姉さんにまた会いたいよ……」

 姉さんがいなくなって落ち込み、どうにか立ち直ったらまた俺を苦しめる不幸が押し寄せてくる。
 あまりにも理不尽な仕打ちを受け、気が付くと俺は自室で涙を流しながら独り言を口にしていた。

「結婚したいなんて、もう言わない……。そんな贅沢は言わないさ……。せめて、会って話をさせてほしいんだ……!」

『エタン、大丈夫。お姉ちゃんが来たからにはもう安心よ』

『もう泣き止んじゃった。うふふ。エタンは強い子ね』

 あの頃のようにそっと抱き締めて欲しい。あの頃のように優しく笑いかけて欲しい。あの頃のように耳を幸せにして欲しい。
 その日からたまらず、そう願うようになった。

「……神様、お願いします。俺の、ささやかな願いを叶えてください……!」

 血が出てしまうほどに両手を握り締め、夜のとばりが下りた空へと願う。

 ――ミーア姉さんに会いたい――。

 今自分で言ったように、このお願いはささやかなもの。微笑ましいものだった。
 なので神様はきっと、簡単に叶えてくれると思っていたのに――

「冤罪だ!! 俺も父上も冤罪だ!! 真犯人がいる!! 俺達は陥れられようとしているんだっ! だっ、だれかぁああ!! だれかぁ――むご!?」

 俺を待っていたのは、更なる絶望。まったく身に覚えがない罪で拘束され、なんとそのまま懲役10年という罰を受ける羽目になったのだ。

「……どうなってるんだよ……! 辛いっ、滅茶苦茶だ…… ねっ、姉さん助けてくれぇえええええ!!」

 地獄のような場所に落ちてしまっているから、地獄から引っ張りあげてくれないかとお願いをした。声がまた枯れてしまうまで、その日は叫び続けた。
 しかしながら結果は引き続き変わってくれず、なんと結局10年間服役してしまったのだ。

「…………姉さん、会いたいよ……。会いに、来て欲しいよ……。もうね…………顔だけでも、声だけでも、いい……。頼む……今度こそ、願いを叶えてくれ……!」

 10年も服役した人間は特にこの国では就職先が見つからなくて、すっかり家亡なき者の仲間となってしまった。まともな職場で働くことさえもできず、貴族として生まれたはずの俺が残飯を漁る生活を送らざるをえなくなってしまったのだった。

「……姉さん、俺は挫けないよ……! 姉さんと再会して、人生をもう一度一変させるんだ……! 絶対に……!!」

 こんな状況下でも俺は気丈に振る舞い、そんな心持ちと言動が報われたのだろう。不意に、あまりにも予想外な出来事が発生するのだった。


「!! この声は、姉さん!?」


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