上 下
18 / 38

第9話 2つの真実と、予期せぬ言葉 アリス視点

しおりを挟む
「まず『縁が一切ない他人がなぜ、あそこまで詳しく知っていたのか?』。その理由は、エルナ・リーエンデルア様――君のお母上にあるみたいだね」

 オーレリアン様による説明が始まってから、わずか6秒後のことでした。おもわずわたしは、驚きの声をあげてしまいます。
 原因は、お母様……。

「僕が現れてから彼女とアルチュールは、何度も密かに視線を交わしていた。それに彼を何度も『王子様』と呼ぶなど、そちらが本物だと思うよう振る舞っていたからね。お母上が彼の味方、内通者なのだとすぐ分かったよ」
「……お父様とお母様には、あの日の出来事を細かく話しました。ですので情報があって、ですが……。お母様とアルチュール様は、一切接点がありません。どうやってお二人は結びついたのでしょう……?」
「利害の一致、なんだろうね。あの様子だと、お母上は『地位』が目的。筆頭公爵家とのパイプ、これが目当てで情報を流したんだと思う」

『駄目に決まっているでしょう! いいっ? 貴方は伯爵家の娘なのよ! そんないかにも怪しい人ではなくって、ちゃんとした地位を持った方と――』

 そちらを聞いて、自然と10年前の大声を思い出しました。

「そしてアルチュールの狙いは、恐らくアリスの頭脳だ。……1日空いたから少し調べて見たのだけど、ちょっと動いただけで君の名声がすぐに聞こえてきた。あちらは優秀なブレインを、自らの商会に取り込もうとしていたのだろうね」

 誰にも迷惑をかけることなく王子様と結婚できるよう、あらゆる場所で一目を置かれる存在を目指しました。我武者羅に走り続けて、そういった評判を得ることができました。
 あの御方はわたしではなく、わたしの頭が狙い……。

「あの様子だと『見た目』にも興味があったようだけど、一番の理由はソレ。とてもシンプルで、とても恐ろしいこと。人は富や地位を得れば得るほど新たなものが欲しくなる、際限ない欲深い化け物だからね。彼は現状に満足できないようになっていて、更なる『上』を目指そうとしたんだよ」
「……そう、だったのですね。だからお母様に接触して、協力関係が出来上がった……」
「そう、なるね。そのため必死になって王子様に成りすまし、金に物を言わせて証拠を捏造しようとした。けれどそれは、失敗に終わる。なぜならば――」

 呆れと息を吐かれ、ご自身の体を一瞥されたオーレリアン様。そんなお姿を見つめていたわたしは、再度、おもわず驚きの声をあげてしまったのでした。

「なぜならば本物は、公爵の力が通用しない相手だったのだから。人ではなく、精霊の王だったのだからね」
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

好きになって貰う努力、やめました。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:5,475pt お気に入り:2,187

桜のように散りゆく君へ

ライト文芸 / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:1

毒花令嬢の逆襲 ~良い子のふりはもうやめました~

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:96,737pt お気に入り:3,164

目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです

恋愛 / 完結 24h.ポイント:16,930pt お気に入り:3,114

最初に私を蔑ろにしたのは殿下の方でしょう?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:19,766pt お気に入り:1,963

処理中です...