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第16話 作戦崩壊 アルチュール視点(1)

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「俺の奥の手が、やられた……!? バカな……!? そんなバカな……!!」

 オーレリアンに命じられて行われた、影3人による説明。リーエンデルア邸内で起きた『異常』を知り、またも絶句していた。
 コイツらは、騎士団長クラスが複数いても始末できる腕なんだぞ……!? それがたった一人に、しかも一瞬でなんて。あり得ない……!

「だ、だが、現に起きた……。どうなっているんだ!? オーレリアン!! その奇妙な光はなんなんだ!? 貴様は何者なんだ!?」
「いいでしょう。全てにお答えしますよ」

 どこからともなく現れたり、見えない何かで影を吹き飛ばしたり。この男はなんなんだ……!?

「はじめに、前者。あの光は、転移の光。宝玉――ピローの傍に置かれていたものが所有者の危機に反応し、エプリスヒの森に居た僕を呼び寄せたのですよ」
「て、てんい……。転移!? ワープ、というものか……!? な、なぜそんな真似が出来る!?」
「宝玉を渡した者に危険が及んだら、自動的に駆け付けられる。僕には『澄んだ心の持ち主を必ず護れる』という固有能力があるため、体現できたのですよ」
「……な、なんだそれは……。固有、能力……。そんなものを持つ人間など聞いたことがないぞ……!!」
「でしょうね。ですから、僕は人間ではありません。貴方の目の前にいるのは、精霊の王なのですよ」


 精霊とは――。四大元素を司る、すなわち『世界』の『基』となりし存在。大地に漂いし『善』のエネルギーを糧とする、世界を維持し、生命の繁栄を静かに促す存在。

 精霊王とは――。すべての精霊を統べる、頂点に君臨せし存在。精霊たちを統べる、唯一無二の存在。

 エプリスヒの森とは――。原初の精霊・精霊王が誕生した、この世の始まりの場所である。この世の中心、中央点である。


 今までも散々驚いてきたが、今度のものはその比じゃなかった。まるで物語のような内容がポンポンと飛び出し……。俺の常識は、あっという間に覆されてしまった……。

「他貴族を圧倒する力を持つ存在、それはあくまで人間の中でのお話。精霊にとってみれば、ほんの僅かに力があるというだけのこと。子どものアリと大人のアリ程度の差しかないのですよ」
「お、おとなと、こども……。たった、それだけ……」
「ええ、たったそれだけの差です。なのでああいったことが可能で――。同じく容易に、こういったものも可能なのですよ」

 ヤツが、パチンと指を鳴らすと――っっ!!
 う、動けない……。手足が……。指さえも……。動かせなく、なってしまった……。

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