あこがれチェンジ!

柚木ゆず

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7 あたし達が、見つけた!(5)

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「……………………まったく、なんなのよもう。それも結局、審査員じゃなくてキミの意見じゃないの」

 ヨツバちゃんさんは……。お首を大きく、左右に振った……。

「予測だって言ったばっかりなのに。おんなじじゃん」
「ぁ、ぁぅ……。そ、それは――」
「でも。そんな言葉の一つ一つが、胸に響いてきた。……おかげで気が変わっちゃったじゃないのよ」

 ヨツバちゃんさんは大きく息を吐いて、にゅっ! 体が光って透明になりはじめた。
 これって! アコヘンが解ける証だっ!

「純粋な顔をしてそんな風に言われたから、ヘンな自信が湧いてきちゃったじゃん。これでオーディションに落ちたら、キミを一生恨むからね?」
「大丈夫です、だよ。ヨツバちゃんさんは、合格しますっ」
「はぁ~、何を根拠に言ってるのやらだ。でも――。なんでか自信が湧いたままで、この判断は少しも後悔してない。色々と、アリガトね」

 ヨツバちゃんさんは呆れたお顔をしたあと照れくさそうに鼻の頭をかいて、にこり。さっぱりしたお顔で微笑んでくれた。

「アタシはありのままの自分で勝負して、雛恵ちゃんみたいなモデルになるよ。2人に最高の報告をできるように頑張るから、応援をヨロシクね」
「はい。勿論です」
「とーぜんです、だよっ。全力でおーえん応援しますーっ」
「あはは、も1度アリガトね。……それじゃあ時間が来たみたいだから、月下ちゃん、ドタバタお姉ちゃん、バイバイ」

 最後にヨツバちゃんさんはウィンクをして、ふわり。気持ちのいいお顔で消えて、一足先に現実世界に戻った。

「…………ふゆぅ~、よかったぁ。お話を聞いてくれて、よかったよぉ」
「今回解決できたのは、陽上さんのおかげよ。私からも、ありがとうと言わせて頂くわ」

 安心してつい座り込んじゃってたら、モミジちゃんが傍に来て褒めてくれた。
 ぇへへぇ。モミジちゃんに褒められると、あたしもヨツバちゃんさんみたいに照れちゃうなぁ。

「私の言葉は役に立たなかった上に、咄嗟に対応できなかった。ああしてあるがままをぶつけてくれて本当に助かったし、勉強になったわ」
「どーもどーもだよで、モミジちゃんのもちゃんと役に立ってたよっ。落ち着いてしっかりごせつめー説明できて、やっぱりすごいなって思ったもん」

 あたしだったら、あんなに考えられない。尊敬、だよ。

「それにモミジちゃんの推理で、シュシュっとヨツバちゃんさんを見つけられた。あたしもほんとに助かってるし、勉強になったよー」
「そう言ってもらえると、楽になるわ。……けれど……」
「んにゃ? 下を向いて、どーしたの?」
「………………なんでもないわ。そろそろ、元の世界に戻されるようね」
「だねーっ。モミジちゃん、お疲れ様でした」
「ええ。陽上さんも、お疲れ様でした」

 あたしたちはお互いにペコッとお辞儀をして、お仕事はお仕舞い。教室に戻ったあとは元通りになったヨツバちゃんさんを見送って、お家に帰ったのでした。


 ちなみに――。
 最終オーディションの結果は、合格っ!
 ヨツバちゃんさんは夢だった、ヒナエちゃんさんと同じモデルになれたのでしたっ。




















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