あこがれチェンジ!

柚木ゆず

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9 あたし達のゴールデンウィーク! (4)

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 モミジちゃんの行きたかったお店は、3階にある本屋さん。
 モミジちゃんは店の奥に入っていって、積まれていた本を1つ手に取りました。

「その本、サイズが小さいね~。小説なのかな~?」
「ええ、そうなの。私が好きな作家の、推理小説」

 推理小説ってゆーのは確か、探偵さんとか刑事さんが犯人を見つけていくお話。
 初めてお仕事をした時に、趣味の一つだって言ってたよね。

「……月下ちゃんは、違いの分かる小学生。推理小説って、どこが面白いの?」
「犯人を予測しながら読めるところ、かしら。自分の推理が当たっていると嬉しいし、はずれていても勉強になるから楽しいわ」
「はぇー、そーなんだぁ。あたしも読んでみようかなぁ」
「私が読んでいるのは人が死なないものもあるから、そういう作品は是非読んでみて欲しいわ。それとそこのものは特に面白かったから、よければ連休明けに貸しましょうか?」

 モミジちゃんの指の先にあるのは、『洋館の謎』や『かくれんぼ』って題名がある本。
 一つ目の方はすごく難しそうだけど、オススメの本だもんね。かりて読んでみよう。

「うん、お願いするよー。じゃーあたしはお返しに、漫画をおかしするね。すっごく面白いのがあるんだー」
「漫画は殆ど読まないから、有難いわ。私も楽しみにしているわね」

 モミジちゃんは嬉しそうに頷いてくれて、もうちょっと小説コーナーをうろうろ。推理小説をもう1冊と、『純文学』ってあるコーナーでもう1つ選んで、次は油絵の本があるコーナーに向かいました。

「……やはり、月下ちゃんは違いの分かる小学生」
「月下ちゃんは、油絵をするんだね~。どんな本を買うのかな~?」
「作品に新しい要素を加えたくて、参考になりそうな雑誌を買おうと思っているわ。少々お時間、構わないかしら?」
「どーぞどーぞ、だよ。ゆっくり見て見てっ」

 折角、来てるんだもんね。あたしたちを気にせず、満足するまで選んでくださいっ。

「……こっちも、気にしなくていいよ。のんびり見て」
「わたしも時間がかかったから、遠慮はいらないよ~。わたし達も絵の本を読んでるから、気にせずやってね~」
「陽上さん、風松達さんも、ありがとう。お言葉に甘えさせてもらうわ」

 モミジちゃんは丁寧に頭を下げてくれて、油絵について書いてある雑誌をペラペラ、ペラペラ。
 いつも通りクールな表情だけど楽しそうにページを捲って、20分後、くらいかなぁ。買う雑誌が決まりました。

「買いたかったものが、全て手に入ったわ。付き合ってくれてありがとう」
「あたしたちも楽しく読んでて、あっという間だったよ。ねー?」
「そうだね~。月下ちゃんがここに来てくれたおかげで、珍しい色を覚えられたよ~」

 萩色(はぎいろ)。山葵色(わさびいろ)。金糸雀色(かなりあいろ)。
 絵具にはない色がたっくさんのってたし、絵や色に関する豆知識コーナーもあって賢くなれましたっ。

「……ボク達にとっても、なかなかいい時間だった。まったく何も問題なしで、さあ行こう」
「左のレジは少し人が多いから、右のレジがいいね~。こっちこっち~」

 みんなでユーナについて進んでいって、またスタスタ、トコトコ。広いお店を、真っ直ぐ歩いていって――んやっ!

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