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第8話 激動と激動 俯瞰視点(1)

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「お帰りなさいませ! 旦那様っ、奥様っ、お嬢様! 見ていただきたいものがございます!」

 ふたりのお茶会があった日から二日後の、午後8時過ぎ。今日も同じく捏造工作とフルコースディナーを楽しんで戻ると、三人は狼狽した家令フランクに迎えられることとなりました。

「む? そんなに慌ててどうしたのだ?」
「不愉快と重々承知で、言及させていただきます。実を言いますと先日発生したくだんの出来事が気になり、内密に調査を命じておりました」

 あまりに異様だったため不安になり、ずっと調べていた。フランクは本当にそうであるような調子で説明し、動揺を露わにしつつ続けます。

「そうしたら本日……。この国北部にある小さな村『ニッザーバル』にて、こういった出来事があったと知得したのでございます……」

 ――今からおよそ150年前のこと。ニッザーバルにて、一家4人のうち3人が突如として行方不明になるという出来事が発生した――。

 ――その家は村一番の富豪で、トラブルの類は一切なし。幸せな毎日を過ごしていて、失踪する理由も前兆もまったくなかった――。

 ――ただ、村人は何度か聞いていた。気味の悪いビスクドールが自分達のもとに現れるようになったと。どこからともなく赤く染まったビスクドールが現れ、捨てても捨てても戻ってくると言っていたのを――。

 ――それを思い出して不審に思った村人たちが調査した結果、やがて村のはずれで3体のビスクドールを発見。それらは、かつて行方不明になった貴族が捨てたものだと判明する。そして――。

 ――《わたくしたちは、大切な家族を捨てる人が嫌いなの》《わたしたちを家族と言ってくれたのに、捨てられちゃったの。悲しかったの。だから捨てる人は全員嫌いなの。とっても憎いの!》《だから同じように、そういう人達はみーんな捨てちゃうの。暗くてこわ~い、地獄にネえっ! キキキキキキキキ!》と喋り始め、喋り終えると消えてしまった――。

 ――その意味が分からず更に調べて見ると、消えた3人は残る1人を虐げ理不尽に追い出そうとしていたのだった――。

 ――以降その村では家族は勿論のこと、物でさえも安易に捨てることはなくなったのだった――。

 そんな内容が記されている分厚い本を、3人に見せたのでした。


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