もうすぐ婚約破棄を宣告できるようになるから、あと少しだけ辛抱しておくれ。そう書かれた手紙が、婚約者から届きました

柚木ゆず

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第6話 兄~成功の確信と~ ロマニ視点

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『仕事』とは、苦痛と引き換えに報酬を得る行動だ――。そういった一文を何かの本で見かけたが、まさにその通りだと思った。
 最終ステップである5に進むためには、ステップ4を達成しなければならない。そうするには『アンナの自室に入る』が必須となり、

「ロマニ様、ようこそ。お待ちしておりました」
「やあアンナ、久しぶりだね。お邪魔するよ」

 そうなると必然的にある程度の滞在が必要となって、どうでもいい女とお茶を飲み、菓子を食べなければならなくなる。
 ……これだけでも大変だというのに、

「ありがとう。君が作るお菓子はいつも美味しいな」

「いつも手紙でしか話せなくて、俺も寂しかった。今日が待ち遠しかったよ」

「君の笑顔を見ていれば、力がまた湧いていく。おかげでまた頑張れる」

 などなど、心にもないことを口にしないといけない。
 それがとにかく我慢ならず、8度も感情が爆発しそうになった。……だが、そうしてしまえば全てが台無しになってしまう。
 なので、ひたすらに耐え――。幾度もの歯がみを繰り返し、

「アンナが淹れてくれる紅茶は、どのものよりも美味しいな。お代わりをもらえるかな?」
「はいっ。すぐご用意いたします」

 ようやく、その時が訪れる。巧みな話術・・・・・怪しまれることなく・・・・・・・・・・アンナを部屋から追い出し、その隙にネックレスを隠す。
 隠し場所は、コイツが暫く確認をしない場所…………クローゼット内にある、今は使用していないアクセサリーなどを置いてある場所に決定。そうして俺は速やかにミッションを遂行し、無事ステップ4が完了となった。

「ロマニ様、お待たせいたしました。ベルガモットです」
「ありがとう。うん、美味い」

 すぐに去りたいところだが、念のため更に三十分ほど過ごす。そうして違和感が生まれないタイミングで去り、多くの苦痛と引き換えに仕込みを済ませたのだった。

「まったく、どんな行動よりも疲れたぞ……! だが、頑張った者には褒美があると相場が決まっているからな。これから癒してもらうとしよう」

 ステップ5の最終的な打ち合わせを行うため、このあとはアニーのもとへと向かうことになっている。
 故に苛立ちに満ちた顔は笑みが満ちた顔へと変わり、俺は上機嫌で馬車に乗り込んだのだった――。

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