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第7話 兄~報告と、アニー。そして~ ロマニ視点

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「さっき、アンナの部屋にネックレスを隠してきた。無事、明日の最終ステップへと進めるようになったよ」

 白を中心とした、アンナのつまらない部屋。そんなものとは正反対に位置する、ピンクを基調とした可愛らしい部屋。俺はそんな場所に入るや、目の前にいるリスのような愛らしい人――アニーに対し、パチリと片目を瞑ってみせた。

「わぁ、おめでとうございますぅ~っ。ありがとうございますぅ~っ。大好きですぅ、ロマニ様ぁっ」
「はははっ。いやぁ、嬉しいなぁ。あははははははははっ」

 可愛らしいタレ目がへにゃっとなって、ぎゅっと抱き付いてきてくれる。それを幸せと感じないはずがなく、左右の頬は無意識的に緩みきってしまった。
 このまま2人の甘い時間に入り込みたい――ところだが、あいにくと今日は長く滞在できない。早く最終確認を行わないと家族に怪しまれてしまう時間切れとなってしまうから、その作業を行うとしよう。

「決行は予定通り、明日の夜会。会場に着いたら、まずはどうするんだったっけ?」
「えっとぉ。まずはアンナ様に、ご挨拶をするんでしたよねぇ」
「正解。次は、覚えているかな?」
「はぃ~。そのあとわたしは深刻なお顔を作って、隅っこで悩むお芝居をしてぇ。それから、ロマニ様にお声をかけるんでしたぁ」
「うん、そっちも正解。流石はアニーだよ」

 挨拶の際に厳しいことを言われ、悩んでいたアニーは勇気を出して婚約者に――人格者として有名な人に、助けを求める。これらの行動は、それらを周囲に認識させるためのものだ。

「そこからは、俺がバトンを受け取る。まず大声を出して注目を集め、アンナのイジメを追及し始める。そうしたらもちろん?」
「アンナ様は、否定しますよねぇ~」
「そこで、さっきの仕込みの出番。その存在を明らかにして、でも再び、アイツは否定するだろう。そこで確認を行えば…………?」
「お部屋から、わたしのネックレスが出てきますぅ」
「そうして。ジ・エンド。即日婚約破棄を宣告し、アンナ・リロレットとの縁は完全に切断されることとなる」

 反対に謝罪などを行ったことによって、アニーとの縁が誕生。これによって堂々と交際を行えるようになって、やがては堂々と夫婦になれる。
 完璧な、作戦だ……!

「あと一つ乗り越えれば、俺達の間に障害はなくなる。明日力を合わせて、アンナを倒そう!」
「はぃ~、頑張りましょぅ~。えいえい、お~っ!」

 ニッコリとはにかみ、ゆったりと拳を突き上げる。その姿はたまらなく愛おしく、おもわず抱き締めてしまう。

 ――いつまでもこうしていたい――。

 そう強く思うが、今日は時間がない。アンナの屋敷で仕込みをしていたせいで、もう去らねばならない。

((くそっ、あの女はどこまでも邪魔をする……!))「ごめんよアニー。今日はもう帰るね」
「わざわざぁ、ありがとうございますぅ~。お気をつけて、くださいねぇ~」
「ああ、ありがとう。じゃあ、また明日(あした)ね」

 最愛の人に、不機嫌な顔を見せるわけにはいかないからな。俺は心の中でアンナを足蹴にし、笑顔でバイバイ。
 明日(あす)の再会を約束し、屋敷へと戻ったのだった。


 〇〇

 そうしてロマニはザレテリア邸を去り、ロマニを見送ったアニーは――

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