困った時だけ泣き付いてくるのは、やめていただけますか？

第10話 当主がいない理由 イブライム視点（５）

「これは風の噂なのですが、貴方がたは醜悪な真似を何度か行っていたようですね。そんな相手が格好のチャンスを見つけたら、地獄が待っているのと思うのですが――。それでもよろしいと仰るのですね？」
「「「…………………………」」」
「イブライム様、ダニエル様、アリックス様。それでもよろしいのですね？」
「………………………………わっ、分かった！　認める！　認めるとも!!」
「よっ、喜んで傘下に入らせていたただく!!」
「忠誠を誓う、誓わせていただくわっ!!」

　だってこう言わないと絶望が待ってるんだぞ!?　言うしか、なかった……。
　認めるしか、なかった……。

「そうですか。ではこちらにサインをお願い致します。なおこの契約は当主間で行われるものではなく、『家』と『家』の間で行われるものとなっています。必要な書類は10枚で構成されておりまして、一つ一つにサインと血判をお願い致します」
「「「…………しょうち、しました……」」」

　俺達は屈辱的な行為を繰り返し行わされ、その作業は10分ほどで終わった――が、まだ終わりじゃない。
　書類を回収したエリオッツは、２本目の右指を立てて――