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第5話(1)
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『今日のスケジュールは、リルが決めて。まずはどこに行きたい?』
『最初は、服を見に行きたいな。よく行ってた、あそこにいこっ』
そんな会話を経て、あたし達は『ミアズ』というお店に入ることになった。
そこはあたし達が初めて、2人で一緒に入った場所。思い出深いお店、なんだよね。
「アルフレッドと一緒は、もうないと思ってた。今、すっごく嬉しい」
「俺もおんなじ。お互い、にやけが止まらないな」
そうして手を繋ぎながら扉を開け、中に入ると――
「ようこそいらっしゃいませぎやぁ!?」
――ふくよかなおば様こと店長さんが、目を見開いて飛び上がった。
ぁ、しまった。今日は正体がバレないように、あたしは勿論アルフレッドもサングラスをしてる。そんな2人がニヤニヤしながら勢いよく跳び込んだものだから、ビックリしちゃったみたい。
「すみません、ただの買い物客です。諸事情で、こんな格好と表情になってるだけなんです」
「俺らは強盗とかじゃないので安心してください」
「し、失礼致しました。ごゆっくりどうぞ」
店長さんからお詫びの言葉を何度ももらって、あたし達は店内を移動する。
このお店は右半分が女性用、左半分が男性用になっていて、10ヵ月ぶりの今日もまずは右半分から。あたしの服から見ることになった。
「では、久しぶりに。アルフレッドさん、よろしくお願いします」
「了解。今回もお任せください」
茶目っ気たっぷりにお辞儀をし合って、あたしは一歩下がる。それに対してアルフレッドは一歩前に出て、服の物色を始めた。
あたし達が一緒に買い物をする時は、相手の服を一点選んでプレゼントする。それが2人のマイルール。なので今回も、あたしの服はアルフレッドが、アルフレッドの服はあたしが選ぶのです。
「……今日は、4月22日……。狙うは当然、この時期に使えるもの……。となると……」
アルフレッドはブツブツ言いながら白色のブラウスを手に取り、思案の時間がスタート。暫くの間ブラウスを静かに眺め、元の場所に戻した。
「これも、悪くはない。悪くはない、が……。100点じゃない」
への字口にしたまま再度値踏みを始めて、次はベージュのブラウスを手に――取ろうとして、止める。彼はそのまま歩きながら商品をチェックしてゆき、スカートのコーナーで立ち止まった。
「これ、いいな。敢えてシックも、ありか……? リルは可愛いけど、綺麗でもある。その気になれば、どちらでも着こなせるからな……。黒系で攻めてみるか……?」
…………。
バカ。独り言が大きい。
周りのお客さんがニマニマしちゃってるし、あたしは嬉しい恥ずかしい状態で……。困っちゃうんだってば……っ。
「…………いや。違う魅力を引き出す方向は、アリだ。とはいえ、黒系は違う。そうなったら………………………………………………これか。こいつが、相応しい」
長い移動&物色の末に手に取ったのは、白系のワンピース。太めのリボンベルトがポイントな、カットワークレースで華やかに仕上げられたものだった。
「俺が望む条件を満たすのは、こいつしかいない。今日これをプレゼントしたいと思うんだけど、リル。いいかな?」
「もちろんっ。いつも通りセンスがいいし、なによりアルフレッドが真剣に選んでくれたものだもんっ。これにするよっ」
ワンピースをぎゅっと抱き締めながら二つ返事で頷いて、フィッティングルームでチェックを行う。そうして、
「えへぇぇ……。えへへぇ……! アルフレッドが選んでくれた服を、あたしは今、着てる……!」
「10か月ぶりだなぁ……。嬉しいなぁ……っ。幸せだなぁ……っ。みやっひゅわぇりゃふぇりゅぅうううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう!!」
おもわず喜びが爆発して、謎の絶叫&小躍りがスタート。その結果心配した店員さんが飛んでくるというハプニング(?)がありましたが、こほん。
とにかく試着は、楽しく終了。サイズ等々どこにも問題がなかったと伝えると、彼は嬉しそうに会計をしてくれた。
「プレゼント用の包装を頼んだから、ちょっと時間がかかる。てなわけで、その間にお願いしようかな」
「ん、任せといてっ。同じくらい似合う服を選ぶから、期待しててねっ」
ここからは、あたしの番。この喜びをそのままお返しできるように、気合十分で男性用のフロアに移動したのでした。
『最初は、服を見に行きたいな。よく行ってた、あそこにいこっ』
そんな会話を経て、あたし達は『ミアズ』というお店に入ることになった。
そこはあたし達が初めて、2人で一緒に入った場所。思い出深いお店、なんだよね。
「アルフレッドと一緒は、もうないと思ってた。今、すっごく嬉しい」
「俺もおんなじ。お互い、にやけが止まらないな」
そうして手を繋ぎながら扉を開け、中に入ると――
「ようこそいらっしゃいませぎやぁ!?」
――ふくよかなおば様こと店長さんが、目を見開いて飛び上がった。
ぁ、しまった。今日は正体がバレないように、あたしは勿論アルフレッドもサングラスをしてる。そんな2人がニヤニヤしながら勢いよく跳び込んだものだから、ビックリしちゃったみたい。
「すみません、ただの買い物客です。諸事情で、こんな格好と表情になってるだけなんです」
「俺らは強盗とかじゃないので安心してください」
「し、失礼致しました。ごゆっくりどうぞ」
店長さんからお詫びの言葉を何度ももらって、あたし達は店内を移動する。
このお店は右半分が女性用、左半分が男性用になっていて、10ヵ月ぶりの今日もまずは右半分から。あたしの服から見ることになった。
「では、久しぶりに。アルフレッドさん、よろしくお願いします」
「了解。今回もお任せください」
茶目っ気たっぷりにお辞儀をし合って、あたしは一歩下がる。それに対してアルフレッドは一歩前に出て、服の物色を始めた。
あたし達が一緒に買い物をする時は、相手の服を一点選んでプレゼントする。それが2人のマイルール。なので今回も、あたしの服はアルフレッドが、アルフレッドの服はあたしが選ぶのです。
「……今日は、4月22日……。狙うは当然、この時期に使えるもの……。となると……」
アルフレッドはブツブツ言いながら白色のブラウスを手に取り、思案の時間がスタート。暫くの間ブラウスを静かに眺め、元の場所に戻した。
「これも、悪くはない。悪くはない、が……。100点じゃない」
への字口にしたまま再度値踏みを始めて、次はベージュのブラウスを手に――取ろうとして、止める。彼はそのまま歩きながら商品をチェックしてゆき、スカートのコーナーで立ち止まった。
「これ、いいな。敢えてシックも、ありか……? リルは可愛いけど、綺麗でもある。その気になれば、どちらでも着こなせるからな……。黒系で攻めてみるか……?」
…………。
バカ。独り言が大きい。
周りのお客さんがニマニマしちゃってるし、あたしは嬉しい恥ずかしい状態で……。困っちゃうんだってば……っ。
「…………いや。違う魅力を引き出す方向は、アリだ。とはいえ、黒系は違う。そうなったら………………………………………………これか。こいつが、相応しい」
長い移動&物色の末に手に取ったのは、白系のワンピース。太めのリボンベルトがポイントな、カットワークレースで華やかに仕上げられたものだった。
「俺が望む条件を満たすのは、こいつしかいない。今日これをプレゼントしたいと思うんだけど、リル。いいかな?」
「もちろんっ。いつも通りセンスがいいし、なによりアルフレッドが真剣に選んでくれたものだもんっ。これにするよっ」
ワンピースをぎゅっと抱き締めながら二つ返事で頷いて、フィッティングルームでチェックを行う。そうして、
「えへぇぇ……。えへへぇ……! アルフレッドが選んでくれた服を、あたしは今、着てる……!」
「10か月ぶりだなぁ……。嬉しいなぁ……っ。幸せだなぁ……っ。みやっひゅわぇりゃふぇりゅぅうううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう!!」
おもわず喜びが爆発して、謎の絶叫&小躍りがスタート。その結果心配した店員さんが飛んでくるというハプニング(?)がありましたが、こほん。
とにかく試着は、楽しく終了。サイズ等々どこにも問題がなかったと伝えると、彼は嬉しそうに会計をしてくれた。
「プレゼント用の包装を頼んだから、ちょっと時間がかかる。てなわけで、その間にお願いしようかな」
「ん、任せといてっ。同じくらい似合う服を選ぶから、期待しててねっ」
ここからは、あたしの番。この喜びをそのままお返しできるように、気合十分で男性用のフロアに移動したのでした。
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