婚約破棄ですか? ありがとうございます!

柚木ゆず

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第5話(3)

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「リル? わたし・・・は、ロゼリアと申します。人違いですよ?」

 声を高めにして、おほほほほっと淑やかに微笑む。
 それはアナタの勘違い。わたし、リルではありませんわ。さようなら―――

「サングラスをかけてても、私には分かるわ。貴女は間違いなく、リル・サートルよ!」

 ――さようならをして立ち去ろうとしていたら、進路に回り込まれて遮られる。そして、

「貴方は、私の宿敵。私の全科目1位を阻止した、因縁の相手ですものっ。伯爵家の長女、リル・サートル!! どんなに変装をしていても、簡単に正体を見破れるわっ!!」

 彼女は周りに聞こえるように、無駄に声を張り上げる。
 ……あたしは数学だけは得意で、入学から卒業までずっとトップ。それが許せなかったみたいで、

『あ、ありえない……。天才が負けるなんて、ありえない……!』

『私が解けなかった問題を、いとも簡単に解いた……? そんなのおかしいっ! 不正をしているのよっっ!』

 という風にとても天才とは思えない理屈を並べ始め、ずーっと小さく逆恨みをしてた。
 だから、その恨みを今晴らそうとしてる。大勢の前で注目を集め、大量の白い目や非難を浴びるように仕向けてるみたい……。

「変装しても無駄よっ、リル・サートル! 貴女はエメリック殿下に婚約破棄をされてしまった、あのリル・サートル! リル・サートルなのよ!!」

『なんだって!? リル・サートルだと!?』
『どこにいるんだ!? どこだどこだっ!?』

 壊れたおもちゃみたいに叫びまくったせいで、ものすごい勢いで人が集まってきた。
 あっという間に周りをグルっと囲まれて、黒山がドーナツ状に並んでいる。通行人も皆さんも、物好きだよね。ははははは……。

(仕方ないな、ここは強行突破しよう。俺の服を、しっかりと握っといてくれよ?)
(ありがとう、アルフレッド。お世話になります)

 どういたしまして――。幼馴染は小さく笑ったと、ひょいっとあたしをお姫様抱っこ。大事に優しく抱えてくれて、人が少ない箇所へと一気に飛び込んだ。

「「「「「うおっ!?」」」」」
「相手が驚いた隙に、脱出。バイバイってねっ」

 アルフレッドは上手に人と人の間をすり抜け、簡単に脱出成功。こうしてあたし達は、無事に――

「まっ、待ちなさいっ! まだ話の途中っ! 本題はまだよっ!!」
「「「「「まてっ!! 逃げるなっ!!」」」」」

 ミーラや野次馬達も即座に地面を蹴って、大勢が怒涛の勢いで追っかけてきた。
 ……なので、訂正……。
 こうしてあたし達は、理不尽な逃走劇を繰り広げる羽目になったのでした……。

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