婚約破棄ですか? ありがとうございます!

柚木ゆず

文字の大きさ
22 / 74

第10話(2)

しおりを挟む
「なっ、なぜなのですか!? どうして邪魔をするのですか!?」

 あたしも、アルフレッドの考えが分からない。
 あたし達にできることなんて、何もないのに……。否定、しちゃうの……?

「まさか、希望的観測なのですか!? 我慢していれば解決してくれるとでも仰るのですかっ!?」
「いえ、そうではありません。……アナタと相思相愛の方、アイズさん。彼はアナタの本心を理解していて、別格の相手に必死で抵抗をして、『離れていても、心はいつも一緒ですよ』『僕が愛するのは、一生貴方だけです』。と口にされたのですよね?」
「え、ええ……。それが、どうしたのですか……?」
「俺がアナタの邪魔をする理由は、そこなんです。…………先程仰ったように、希望的観測に聞こえるとは思いますが――。俺には、自信があります。アイズさんは、決して諦めていない。彼は結婚の儀までに、必ずやアナタを救い出してくれますよ」

 アルフレッドは僅かの迷いもなく断言して、ふと、微苦笑を浮かべた。

「何の因果か、ここにいる2人もそうなんですよ。隣にいる彼女は桁外れに高い身分の相手に目を付けられて、この男との縁を無理やり切らされた。目の前にいるのは、もう一人のアナタとアイズさんなんですよ」

 彼は途中で、斜め後方を見て――多分ラングスさんに『そちらが困るようなことはしない』と目線で伝え、ここからはボリュームを落とした声になる。

(俺は彼女を取り戻したくって、毎日我武者羅に動き回りました。どうすれば権力の差を埋められるのか必死で考えて、アレコレ行動したんですよ)
「…………。そう、だったのですか……」

 あたしも、全然知らなかった。
 誰もそういう話はしないから、初耳。ずっと、頑張ってくれてたんだ……っ。

(この件は婚約相手の心変わりで、こうして一緒にいられるようになったんですけどね。それがなかったとしても、タイムリミットまでにどうにかできる自信はありました)
「け、桁外れ、なのにですか……? そんな相手に……。本当に……?」
(はい、ホントですよ。だって囚われのお姫様は、世界で一番大切な人ですからね。不可能だって可能に塗り替えちゃいますよ)

 そう言いながらふわりと手を握られて、自分の顔が真っ赤になるのが分かった。
 アルフレッド……。唐突にそういうことを言うのは、反則だってば……っ。

(なので。俺と似たようなことをしていたアイズさんも、絶対に、救出の準備を整えています。アナタから彼の話が出た瞬間、それを確信しました)
「………………。男性さん……」
「さっき前置きをさせてもらったように、証拠なんてどこにもありません。ですがこの男には、同士には、分かります。…………アイズさんと俺を、信じてみてくれませんか?」

 終始自信満々に紡がれた、ゆるぎない自信に満ちた言葉。そんな問いかけに対し、彼女は――

「…………はい、信じます。あの人を、待ってみます……っ!」

 さっきまでとは、性質がまるで違う涙。嬉し涙を流しながら、素敵な笑顔を作ったのでした。

しおりを挟む
感想 366

あなたにおすすめの小説

物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜

丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。 与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。 専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、 失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。 そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、 セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。 「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」 彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、 彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。 嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、 広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、 独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。 栄養と愛情を取り戻したセレナは、 誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、 社交界で注目される存在となる。 一方、セレナを失った伯爵家は、 彼女の能力なしでは立ち行かず、 ゆっくりと没落していくのだった――。 虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。

「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」

歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。 「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは 泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析 能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り 続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。 婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

悪役断罪?そもそも何かしましたか?

SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。 男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。 あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。 えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。 勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

裏切ったのはあなたですよね?─湖に沈められ記憶を失った私は、大公女として返り咲き幸せを掴みます

nanahi
恋愛
婚約者ウィルとその幼馴染ベティに罠にはめられ、湖へ沈められた伯爵令嬢アミアン。一命を取り留め、公女として生まれ変わった彼女が見たのは、裏切り者の幸せな家庭だった。 アミアンは絶望を乗り越え、第二の人生を歩む決意をする。いまだ国に影響力を持つ先の王弟の大公女として、輝くほど磨き上げられていったアミアンに再会したウィルは激しく後悔するが、今更遅かった。 全ての記憶を取り戻したアミアンは、ついに二人の悪事を断罪する。

公爵家の家政を10年回した私が出ていったら、3ヶ月で領地が破綻しました

歩人
ファンタジー
エレナは公爵家に嫁いで10年、夫は愛人に入れ込み、義母には「家政婦代わり」と 罵られた。だが領地の財務も、商会との交渉も、使用人の管理も、全部エレナが やっていた。ある日、義母から「あなたの代わりなんていくらでもいる」と言われ、 エレナは静かに離縁届を出した。「では、代わりの方にお任せください」 辺境の町で小さな商会を開いたエレナ。10年間の実務経験は伊達ではなかった。 商会はたちまち繁盛する。一方、エレナがいなくなった公爵家は3ヶ月で経営破綻。 元夫が「戻ってこい」と泣きつくが—— 「お断りです。あと、10年分の未払い給金を請求いたしますね」

婚約破棄された公爵令嬢ですが、戻らなかっただけです

鷹 綾
恋愛
王太子カイル殿下から、社交界の場で婚約破棄を言い渡された公爵令嬢リュシエンヌ。 理由は―― 「王太子妃には華が必要だから」。 新たに選ばれたのは、愛らしく無邪気な義妹セシリア。 誰もが思った。 傷ついた令嬢は泣き、縋り、やがて戻るのだと。 けれどリュシエンヌは、ただ一言だけ告げる。 「戻りません」 彼女は怒らない。 争わない。 復讐もしない。 ただ――王家を支えるのをやめただけ。 流通は滞り、商会は様子を見始め、焦った王太子は失点を重ねる。 さらに義妹の軽率な一言が決定打となり、王太子妃候補の座は静かに消えた。 強いざまあとは、叫ぶことではない。 自らの選択で、自らの立場を削らせること。 そして彼女は最後まで戻らない。 支えない。 奪わない。 ――選ばれなかったのではない。 彼女が、選ばなかったのだ。 これは、沈黙で勝つ公爵令嬢の物語。

旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~

榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。 ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。 別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら? ー全50話ー

処理中です...