25 / 74
第11話 どいつもこいつも……! エメリック視点(2)
しおりを挟む
「は、ははは。お前も妙なことを言い出すんだな? その発言にある『正当性』とやらはなんなんだ? いますぐ簡潔に速やかに納得できるように言ってみろ」
こめかみに青筋を立てながら、親指で後ろの三匹をさす。
言え。さあ言え。さあ言ってみろ!
「実はですね。サーフィナ・コアナ様の言動が、使用人達の間で少々問題となっているのでございます」
ザイグは折り目正しく一礼をし、説明が始まった。
「部屋の掃除が甘い。もっともっと時間をかけて、いつも新品同様にしなさい。呼んだらもっと早く来なさい。そもそもわたくしの様子を見て、望むことを予想しなさい。など最近のコアナ様は頻繁に、所謂無茶な事を仰られているのですよ」
そのため3人の気持ちは、分からなくもない。おもわず出てしまった苦労の感情なので、看過して欲しい。
彼はそう続けて、改めて腰を折り曲げた。
「わたしは先程使用人達の長から、この件に関する依頼を受けました。そのため殿下に、やんわりと注意をしていただくよう、お願いに参っている最中だったのでございます」
「………………………」
「エメリック殿下、以上がわたしの言い分でございます。御納得、いただけましたでしょうか?」
「……………………いいや、納得なんでできるものか。サーフィナが、そんな無茶を言うとは思えない」
到底、信じられない。少しばかり黙考を経て確信し、強くかぶりを振る。
「サーフィナは思い遣りに満ちた、内外共に完璧な女性だ。ソイツらのように低い身分の者にも、対等に接することのできる人だ」
「…………では……。メイド長の言葉は、なんだったのでしょうか……?」
「そんなことも分からないのか? あれらは、愛の鞭に決まっているだろう」
ここで僕は、盛大に呆れの息を吐いた。
「大方コイツらを含めた使用人共は、気が緩んでいたんだろう。温厚で優しいサーフィナを見て、『この方なら多少緩くしても問題ない』と思ってんだろう。サーフィナはソコを、しっかりと見抜いていたのだよ」
「殿下……。それは――」
「サーフィナはそんな『たるみ』を引き締めようとして、きつめに言っただけだ。…………いや、そもそもそう言っているのかすら怪しい。コイツらは、サーフィナに――正式には王太子妃じゃない人間に見抜かれ注意されたことが面白くなくて、大袈裟に語っている可能性が高い!」
いつも傍に居る僕には、分かる。彼女はそんな風なことを、口にはしない。いくら相手のためでも、もっと優しく告げるに決まっている!
わざわざ『リル様が』と嫌味たらしく比較している点が、心の中にある悪意を証明している!
「ザイグ、お前はもっと『見る目』のある男だと思っていたのだがな。こんな女共に騙されるなんて、まだまだだな」
「殿下、彼女達は事実を口にしております。そのような理由で、メリア殿がこのような話を――」
「貴様はすっかり、コイツらに洗脳されているようだな。…………お前に使用人共の処分は、任せられない。僕が直接父さんに伝えて、まとめてクビにするとしよう」
教育なんて、生ぬるい。ここから放り出して、全員路頭に迷わせてやる。
「お前達の代わりなんて、いくらでもいるんだ。調子に乗るとどうなるのか、たっぷりと思い知らせてやろうじゃないか」
ニンと口角を吊り上げて、予定を変更。サーフィナが待つバルコニーの前に王の間へと向かい、父さんと母さんに一部始終を伝える。
そうすれば――
「エメリック。わたしも、ザイグと使用人の言い分を推す」
「私もよ。ザイグ宰相とメリア達が、正しいと思うわ」
――予想外。二人も、同じことを言い出したのだった。
こめかみに青筋を立てながら、親指で後ろの三匹をさす。
言え。さあ言え。さあ言ってみろ!
「実はですね。サーフィナ・コアナ様の言動が、使用人達の間で少々問題となっているのでございます」
ザイグは折り目正しく一礼をし、説明が始まった。
「部屋の掃除が甘い。もっともっと時間をかけて、いつも新品同様にしなさい。呼んだらもっと早く来なさい。そもそもわたくしの様子を見て、望むことを予想しなさい。など最近のコアナ様は頻繁に、所謂無茶な事を仰られているのですよ」
そのため3人の気持ちは、分からなくもない。おもわず出てしまった苦労の感情なので、看過して欲しい。
彼はそう続けて、改めて腰を折り曲げた。
「わたしは先程使用人達の長から、この件に関する依頼を受けました。そのため殿下に、やんわりと注意をしていただくよう、お願いに参っている最中だったのでございます」
「………………………」
「エメリック殿下、以上がわたしの言い分でございます。御納得、いただけましたでしょうか?」
「……………………いいや、納得なんでできるものか。サーフィナが、そんな無茶を言うとは思えない」
到底、信じられない。少しばかり黙考を経て確信し、強くかぶりを振る。
「サーフィナは思い遣りに満ちた、内外共に完璧な女性だ。ソイツらのように低い身分の者にも、対等に接することのできる人だ」
「…………では……。メイド長の言葉は、なんだったのでしょうか……?」
「そんなことも分からないのか? あれらは、愛の鞭に決まっているだろう」
ここで僕は、盛大に呆れの息を吐いた。
「大方コイツらを含めた使用人共は、気が緩んでいたんだろう。温厚で優しいサーフィナを見て、『この方なら多少緩くしても問題ない』と思ってんだろう。サーフィナはソコを、しっかりと見抜いていたのだよ」
「殿下……。それは――」
「サーフィナはそんな『たるみ』を引き締めようとして、きつめに言っただけだ。…………いや、そもそもそう言っているのかすら怪しい。コイツらは、サーフィナに――正式には王太子妃じゃない人間に見抜かれ注意されたことが面白くなくて、大袈裟に語っている可能性が高い!」
いつも傍に居る僕には、分かる。彼女はそんな風なことを、口にはしない。いくら相手のためでも、もっと優しく告げるに決まっている!
わざわざ『リル様が』と嫌味たらしく比較している点が、心の中にある悪意を証明している!
「ザイグ、お前はもっと『見る目』のある男だと思っていたのだがな。こんな女共に騙されるなんて、まだまだだな」
「殿下、彼女達は事実を口にしております。そのような理由で、メリア殿がこのような話を――」
「貴様はすっかり、コイツらに洗脳されているようだな。…………お前に使用人共の処分は、任せられない。僕が直接父さんに伝えて、まとめてクビにするとしよう」
教育なんて、生ぬるい。ここから放り出して、全員路頭に迷わせてやる。
「お前達の代わりなんて、いくらでもいるんだ。調子に乗るとどうなるのか、たっぷりと思い知らせてやろうじゃないか」
ニンと口角を吊り上げて、予定を変更。サーフィナが待つバルコニーの前に王の間へと向かい、父さんと母さんに一部始終を伝える。
そうすれば――
「エメリック。わたしも、ザイグと使用人の言い分を推す」
「私もよ。ザイグ宰相とメリア達が、正しいと思うわ」
――予想外。二人も、同じことを言い出したのだった。
15
あなたにおすすめの小説
「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」
歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。
「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは
泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析
能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り
続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。
婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」
婚約破棄された公爵令嬢ですが、戻らなかっただけです
鷹 綾
恋愛
王太子カイル殿下から、社交界の場で婚約破棄を言い渡された公爵令嬢リュシエンヌ。
理由は――
「王太子妃には華が必要だから」。
新たに選ばれたのは、愛らしく無邪気な義妹セシリア。
誰もが思った。
傷ついた令嬢は泣き、縋り、やがて戻るのだと。
けれどリュシエンヌは、ただ一言だけ告げる。
「戻りません」
彼女は怒らない。
争わない。
復讐もしない。
ただ――王家を支えるのをやめただけ。
流通は滞り、商会は様子を見始め、焦った王太子は失点を重ねる。
さらに義妹の軽率な一言が決定打となり、王太子妃候補の座は静かに消えた。
強いざまあとは、叫ぶことではない。
自らの選択で、自らの立場を削らせること。
そして彼女は最後まで戻らない。
支えない。
奪わない。
――選ばれなかったのではない。
彼女が、選ばなかったのだ。
これは、沈黙で勝つ公爵令嬢の物語。
物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜
丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。
与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。
専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、
失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。
そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、
セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。
「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」
彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、
彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。
嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、
広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、
独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。
栄養と愛情を取り戻したセレナは、
誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、
社交界で注目される存在となる。
一方、セレナを失った伯爵家は、
彼女の能力なしでは立ち行かず、
ゆっくりと没落していくのだった――。
虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。
【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない
くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、
軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。
言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。
――そして初めて、夫は気づく。
自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。
一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、
「必要とされる存在」として歩き始めていた。
去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。
これは、失ってから愛に気づいた男と、
二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。
――今さら、遅いのです。
【完結】騎士団長の旦那様は小さくて年下な私がお好みではないようです
大森 樹
恋愛
貧乏令嬢のヴィヴィアンヌと公爵家の嫡男で騎士団長のランドルフは、お互いの親の思惑によって結婚が決まった。
「俺は子どもみたいな女は好きではない」
ヴィヴィアンヌは十八歳で、ランドルフは三十歳。
ヴィヴィアンヌは背が低く、ランドルフは背が高い。
ヴィヴィアンヌは貧乏で、ランドルフは金持ち。
何もかもが違う二人。彼の好みの女性とは真逆のヴィヴィアンヌだったが、お金の恩があるためなんとか彼の妻になろうと奮闘する。そんな中ランドルフはぶっきらぼうで冷たいが、とろこどころに優しさを見せてきて……!?
貧乏令嬢×不器用な騎士の年の差ラブストーリーです。必ずハッピーエンドにします。
公爵家の家政を10年回した私が出ていったら、3ヶ月で領地が破綻しました
歩人
ファンタジー
エレナは公爵家に嫁いで10年、夫は愛人に入れ込み、義母には「家政婦代わり」と
罵られた。だが領地の財務も、商会との交渉も、使用人の管理も、全部エレナが
やっていた。ある日、義母から「あなたの代わりなんていくらでもいる」と言われ、
エレナは静かに離縁届を出した。「では、代わりの方にお任せください」
辺境の町で小さな商会を開いたエレナ。10年間の実務経験は伊達ではなかった。
商会はたちまち繁盛する。一方、エレナがいなくなった公爵家は3ヶ月で経営破綻。
元夫が「戻ってこい」と泣きつくが——
「お断りです。あと、10年分の未払い給金を請求いたしますね」
旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~
榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。
ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。
別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら?
ー全50話ー
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる