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第6話 異常は突然に マティウス視点(3)
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ドクンドクンドクンドクン!
これまで経験したことのないほどの速さと大きさで、心臓が動いている。
「お部屋のカーテンを新調する際に、実はマティウス様がお好きな柄にしていたんです。ルナがそう言っていましたよ」
「そうだったな、イナヤ。まさか、そんな理由があったとはな」
ドクンドクンドクンドクンドンッ!
未曽有の速さと大きさだった心音が、更に速くなって大きくなった。
「あの観葉植物は、マティウス様とお揃いだそうですね?」
「急に置きたいと言い出した時は、不思議に思いましたわ。マティウスさんのお部屋にあると聞いて、育て始めたのね」
ドクンドクンドクンドクンドクンドクンッ!
限界まで速く大きくなっていると思っていたのに、もう一段階速く大きくなった。
「それにしても、ルナは遅いわねぇ……?」
「お姉様、わたしが様子を見てきます。マティウス様、皆様、失礼します」
ドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンッ!
心臓が、弾け飛びそうになっている。
「よかったな、マティウス。もうすぐ会えるぞ」
「ずっとお会いしたがっていましたもんね。小さな『夢』が叶ってよかったですね」
だめだ……。
心臓も精神も……。これ以上、もたない……。
「お待たせしましたっ。ちょうどそこまで来ていました」
「おお、ルナ。大好きな人がいらっしゃっているぞ」
「兄上、なにを固まっているのですか? 手を振ってくださっているじゃないですか。振り返して――」
「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
イナヤ様が時折後ろを見ながら戻って来て、父上とガブリエルも虚空を見つめる。耐えられるはずがなかった。
たまらず頭を抱えながらその場から逃げ出し、そのまま我武者羅に走って――ウチの馬車に逃げ込んだ。
「「「マティウス様!? どうされたのですか!?」」」
「全員がぁっ! ルナが――そうだ! お前達はルナを――マールルット家に三女が存在すると思っているのか!? 正直に言うんだ! 本心でっ、必ず本心で答えてくれ! じゃないと大変なことになるんだ!! どうだ!?」
「た、大変……!? そっ、存在はしないと思っております!」
「右に同じでございます!」
「同じく!」
「そうかっ、思っていないんだな!! よかった……! お前達はまともだ……!!」
自然と、両目から涙が溢れてくる。
ケビン、ローク、サック。この者達は正気だ。
「ここまで取り乱されるだなんて……。あちらで何があったのでございますか……!?」
「……マールルット家の人間が――父上も母上もガブリエルも……。ルナが居ると言い出したんだ……。実際は、ルナなんて居ないのに……」
「居ない!? マティウス様がずっと主張されていたのに――」
「あれは嘘なんだ!! ルナという三女が存在しているかのように振る舞っていただけなんだよ!!」
その、理由は――
これまで経験したことのないほどの速さと大きさで、心臓が動いている。
「お部屋のカーテンを新調する際に、実はマティウス様がお好きな柄にしていたんです。ルナがそう言っていましたよ」
「そうだったな、イナヤ。まさか、そんな理由があったとはな」
ドクンドクンドクンドクンドンッ!
未曽有の速さと大きさだった心音が、更に速くなって大きくなった。
「あの観葉植物は、マティウス様とお揃いだそうですね?」
「急に置きたいと言い出した時は、不思議に思いましたわ。マティウスさんのお部屋にあると聞いて、育て始めたのね」
ドクンドクンドクンドクンドクンドクンッ!
限界まで速く大きくなっていると思っていたのに、もう一段階速く大きくなった。
「それにしても、ルナは遅いわねぇ……?」
「お姉様、わたしが様子を見てきます。マティウス様、皆様、失礼します」
ドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンッ!
心臓が、弾け飛びそうになっている。
「よかったな、マティウス。もうすぐ会えるぞ」
「ずっとお会いしたがっていましたもんね。小さな『夢』が叶ってよかったですね」
だめだ……。
心臓も精神も……。これ以上、もたない……。
「お待たせしましたっ。ちょうどそこまで来ていました」
「おお、ルナ。大好きな人がいらっしゃっているぞ」
「兄上、なにを固まっているのですか? 手を振ってくださっているじゃないですか。振り返して――」
「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
イナヤ様が時折後ろを見ながら戻って来て、父上とガブリエルも虚空を見つめる。耐えられるはずがなかった。
たまらず頭を抱えながらその場から逃げ出し、そのまま我武者羅に走って――ウチの馬車に逃げ込んだ。
「「「マティウス様!? どうされたのですか!?」」」
「全員がぁっ! ルナが――そうだ! お前達はルナを――マールルット家に三女が存在すると思っているのか!? 正直に言うんだ! 本心でっ、必ず本心で答えてくれ! じゃないと大変なことになるんだ!! どうだ!?」
「た、大変……!? そっ、存在はしないと思っております!」
「右に同じでございます!」
「同じく!」
「そうかっ、思っていないんだな!! よかった……! お前達はまともだ……!!」
自然と、両目から涙が溢れてくる。
ケビン、ローク、サック。この者達は正気だ。
「ここまで取り乱されるだなんて……。あちらで何があったのでございますか……!?」
「……マールルット家の人間が――父上も母上もガブリエルも……。ルナが居ると言い出したんだ……。実際は、ルナなんて居ないのに……」
「居ない!? マティウス様がずっと主張されていたのに――」
「あれは嘘なんだ!! ルナという三女が存在しているかのように振る舞っていただけなんだよ!!」
その、理由は――
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