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第1話 異変 アレクシア視点
しおりを挟む「…………お、お嬢様。今のは……」
「ええ。あの馬車、ものすごいスピードだったわね」
門を潜って停車するまでの時間は、普段の2分の1以下。敷地内を動いているとは思えない速度で走っていた。
「それに帰りは夜になるはずなのに、こんな時間に戻ってくるだなんて。なにかあったみたいね」
「はい……。わたくし、至急確認をしてまいりま――え!? …………」
「どうしたのカタリナ? まだ、外で何か起きているの――ああ、そういうことね。貴方が固まった理由が分かったわ」
続いてもう一台、それもウチの所有ではない立派な馬車がやって来て停まった。
全体が白くペイントされているあの車は、この国の治安機関のもの。有事の際に使用される馬車が続いて現れたため、彼女は言葉を失ってしまっていたのだ。
「キアラ様を乗せた馬車が、緊急かつ高速で戻って来て……。その直後に、治安局の馬車が続く……。かなりのことが発生しているようですね……」
「わたし達の知らないところで、相当な緊急事態が起きていたみたいね。……カタリナ、わたしも確認をするわ」
お父様達に指定された時間以外に部屋を出ると、『出てくるなと言っただろう!』『不愉快だわ!』と怒鳴られ連れ戻されてしまう。けれど明らかに守っていられる状況ではないので、カタリナと共に急いで部屋を出た。
((……キアラは猫を被っていて、外では絶対に本性を出さない。トラブルを起こすとは思えないわね))
しかも今夜は他貴族が集まるパーティーに参加をしていて、輪をかけて『よい子』を演じている。問題が起きる要素がないのに、なにがあったのかしら……?
そんなことを考えながらエントランスに向かうと、
「お父様ぁっ、お母様ぁっ!! 大変なのっ!! 大変なことになっちゃってるのぉっっ!!」
涙まみれになっているキアラがちょうど屋敷に入って来て、狼狽えていたお父様とお母様に縋りつき始めた。
この子がここまで動揺したことは今まで一度もないし、後ろでは制服姿の女性が5人――治安局員の方々が、キアラを見張っている。こんな状況も初めてで、もしかしたらキアラ個人では済まない、『家』にも大きな影響が出てしまうことが起きているのかもしれないわね。
「どっ、どうしたというのだ!? いったい何があったのだ!?」
「きっ、キアラっ!? なっ、なにがあったのっっ!?」
「あっ、あのねっ! あのねっ! パーティーに参加してっ、すぐだったの!! 急にボスコ様がいなくなって、しばらくしたら戻って来てねっ!!」
移動中も泣き続けていたと分かる、酷くかすれた声。そんな声でキアラは頻繁にどもりながら、続いてこう叫んだのでした。
「私はなにもしていないのにっ! ボスコ様にねっっ!! 『お前が他の令嬢を陰でイジメていたから婚約破棄をする!』って、みんなの――他の参加者が居る前で宣告されちゃったのぉっ!!」
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