今日は、わたしから何でも奪ってきた妹が奪われてしまう日

第20話 逃走の果てに～偶然、あるいは必然～ キアラ視点（８）

「オレは出ないつもりだったが、最愛の人に手を出そうとするなら話は別だ。喧嘩をご消耗ならオレが相手になるぜ？」

　っっっ!!　今度はガタイの良い男が出てきて、私の前に立ちはだかった。
　コイツは、カタリナの夫……!!　アレクシアの時と言いっ、夫婦そろって私を苛立たささせる……!!

「オレも、過去の話を聞いてるぜ？　アンタにゃ遠慮しない。来るなら来いよ」
「………………ふ、ふん。私はねえ、低俗な人間は相手にしない主義なの。触れたら手が穢れてしまうから相手になんてしないわ」
「そうか。逃げるんだな」
「愚か者らしい発言ですね。僕なら情けなくてできませんよ」
「ほ、ほほほほほ。真に貴族の血を引く者は、そんな安い挑発には乗らないわ。……これい以上底辺労働者と関わっていたら、こっちまで底辺になってしまうものね。もうサヨウナラよ」

　血液が沸騰しそうになるのを必死に抑えて、私は踵を返した。そうして私は、忌々しいクソ女とクソ男達から離れ――

（（ぁ……））

　――離れようとして、大事なことを思い出したのだった。


（（このまま外に出たら……。捕まって殺される……））