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プロローグ 裏切り エステェ・ファレナルース視点(2)
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「こういうことなの、メリッサ。だからね、アドン様との関係を解消してもらいたいの」
今日までの日々を、伝え終えたあと。私は視線を正面から隣へと移して、最愛の人が取り出した書類を見つめた。
もちろんこれは、婚約解消に関するもの。
「今の俺にとって1番は、エステェ。2番目を心から愛することなんてできるはずがなくて、そんな状況は君にとってもマイナスしか生まない。そうだろう?」
「…………そう、ですわね」
「したがって、同意のもとで解消する、これがベストな選択肢なんだ。秘密裏に関係を持っていたことを黙ってもらう代わりに、慰謝料は弾む。ちゃんとそちらにもメリットがあるのだから、受け入れてくれるだろう?」
(ベストな選択? メリット? とんでもない。滅茶苦茶な言い分――だけれど……)「ええ。受け入れますわ」
メリッサは何かを呟いた後、居住まいを正して顎を引いた。
「メリッサ? 今、なんて言ったの?」
「些末事ですわ。……エステェ、アドン様。それぞれのお家の長――当主様の承諾を、得ているんですわよね?」
「ああ、当然だとも」「ええ。当たり前よ」
お父様は、侯爵家とのパイプができると大喜び。おじ様は、商会の大戦力となる人間を迎えられると大喜び。全員が笑顔で背中を押してくれているの。
「そう、ですのね。だったら……。貴女達はいずれ…………」
「? なんだ、メリッサ?」「? なんなの、メリッサ……?」
「これもまた些末事でして、理解致しました。ではわたくしはお屋敷に戻り、その旨をお父様に伝えますわ」
よく分からないけど、とにかくすんなりと身を引くみたい。メリッサは他人行儀にカーテシーを行ったあと、すぐさま馬車に乗り込み去ってしまったのだった。
「ふう。アドン様、円滑に進んでよかったですね」
「物分かりの良い人間で、助かったよ。……じゃあ、エステェ。お茶を楽しもうか」
アドン様は控えていた従者にいくつか指示を出し、私へと爽やかな微笑みを向けてくださった。
この件は今後、おじ様とお父様が対応してくれることになっている。なので私達は、細かいことを気にする必要はないのよね。
「体裁があるから半年~1年くらいは公表できないけれど、俺達はついに名実ともに恋人となった。さあ、新たな一歩を踏み出そう」
「はい、アドン様っ。一緒に踏み出し、進んでゆきましょうっ」
颯爽と差し出された手を取り、私達は二人仲良くガーデンテーブルへと向かう。
6月5日。雲一つない快晴の下。
私達は真の恋人としてスタートを切り、幸せに満ちた眩しい日々が幕を開けたのでしたっ!
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「したがって、同意のもとで解消する、これがベストな選択肢なんだ。秘密裏に関係を持っていたことを黙ってもらう代わりに、慰謝料は弾む。ちゃんとそちらにもメリットがあるのだから、受け入れてくれるだろう?」
(ベストな選択? メリット? とんでもない。滅茶苦茶な言い分――だけれど……)「ええ。受け入れますわ」
メリッサは何かを呟いた後、居住まいを正して顎を引いた。
「メリッサ? 今、なんて言ったの?」
「些末事ですわ。……エステェ、アドン様。それぞれのお家の長――当主様の承諾を、得ているんですわよね?」
「ああ、当然だとも」「ええ。当たり前よ」
お父様は、侯爵家とのパイプができると大喜び。おじ様は、商会の大戦力となる人間を迎えられると大喜び。全員が笑顔で背中を押してくれているの。
「そう、ですのね。だったら……。貴女達はいずれ…………」
「? なんだ、メリッサ?」「? なんなの、メリッサ……?」
「これもまた些末事でして、理解致しました。ではわたくしはお屋敷に戻り、その旨をお父様に伝えますわ」
よく分からないけど、とにかくすんなりと身を引くみたい。メリッサは他人行儀にカーテシーを行ったあと、すぐさま馬車に乗り込み去ってしまったのだった。
「ふう。アドン様、円滑に進んでよかったですね」
「物分かりの良い人間で、助かったよ。……じゃあ、エステェ。お茶を楽しもうか」
アドン様は控えていた従者にいくつか指示を出し、私へと爽やかな微笑みを向けてくださった。
この件は今後、おじ様とお父様が対応してくれることになっている。なので私達は、細かいことを気にする必要はないのよね。
「体裁があるから半年~1年くらいは公表できないけれど、俺達はついに名実ともに恋人となった。さあ、新たな一歩を踏み出そう」
「はい、アドン様っ。一緒に踏み出し、進んでゆきましょうっ」
颯爽と差し出された手を取り、私達は二人仲良くガーデンテーブルへと向かう。
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