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第5話 嘘に満ちた言葉たち エステェ視点(2)
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「エステェ様。僕は今夜の出来事を、生涯忘れはしないでしょう」
絵に起こして永久に保存したくなるくらい、爽やかな微笑みを浮かべていたピエール様。真に愛する人は更に嬉しいことを言ってくれて、ブルーの瞳にはたっぷりの喜びと愛情が含まれるようになった。
「僕はこれまでの人生で最も興奮しておりまして、一秒でも早く他の人々にこの幸せを報告したいと思っています。このあと会場に戻りましたら、その場で公表しても構いませんでしょうか?」
「ええもちろんっ。カーラ様は歓迎してくれると思うので、会場に戻ったら即――あっ、ごっ、ごめんなさいっ。公表は、ちょっと待っていただきたいんです」
こちらもとにかく興奮していて、つい即座に同意してしまった。
体裁があるからアドン様との関係は公になっていないけど、ここで発表したら社交界に噂が広まってしまう。そうしたらアドン様達の耳に入ってしまって、大変なことになるわ。
「? エステェ様? なぜ、なのでしょうか……?」
「その理由は……。ええと……。ええと…………」
どうしましょう。ピエール様のキープに夢中になっていて、そこまで考えていなかった。
理由……。理由…………。公表を待ってもらう理由は――
「失礼致しました、エステェ様」
――え? 必死になって考えていたら、ピエール様は微苦笑を浮かべられた。
「よくよく考えてみたら、こちらは突発的な出来事。お互いに当主への説明などを行っておらず、今夜公表すれば順序がおかしなことになってしまいますよね」
「え……。えっ、ええっ! そうですねっ。そうなんですっ。そちらをどう御説明しようか考えていたんですっ!」
「嬉しさのあまり、ついつい気がはやってしまいました。お許しください」
よ、よかったっ。そうっ、そうよね!
当主の了承を得る前に公表するのは、あり得ないものっ。だから私は『待って』と言っている、そういうことにしておきましょ。
「そういった風になってくれる、恋人としてそれ以上に嬉しいことはありません。お気になさらないでください」
「エステェ様……。痛み入ります」
「交際に関する公表は、後日しっかりと行いましょう。そちらに関するお話は……そうですね。こちらの準備が整い次第、我がファレナルース家よりご連絡を差し上げます」
これからアドン様との縁を切るなど、ピエール様に気付かれないように色々しなければならない。なのでアレコレ理由付けをして、どんなに親しい相手に対しても他言は禁止で、私が動き出すまで待っていてもらうようにお願いした。
「承知いたしました。ではその時の訪れを、楽しみに待っております」
「できるだけ早く行うと、お約束します。ピエール様、少しだけお待ちくださいね」
私達は見つめ合って微笑みを交わし、せっかく恋人になれたのだから、一つくらいは恋人らしいことをしたい。だから、とある約束をしたあと――
「エステェ様、愛しております」
「ピエール様。愛しています」
チュッ。抱き合って口づけを交わし、唇と耳で愛を感じ合ってパーティー会場へと戻る。そうしてお開きの時間になると私は急いでお屋敷へと戻り、アドン様と縁を切る方法を考え始めたのでした!
絵に起こして永久に保存したくなるくらい、爽やかな微笑みを浮かべていたピエール様。真に愛する人は更に嬉しいことを言ってくれて、ブルーの瞳にはたっぷりの喜びと愛情が含まれるようになった。
「僕はこれまでの人生で最も興奮しておりまして、一秒でも早く他の人々にこの幸せを報告したいと思っています。このあと会場に戻りましたら、その場で公表しても構いませんでしょうか?」
「ええもちろんっ。カーラ様は歓迎してくれると思うので、会場に戻ったら即――あっ、ごっ、ごめんなさいっ。公表は、ちょっと待っていただきたいんです」
こちらもとにかく興奮していて、つい即座に同意してしまった。
体裁があるからアドン様との関係は公になっていないけど、ここで発表したら社交界に噂が広まってしまう。そうしたらアドン様達の耳に入ってしまって、大変なことになるわ。
「? エステェ様? なぜ、なのでしょうか……?」
「その理由は……。ええと……。ええと…………」
どうしましょう。ピエール様のキープに夢中になっていて、そこまで考えていなかった。
理由……。理由…………。公表を待ってもらう理由は――
「失礼致しました、エステェ様」
――え? 必死になって考えていたら、ピエール様は微苦笑を浮かべられた。
「よくよく考えてみたら、こちらは突発的な出来事。お互いに当主への説明などを行っておらず、今夜公表すれば順序がおかしなことになってしまいますよね」
「え……。えっ、ええっ! そうですねっ。そうなんですっ。そちらをどう御説明しようか考えていたんですっ!」
「嬉しさのあまり、ついつい気がはやってしまいました。お許しください」
よ、よかったっ。そうっ、そうよね!
当主の了承を得る前に公表するのは、あり得ないものっ。だから私は『待って』と言っている、そういうことにしておきましょ。
「そういった風になってくれる、恋人としてそれ以上に嬉しいことはありません。お気になさらないでください」
「エステェ様……。痛み入ります」
「交際に関する公表は、後日しっかりと行いましょう。そちらに関するお話は……そうですね。こちらの準備が整い次第、我がファレナルース家よりご連絡を差し上げます」
これからアドン様との縁を切るなど、ピエール様に気付かれないように色々しなければならない。なのでアレコレ理由付けをして、どんなに親しい相手に対しても他言は禁止で、私が動き出すまで待っていてもらうようにお願いした。
「承知いたしました。ではその時の訪れを、楽しみに待っております」
「できるだけ早く行うと、お約束します。ピエール様、少しだけお待ちくださいね」
私達は見つめ合って微笑みを交わし、せっかく恋人になれたのだから、一つくらいは恋人らしいことをしたい。だから、とある約束をしたあと――
「エステェ様、愛しております」
「ピエール様。愛しています」
チュッ。抱き合って口づけを交わし、唇と耳で愛を感じ合ってパーティー会場へと戻る。そうしてお開きの時間になると私は急いでお屋敷へと戻り、アドン様と縁を切る方法を考え始めたのでした!
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