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第19話 久しぶり、と ミシュリーヌ視点(1)

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「ローナ。こうやって、また二人でお話しできる日が来るとは思ってなかったよ」
「わたくしもです、お嬢様。この先の人生は、ずっと雷雨だと思っていました。でも、違いましたね」
「うん。わたし達の人生は、晴れ――快晴だったね」

 一か月に一度、大切な人と会うことができる。
 わたしとローナにとって、こんなにも嬉しいことはありません。

「……わたしね、今日をずっと楽しみにしていたの。それと同時に、ずっと不安だったんだ」

 意図がどうであれ、ローナには罪悪感を抱かせてしまいました。毎日わたしのことを考え、後悔すると分かっていて……。心の中には、いつも不安心がありました。
 それに――。それだけでも辛いのに、新たな環境で生きていかないといけない。いくら5億ルビールがあるとはいえ、心配でした。

「でもね。あの日、そんな気持ちが和らぐようになったの。その理由が、これなんだ」
「そちらは……リング……? 見たことがない植物? ですね……?」
「これは月桂樹という植物の枝と葉を使って作ったものでね、ほらみて。裏にローナの名前があるでしょう?」
「は、はいっ。ありますっ」
「大切な人の名前を彫って大切な人を思い浮かべると、その人に健康と幸せをもたらしてくれる。そんなリングなの。……竜神様がくださったんだ」

 食と工芸が集う場所と呼ばれる、ビーラーフェ。そこでの一日を伝えました。

「竜神様が、わざわざ。ありがたいですね」
「うん、そうなの。それでね、竜神様はローナの分まで用意してくださっているんだよ」

 あの時一緒に購入していただいた、片割れ。内緒にしていたものを、テーブルの上に置きました。

「わたくしの、ために……? 竜神様が……?」
「わたしがそうであるように、ローナもわたしを心配してくれる。会えない間ローナの不安が和らぐようにと、用意してくださったの」
「…………そう、だったのですね。竜神様は……なんてお優しい、温かな御方なのでしょう」
「そうだよね。いつもお優しくて、温かい方なの」

 出会ったばかりにくださった言葉や、様々な場面での数々のお気遣い。この世界を発った日から今日までの間にあった竜神様に関する出来事を、説明しつつ振り返りました。

「…………だからね、ローナ」

 だから、わたしは――



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