私の宝物を奪っていく妹に、全部あげてみた結果

柚木ゆず

文字の大きさ
10 / 48

第7話 久し振りのお茶会~歓迎と恋バナとマリエットの好きな人~(2)

しおりを挟む
「ごめんなさい、マリエット様。わたくし、『片想い同盟』を裏切ってしまいましたわ」

 おもわずキョトンとしていると頭が下がり、ようやく理解することができた。
 このメンバーの中でアンナ様とイレーナ様にはすでに婚約者がいらっしゃり、私とファナ様は共に片想いをしていた。そこで『一緒に両想いになって幸せになろう』と誓い合い、お互いをサポートしてゆくためのプチ組織・片想い同盟を結成していたのよね。

「一緒に幸せに、とずっと約束していたのに……。抜け駆けする形となってしまい、本当に申し訳ございません」
「ファナ様。私は七か月半もの間殆ど外に出ておらず、ファナ様のサポートを行えておりません。ですので私の方も約束を守れていませんし、そもそも――。ショックという気持ちは微塵もなく、この胸にあるのは喜びだけですよ」

 席を立ってファナ様のお傍で両膝をつき、俯いているお顔を見上げる。

「ファナ様は大切なお友達で、お友達が幸せになることが嬉しくないはずありません。そちらは、私にとっても嬉しい出来事なのですから。私にも、祝福をさせてください。ファナ様と、微笑み合わせてください」
「…………マリエット様……。はい。そうさせていただきますわ」

 下へと向いていたお顔が上がると暗さや罪悪感はなくなっていて、柔らかい笑みが浮かぶ。なので私も同様の表情をお返しして、アンナ様とイレーナ様も続いてくださって。
 そうして私はファナ様から告白時のことやその後の甘いお話をたっぷりと伺い、幸せなお姿を目にしていたら――。本当に、久しぶり。心の中に、片想いをしている人の姿がふわりと浮かび上がってきた。

((卒業してからは更にミレーヌの動きが活発になって、そんなことを考えている余裕なんてなかったものね))

 ソレから解放されたことによって、心に余裕が出来ていたこと。成就して幸せに浸るお姿を見たこと。
 それによって私にも恋心が蘇り、こうしている間にも、どんどんと大きくなっていって。気が付くと――


「……トリスタン様……」


 想い人の名前が口をついていて、あの方と過ごした日々が蘇っていったのだった。



















 突然すみません。非公開でご意見をくださった12名の方々に、お返事をさせていだきます(直接お返事をする場所がないため、こちらでさせていただきます)。

 妹サイドのお話を早く見たいというご意見、ありがたく拝見しております。
 実は……。この姉サイドのお話は、今後の展開のために、どうしても必要なものでして。すみませんが、カット(短縮)をすることは不可能となっております。

 ただ。
 この回は、姉サイドと妹サイドが途中で入れ替わる(同時進行してゆく)構成になっておりますので。もうすぐ視点が一度入れ替わり、妹に何かが起きる妹サイドを投稿させていただくようになっております。

 構成上、完全にご期待に沿うことはできないのですが……。
 妹サイドは、もう少しでやってまいりますので。よろしければ、少々、お待ちくださいませ。


 
しおりを挟む
感想 271

あなたにおすすめの小説

幼馴染の生徒会長にポンコツ扱いされてフラれたので生徒会活動を手伝うのをやめたら全てがうまくいかなくなり幼馴染も病んだ

猫カレーฅ^•ω•^ฅ
恋愛
ずっと付き合っていると思っていた、幼馴染にある日別れを告げられた。 そこで気づいた主人公の幼馴染への依存ぶり。 たった一つボタンを掛け違えてしまったために、 最終的に学校を巻き込む大事件に発展していく。 主人公は幼馴染を取り戻すことが出来るのか!?

見知らぬ子息に婚約破棄してくれと言われ、腹の立つ言葉を投げつけられましたが、どうやら必要ない我慢をしてしまうようです

珠宮さくら
恋愛
両親のいいとこ取りをした出来の良い兄を持ったジェンシーナ・ペデルセン。そんな兄に似ずとも、母親の家系に似ていれば、それだけでもだいぶ恵まれたことになったのだが、残念ながらジェンシーナは似ることができなかった。 だからといって家族は、それでジェンシーナを蔑ろにすることはなかったが、比べたがる人はどこにでもいるようだ。 それだけでなく、ジェンシーナは何気に厄介な人間に巻き込まれてしまうが、我慢する必要もないことに気づくのが、いつも遅いようで……。

地味で器量の悪い公爵令嬢は政略結婚を拒んでいたのだが

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 心優しいエヴァンズ公爵家の長女アマーリエは自ら王太子との婚約を辞退した。幼馴染でもある王太子の「ブスの癖に図々しく何時までも婚約者の座にいるんじゃない、絶世の美女である妹に婚約者の座を譲れ」という雄弁な視線に耐えられなかったのだ。それにアマーリエにも自覚があった。自分が社交界で悪口陰口を言われるほどブスであることを。だから王太子との婚約を辞退してからは、壁の花に徹していた。エヴァンズ公爵家てもつながりが欲しい貴族家からの政略結婚の申し込みも断り続けていた。このまま静かに領地に籠って暮らしていこうと思っていた。それなのに、常勝無敗、騎士の中の騎士と称えられる王弟で大将軍でもあるアラステアから結婚を申し込まれたのだ。

姉の代わりになど嫁ぎません!私は殿方との縁がなく地味で可哀相な女ではないのだから─。

coco
恋愛
殿方との縁がなく地味で可哀相な女。 お姉様は私の事をそう言うけど…あの、何か勘違いしてません? 私は、あなたの代わりになど嫁ぎませんので─。

(完結)妹の婚約者である醜草騎士を押し付けられました。

ちゃむふー
恋愛
この国の全ての女性を虜にする程の美貌を備えた『華の騎士』との愛称を持つ、 アイロワニー伯爵令息のラウル様に一目惚れした私の妹ジュリーは両親に頼み込み、ラウル様の婚約者となった。 しかしその後程なくして、何者かに狙われた皇子を護り、ラウル様が大怪我をおってしまった。 一命は取り留めたものの顔に傷を受けてしまい、その上武器に毒を塗っていたのか、顔の半分が変色してしまい、大きな傷跡が残ってしまった。 今まで華の騎士とラウル様を讃えていた女性達も掌を返したようにラウル様を悪く言った。 "醜草の騎士"と…。 その女性の中には、婚約者であるはずの妹も含まれていた…。 そして妹は言うのだった。 「やっぱりあんな醜い恐ろしい奴の元へ嫁ぐのは嫌よ!代わりにお姉様が嫁げば良いわ!!」 ※醜草とは、華との対照に使った言葉であり深い意味はありません。 ※ご都合主義、あるかもしれません。 ※ゆるふわ設定、お許しください。

婚約破棄を兄上に報告申し上げます~ここまでお怒りになった兄を見たのは初めてでした~

ルイス
恋愛
カスタム王国の伯爵令嬢ことアリシアは、慕っていた侯爵令息のランドールに婚約破棄を言い渡された 「理由はどういったことなのでしょうか?」 「なに、他に好きな女性ができただけだ。お前は少し固過ぎたようだ、私の隣にはふさわしくない」 悲しみに暮れたアリシアは、兄に婚約が破棄されたことを告げる それを聞いたアリシアの腹違いの兄であり、現国王の息子トランス王子殿下は怒りを露わにした。 腹違いお兄様の復讐……アリシアはそこにイケない感情が芽生えつつあったのだ。

完結 王子は貞操観念の無い妹君を溺愛してます

音爽(ネソウ)
恋愛
妹至上主義のシスコン王子、周囲に諌言されるが耳をを貸さない。 調子に乗る王女は王子に婚約者リリジュアについて大嘘を吹き込む。ほんの悪戯のつもりが王子は信じ込み婚約を破棄すると宣言する。 裏切ったおぼえがないと令嬢は反論した。しかし、その嘘を真実にしようと言い出す者が現れて「私と婚約してバカ王子を捨てないか?」 なんとその人物は隣国のフリードベル・インパジオ王太子だった。毒親にも見放されていたリリジュアはその提案に喜ぶ。だが王太子は我儘王女の想い人だった為に王女は激怒する。 後悔した王女は再び兄の婚約者へ戻すために画策するが肝心の兄テスタシモンが受け入れない。

「いらない」と捨てられた令嬢、実は全属性持ちの聖女でした

ゆっこ
恋愛
「リリアーナ・エヴァンス。お前との婚約は破棄する。もう用済み そう言い放ったのは、五年間想い続けた婚約者――王太子アレクシスさま。 広間に響く冷たい声。貴族たちの視線が一斉に私へ突き刺さる。 「アレクシスさま……どういう、ことでしょうか……?」 震える声で問い返すと、彼は心底嫌そうに眉を顰めた。 「言葉の意味が理解できないのか? ――お前は“無属性”だ。魔法の才能もなければ、聖女の資質もない。王太子妃として役不足だ」 「無……属性?」

処理中です...