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第3話 同時刻~理由~ シメオン視点

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 俺には、何よりも大切な人がいる。
 その人の名前は、ヨランド・サレティス。俺の幼馴染、大事な方の幼馴染だ。
 ヨランド、愛しの人。
 そんな彼女への認識が『LIKE』から『LOVE』へと変化したのは、今から1年と1か月前のことだった。

『シメオン。わたくし、とてつもない見落としをしていたわ』
『え? 見落とし……? なにをだ……?』
『いま目の前にいる幼馴染の男の子は、とても優しく、そして優秀だった。ということに気付いたの』

 ヨランドの話によると――数日前のパーティーでとある令息と親しくなり、でも、深く話しをしているうちに幻滅するようになった。それによって『シメオンとは全然違う』と感じるようになって、これまでの認識を恥じるようになったらしい。

『身近に居すぎたせいで、全然気が付かなかった――いつの間にか、その水準が普通だと思うようになっていたのね。実際はそうじゃないのに。アナタは、すべての面においてハイレベルだったのに』
『へ、へぇ。へぇ~。そ、そうなのかっ』
『ユーグおじ様は、いつも厳しい――親子でいる時はもっと厳しいと、言っていたわよね? そんな接し方は間違いだと思うし、そもそも指導なんて少しも必要ない。むしろ逆、逆なのよ。ユーグおじ様の方がシメオンに色々と教わるべき、教えを乞うべき存在なのだと、確信しているわ』
『! そうっ! そうなんだよ! その通りだ!! 俺にあんなものは必要ないっ! ヨランドはよく分かってるな!! さすがだよ!!』

 彼女は唯一『真実』と『事実』を認識している人であり、本心で、嬉しくなることを繰り返してくれる人。
 ……そんな人を、好きにならないわけがないだろう?
 だから俺はヨランドと婚約者、夫婦になりたいと強く望むようになり、だからこそ必死になって工作を行った。

『ヴァネッサが好きだ!』
『ヴァネッサを愛している!』
『ヴァネッサと生涯、一緒に歩いていきたい!』

 父上という厄介者が創り出す、俺たちの婚約を遮る『壁』を乗り越えるために! ふたりの夢を叶えるために、心にもないことを繰り返して、ずっと頑張ってきたんだ。
 なのに――

「シメオン。お前とヴァネッサ君の婚約が決まったぞ」

 ――こんなことになってしまった! 突然、意味不明なことが起きてしまった!!

((ふざけるなっ! こんな未来、認めない……!! 必ず、軌道を修正してみせるっ!!))

 俺とヴァネッサの婚約の前祝いという、不愉快なパーティーが終わった直後。俺はすぐさま自室に戻り、無事ヨランドと結ばれるための作戦を練り始め――

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