性悪妹は、まだ知らない。姉の婚約破棄を企んでも、絶対に成功しないことを

柚木ゆず

文字の大きさ
23 / 35

補完編その1 ビッグバンが起こった日 テオ視点

しおりを挟む
 ――俺は物心ついてから一度も、恋をした事がなかった――。

 交際、婚約や結婚などなど。そういうものに全く関心がなく、自分の隣に誰かがいるイメージが湧いた時がなかった。

 ――人が嫌いなわけではないし、異性に興味がないわけでもない――。

 人間不信になる出来事があっただとか、女性絡みで嫌な思いをしただとか。そういうものは、一度もない。
 なのに、なぜだか関心が湧かない。幼い頃からの知人に、

『勿体ないぞ、テオ。恋をしないのは損をしている』
『いいかテオ。恋をすると、人生が何倍も楽しくなるんだ。薔薇色になるんだぜ?』

 そう言われても、微塵もそうは感じなかった。そう言われても、彼らがそう感じる思考回路が理解できなかった。
 その手の感情であり行為はそれほどまでに、俺にとっては不必要なものだったのだ。


 しかし――。
 そんな心は、唐突に塗り替えられる事になる。


 ジュリエット・ミラ。


 彼女との出会いが、俺の心を変えた。『革命』を、もたらした。

『チチチチ……。チチチチ……』
『小鳥が、巣から落ちてしまいましたのね……。可哀想……』
『お母さんが、早く戻ってくるといいですわね……。大丈夫でしょうか……?』
『落ちた際に怪我をしていみたいですし、放っておいたら危険だと思います。……小鳥さん、もう大丈夫だよ。私に任せてね』

 学院の裏庭にある、大きな木。その下で小鳥をそっと抱き上げ、手当を始めるジュリエットを見掛けた。
 彼女は――彼女だけは、小鳥の汚れや血液などを気にしない。救いたいという一心で駆け寄り、介抱したのだ。

『チチチチチ……。チチッ。チチチチチツッ!』
『鳴き声が少し元気になったって事は、痛みが引いたのかな? よかった』
『チチチチチッ! チチチチチッ!』
『あのね、小鳥さん。お母さんが待ち遠しいと思うけどね、まだ巣の外は危険なんだよ。これからは、気を付けようね?』
『チチチチチッッ! チチチッ!』

 自ら手当をして巣に戻し、微笑むジュリエット。
 この瞬間が、俺が変わった瞬間だった。

 ――こんなにも、綺麗な人が居たなんて――。

 同級生故に、容姿が優れているのは前々から知っていた。けれどその中までもが、外見同様とは知らず……。
 心臓が高鳴り、彼女から目を離せなくなっている自分がいた。


 ――そこからはもう、『一気に』だった。


 注目すると更に良い部分が見えるようになって、もっと好きになって。あっという間にジュリエットの事で頭が一杯になって。
 やがて俺は彼女に告白をして、OKをもらって、そうしたら嬉し涙が零れて――。

『勿体ないぞ、テオ。恋をしないのは損をしている』
『いいかテオ。恋人といると、人生が何倍も楽しくなる。薔薇色になるんだぜ?』

 ようやく俺は、彼らの言葉を理解したのだった。

しおりを挟む
感想 181

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。

織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。 父であるアーヴェント大公に疎まれている―― 噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。

居場所を失った令嬢と結婚することになった男の葛藤

しゃーりん
恋愛
侯爵令嬢ロレーヌは悪女扱いされて婚約破棄された。 父親は怒り、修道院に入れようとする。 そんな彼女を助けてほしいと妻を亡くした28歳の子爵ドリューに声がかかった。 学園も退学させられた、まだ16歳の令嬢との結婚。 ロレーヌとの初夜を少し先に見送ったせいで彼女に触れたくなるドリューのお話です。

(完)お姉様、婚約者を取り替えて?ーあんなガリガリの幽霊みたいな男は嫌です(全10話)

青空一夏
恋愛
妹は人のものが常に羨ましく盗りたいタイプ。今回は婚約者で理由は、 「私の婚約者は幽霊みたいに青ざめた顔のガリガリのゾンビみたい! あんな人は嫌よ! いくら領地経営の手腕があって大金持ちでも絶対にいや!」 だそうだ。 一方、私の婚約者は大金持ちではないが、なかなかの美男子だった。 「あのガリガリゾンビよりお姉様の婚約者のほうが私にぴったりよ! 美男美女は大昔から皆に祝福されるのよ?」と言う妹。 両親は妹に甘く私に、 「お姉ちゃんなのだから、交換してあげなさい」と言った。 私の婚約者は「可愛い妹のほうが嬉しい」と言った。妹は私より綺麗で可愛い。 私は言われるまま妹の婚約者に嫁いだ。彼には秘密があって…… 魔法ありの世界で魔女様が最初だけ出演します。 ⸜🌻⸝‍姉の夫を羨ましがり、悪巧みをしかけようとする妹の自業自得を描いた物語。とことん、性格の悪い妹に胸くそ注意です。ざまぁ要素ありですが、残酷ではありません。 タグはあとから追加するかもしれません。

婚約破棄されたので、隠していた聖女の力で聖樹を咲かせてみました

Megumi
恋愛
偽聖女と蔑まれ、婚約破棄されたイザベラ。 「お前は地味で、暗くて、何の取り柄もない」 元婚約者である王子はそう言い放った。 十年間、寡黙な令嬢を演じ続けた彼女。 その沈黙には、理由があった。 その夜、王都を照らす奇跡の光。 枯れた聖樹が満開に咲き誇り、人々は囁いた。 「真の聖女が目覚めた」と——

〖完結〗旦那様には出て行っていただきます。どうか平民の愛人とお幸せに·····

藍川みいな
恋愛
「セリアさん、単刀直入に言いますね。ルーカス様と別れてください。」 ……これは一体、どういう事でしょう? いきなり現れたルーカスの愛人に、別れて欲しいと言われたセリア。 ルーカスはセリアと結婚し、スペクター侯爵家に婿入りしたが、セリアとの結婚前から愛人がいて、その愛人と侯爵家を乗っ取るつもりだと愛人は話した…… 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全6話で完結になります。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

私を棄てて選んだその妹ですが、継母の私生児なので持参金ないんです。今更ぐだぐだ言われても、私、他人なので。

百谷シカ
恋愛
「やったわ! 私がお姉様に勝てるなんて奇跡よ!!」 妹のパンジーに悪気はない。この子は継母の連れ子。父親が誰かはわからない。 でも、父はそれでいいと思っていた。 母は早くに病死してしまったし、今ここに愛があれば、パンジーの出自は問わないと。 同等の教育、平等の愛。私たちは、血は繋がらずとも、まあ悪くない姉妹だった。 この日までは。 「すまないね、ラモーナ。僕はパンジーを愛してしまったんだ」 婚約者ジェフリーに棄てられた。 父はパンジーの結婚を許した。但し、心を凍らせて。 「どういう事だい!? なぜ持参金が出ないんだよ!!」 「その子はお父様の実子ではないと、あなたも承知の上でしょう?」 「なんて無礼なんだ! 君たち親子は破滅だ!!」 2ヶ月後、私は王立図書館でひとりの男性と出会った。 王様より科学の研究を任された侯爵令息シオドリック・ダッシュウッド博士。 「ラモーナ・スコールズ。私の妻になってほしい」 運命の恋だった。 ================================= (他エブリスタ様に投稿・エブリスタ様にて佳作受賞作品)

処理中です...