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第8話 回想~見栄と嫌いな才能~ アーサー視点(4)
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《マノンに恩返しをしたい》
《マノンが二度と危険な目に遭わないようにしたい》
《マノンが幸せで居続けられるよう見守りたい》
《どんなことがあっても、マノンを護れるようにしたい》
リンゴと笑顔と言葉。それらによって目を覚ました――救われた俺はすぐに、そう思うようになった。
けれどそれの実現は、とてつもなく厳しかった。
((ウチは財もコネクションも平均な子爵家。これじゃ何かあった時対処できない))
沢山の金、大きな人脈、高い地位。最低でもどれか一つでも持っていなければ、問題が発生した際に渡り合えることができない。
((もしも格上が何かしてきたら、泣き寝入りになるな……))
幸いにも学舎ではそういうケースはなかったものの、夜会後の両親のため息や、併設されている学院から聞こえてくる噂。そういったもので、貴族界の『汚さ』を把握していた。
そのためいずれ――成長したら高確率でトラブルに見舞われてしまうと予想し、それを防ぐ方法はないか必死になって考えた。
((強みが何もない状況下で、対抗できる方法は……。なんだ……?))
それを達成するにはあまりに手持ちが厳しくて、当然難航した。だがその方法は、ある日『友達』から学ぶことになるのだった。
「キィィィィ! キィィィィィっ!」
ある日森の中で、仲良くしているジョン――小柄なサルが巧みに投石を行い、テリトリーに侵入した一回り以上も大きなサルを追い払った。
((そうか……! 武器だ! 弱くても武器がっ、強力な武器があれば勝てるんだ!))
幸いにも俺にはクスリの調合の才であり趣味があったため、それを活かして作れる爆弾に目を付けた。
ウチ程度の貴族では強力な爆弾を作る材料が手に入らなかったけれど、知識を総動員して別の素材で同等以上のものを製造。そうして3か月に1個というスローなペースではあるものの、騎士団製をも上回る――個人では持ちえない武器の確保が実現したのだった。
そして、更には――
「ピィィっ! ピィィぃっ! ピィィぃっ!!」
「しゅぅぅぅぅ。しゅぅぅぅぅぅっ。しゅぅぅぅぅぅっ」
「え? ニコラ達も手伝ってくれるのか?」
――傷や病気に関する薬を調合できること。動物と意思疎通ができること。そんな才を活かして6年後の俺は、傷ついた動物、捨てられた動物、群れから追い出されてしまった動物たちの保護も行っていて。そんな友達のために買った土地で、いつものように彼らと喋っている時のことだった。すっかり成長した友人達が『お礼をしたい』と言ってくれて、有事の際の新たな力が加わった。
「ありがとう、みんなのおかげでますます強くなれたよ。…………とはいえ、そうだね。どれも使わずにいられると、幸せだね」
ニコラやエリークとそんな風に笑い合っていたのだけれど、残念ながら『その時』は訪れてしまった。そのため俺は動き出して――
《マノンが二度と危険な目に遭わないようにしたい》
《マノンが幸せで居続けられるよう見守りたい》
《どんなことがあっても、マノンを護れるようにしたい》
リンゴと笑顔と言葉。それらによって目を覚ました――救われた俺はすぐに、そう思うようになった。
けれどそれの実現は、とてつもなく厳しかった。
((ウチは財もコネクションも平均な子爵家。これじゃ何かあった時対処できない))
沢山の金、大きな人脈、高い地位。最低でもどれか一つでも持っていなければ、問題が発生した際に渡り合えることができない。
((もしも格上が何かしてきたら、泣き寝入りになるな……))
幸いにも学舎ではそういうケースはなかったものの、夜会後の両親のため息や、併設されている学院から聞こえてくる噂。そういったもので、貴族界の『汚さ』を把握していた。
そのためいずれ――成長したら高確率でトラブルに見舞われてしまうと予想し、それを防ぐ方法はないか必死になって考えた。
((強みが何もない状況下で、対抗できる方法は……。なんだ……?))
それを達成するにはあまりに手持ちが厳しくて、当然難航した。だがその方法は、ある日『友達』から学ぶことになるのだった。
「キィィィィ! キィィィィィっ!」
ある日森の中で、仲良くしているジョン――小柄なサルが巧みに投石を行い、テリトリーに侵入した一回り以上も大きなサルを追い払った。
((そうか……! 武器だ! 弱くても武器がっ、強力な武器があれば勝てるんだ!))
幸いにも俺にはクスリの調合の才であり趣味があったため、それを活かして作れる爆弾に目を付けた。
ウチ程度の貴族では強力な爆弾を作る材料が手に入らなかったけれど、知識を総動員して別の素材で同等以上のものを製造。そうして3か月に1個というスローなペースではあるものの、騎士団製をも上回る――個人では持ちえない武器の確保が実現したのだった。
そして、更には――
「ピィィっ! ピィィぃっ! ピィィぃっ!!」
「しゅぅぅぅぅ。しゅぅぅぅぅぅっ。しゅぅぅぅぅぅっ」
「え? ニコラ達も手伝ってくれるのか?」
――傷や病気に関する薬を調合できること。動物と意思疎通ができること。そんな才を活かして6年後の俺は、傷ついた動物、捨てられた動物、群れから追い出されてしまった動物たちの保護も行っていて。そんな友達のために買った土地で、いつものように彼らと喋っている時のことだった。すっかり成長した友人達が『お礼をしたい』と言ってくれて、有事の際の新たな力が加わった。
「ありがとう、みんなのおかげでますます強くなれたよ。…………とはいえ、そうだね。どれも使わずにいられると、幸せだね」
ニコラやエリークとそんな風に笑い合っていたのだけれど、残念ながら『その時』は訪れてしまった。そのため俺は動き出して――
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