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第2話 今と今 ティファニー視点

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「……貴方様が、レオナルド様? ミント・ロヴィックが知っている、あのレオナルド・ラインメーズ様なのですか……?」

 かつてのわたしを知っている。同じ名前を名乗っている。それらの理由でご本人だと理解することはできますが、それでも問わずにはいられませんでした。
 だって……。
 わたしが知っているその方は、とてもふくよかで童顔。体重は100キロ近い――目測今の倍以上あり、当時数歳年下だと感じる幼い顔の持ち主だったのですから。

「本当に……。レオナルド様、なのですか……?」
「当たり前だ!! 俺はレオナルド! あの歴史あるハピンズ商会の現会頭様で、名門伯爵家の現当主様だ!!」

 一回り以上も歳上に見える、やせこけた中年男性。
 体型どころか人相がまるで違っていて、当時の面影はどこにもありませんが……。間違いなく、あのレオナルド様でした。

「無礼なヤツめ――そんなことは今はどうでもいい! それよりミント! お前はロヴィック家を追放されたはずだ! 国外に逃げた・・・はずのお前がどうしてここにいるんだっ!?」
「ここは、新たな人生のスタート地点となった場所。何もかもを失っていたわたしを8年間見守ってくださった『祝福の樹』に感謝と、ご報告を行うために訪れました」
「感謝……? 報告……? なんの報告だ……!?」
「こちらにいらっしゃる方との、結婚。それが、『祝福の樹』へのご報告になりまして――」
「なんだって!? 結婚!? お前が!?」

 外見は酷く変わってしまっていましたが、内面はまったく変わっていませんでした。
 レオナルド様はわたしの声を遮りながら、まっすぐこちらを指差しました。

「お前はあらゆるものを失い裸同然で他国に渡ったはずだ! まともな戸籍も金もないような女が結婚だなんて……っ! どうなっているんだ――いや、そうおかしな話ではないか。お前は昔から、見た目だけは良いもんな。結婚は表向きの表現で、そういう目的・・・・・・飼われて・・・・いてもおかしくはない」

 驚いた眼が、下卑と見下しを含んだものへと変わります。
 そうしてひとりで納得されたレオナルド様は、大股で歩いて『祝福の樹』の前に立ちました。

「なるほどな。俺へのせめてもの抵抗、見栄張りか。……そういうことなら、もうお前に用はない。くくく、かかかっ。あの日以降のお前を知れてよかったよ、本当にな」
「……そう、ですか。喜んでいただけたようですので、その代わりわたしにも一つ質問をさせてください」
「ん? 質問だと? なんだ?」

 わたしが、気になっていること。それは、貴方様と似たようなものですよ。


「あの日から、8年が経ちました。……レオナルド様。わたしを捨てて、幸せになれましたか?」







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