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第16話 不安の的中 クリストフ&アニエス視点(2)
脳天から爪先まで真っすぐ駆け抜ける、鋭く激しい衝撃。まるで、雷に打たれたようなショック。
僕がそんなものに襲われる羽目になった切っ掛けは、夕食時に起きたアレが原因だった。
「はっはっは。そうだな。そういう話はよくあって、近々あちらからも行くと――カロリーヌ……? どうしたんだ? わたしの後ろに何かあるのか……?」
「あっ、あるのよぉっ! そこっ、そこ! ごきっ、ゴキブリがいるの!!」
どんなに清潔にしていても、どこからやって来る生き物。黒いアイツが、食堂の床に現れやがったのだ。
「汚らしいわ!! 誰かっ! 誰か早く来なさい!! さっさと殺して捨てて!! 早くっっ!!」
虫が嫌いな母さんはゴキブリを指差しながら声を張り上げ、僕はすぐさまエリスのもとへと移動を始める。
『エリス様!? どうかなされましたか!?』
『ご、ごめんなさい。虫の中で一番ゴキブリが苦手でして……。つい悲鳴をあげてしまいました』
エリスは幼い頃所有する森を歩いていた際に、木から落ちたゴキブリが目の前に落っこちてきた。その影響で、ゴキブリが大の苦手なのだ。
((僕はエリスの婚約者。彼女を守るのは婚約者の役目だよね))
怯える大切な人を守る、騎士(ナイト)になるために。僕は颯爽を椅子から立ち上がり、彼女へと近寄って――
「早く!! ねえ早くして!! どうして誰も取ろうとしないの!?」
「道具が見つからないのかもしれません。わたしにお任せください」
――え……?
近寄っていると、エリスが動き出して……。
ナプキンを巻いた手でゴキブリを捕まえ、そのままゴミを入れる袋に放り込んだのだった……。
ゴキブリが大の苦手なエリスが……。
平気な顔をして、ゴキブリを扱ったのだった……。
○○
((このままでは、使用人の方が何をされてしまうか分かりません。わたしが対処しましょう))
この家の人は、使用人を奴隷のように思っているふしがあります。ですのでわたし自身も苦手ではあるのですが、これ以上この方の怒りが増えてしまったら、解決後に暴言や暴力が飛ぶことになるでしょう。
それは酷いことですので、
「早く!! ねえ早くして!! どうして誰も取ろうとしないの!?」
「道具が見つからないのかもしれません。わたしにお任せください」
テーブルにあったナプキンを右手に巻き、直接触らないようにして捕まえる。そうやってどうにか処理をして、終わりました――と、伝えようとしていた、その時でした。
おもわず頭の中が真っ白になることが、不意に起きたのでした。
「エリスはそんなことしない!!」
パン。と。
乾いた音と痛みがやって来て――。
クリストフ様に左頬を平手打ちをされたのだと、気が付いたのでした。
僕がそんなものに襲われる羽目になった切っ掛けは、夕食時に起きたアレが原因だった。
「はっはっは。そうだな。そういう話はよくあって、近々あちらからも行くと――カロリーヌ……? どうしたんだ? わたしの後ろに何かあるのか……?」
「あっ、あるのよぉっ! そこっ、そこ! ごきっ、ゴキブリがいるの!!」
どんなに清潔にしていても、どこからやって来る生き物。黒いアイツが、食堂の床に現れやがったのだ。
「汚らしいわ!! 誰かっ! 誰か早く来なさい!! さっさと殺して捨てて!! 早くっっ!!」
虫が嫌いな母さんはゴキブリを指差しながら声を張り上げ、僕はすぐさまエリスのもとへと移動を始める。
『エリス様!? どうかなされましたか!?』
『ご、ごめんなさい。虫の中で一番ゴキブリが苦手でして……。つい悲鳴をあげてしまいました』
エリスは幼い頃所有する森を歩いていた際に、木から落ちたゴキブリが目の前に落っこちてきた。その影響で、ゴキブリが大の苦手なのだ。
((僕はエリスの婚約者。彼女を守るのは婚約者の役目だよね))
怯える大切な人を守る、騎士(ナイト)になるために。僕は颯爽を椅子から立ち上がり、彼女へと近寄って――
「早く!! ねえ早くして!! どうして誰も取ろうとしないの!?」
「道具が見つからないのかもしれません。わたしにお任せください」
――え……?
近寄っていると、エリスが動き出して……。
ナプキンを巻いた手でゴキブリを捕まえ、そのままゴミを入れる袋に放り込んだのだった……。
ゴキブリが大の苦手なエリスが……。
平気な顔をして、ゴキブリを扱ったのだった……。
○○
((このままでは、使用人の方が何をされてしまうか分かりません。わたしが対処しましょう))
この家の人は、使用人を奴隷のように思っているふしがあります。ですのでわたし自身も苦手ではあるのですが、これ以上この方の怒りが増えてしまったら、解決後に暴言や暴力が飛ぶことになるでしょう。
それは酷いことですので、
「早く!! ねえ早くして!! どうして誰も取ろうとしないの!?」
「道具が見つからないのかもしれません。わたしにお任せください」
テーブルにあったナプキンを右手に巻き、直接触らないようにして捕まえる。そうやってどうにか処理をして、終わりました――と、伝えようとしていた、その時でした。
おもわず頭の中が真っ白になることが、不意に起きたのでした。
「エリスはそんなことしない!!」
パン。と。
乾いた音と痛みがやって来て――。
クリストフ様に左頬を平手打ちをされたのだと、気が付いたのでした。
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